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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第3章 獣人国・宝物蔵の守護者編
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第3ー12話 仲直りをしよう

 空には大きな太陽が昇り、今日も雲が流れる快晴だ。昨日風呂が終わり、ギリアムさんから初めての非番を頂いた、のだが正直何をして良いのか解らない。

 稽古が終わると九尾様の護衛に戻っていたし、今日分の早朝トレーニングも今しがた終了した所に、何やら国主館自体がざわめいている様な気がする、侍女や使用人はバタバタとあちらこちら所狭しと走り回っているんだ。

「あ!やっほージン君」

「あっリューコさん、おはようございます。皆さんどうしたんですかね、バタバタ忙しそうにしてますが」

「えっとね~…ジュンが来るから…かな?」

 廊下での向かいから、リューコさんが歩いてくるのが見え、朝の挨拶をするも、赤岩さんが来るだけでこの騒ぎようはリューコさんも想定外のようだ。


 まさかの赤岩さんが来るというだけで、この館は騒然としこんなにも影響力があるなんて、僕は思いもしなかった。

 後に聞いた話しだと、現状赤岩さん自身は嫌っているが、全世界で国王や女王にも匹敵する権力の持ち主らしいのだ、本人は「堅苦しすぎる。しんどい」と言い、基本的にはフランクに喋り掛けるような人なのです、それはきっと本心なのだろう。

「事件書類は九尾の間へ運び込みなさい!!それと昼食は正午きっかりから始めます!仕込み等の準備、抜かり無いように!!」

 ある犬型の侍女は、先陣を切り部下たちにくまなく指示を出している。部下たちも「了解!」と大きく返事をすると手際よく仕事をこなしていく。


「リューコさん…戦争でも始まるんですか?」

「そんな…所?」


 僕は非番という事なのだが、リューコさんに連れられ寝起きのアスタちゃんと一緒に玄関まで歩いていく。

「ん~…ジン君、まだアスタ眠いよ~…」

「あはは…アスタちゃん、昨日ギリアムさんが言ってたでしょ、赤岩さんが来るって。一緒にお出迎えしようよ」

「うん…」


 ~~~国主館・ジュンの到着定刻~~~


 大型の犬車がゆっくりと門前で停車する音が聞こえると、その場に居た兵士や侍女達の背筋はピンと伸び、皆の顔からは一筋の汗が滲み出ている。

 獣人国の人達は礼に重きを置いているが、血に混じった本能が、赤岩順という強者に伏せるしかないというのを何処か感じているのか、それか失礼の無いように、順調に事を運ばせ気持ちよく過ごしてもらうと言う気持ちなのか、それは汗を掻き背筋を伸ばす当人たちにしか解りえない。


 堅牢で大きな木の門が開かれると、真っ黒のコートに黒いハット…それに両手に大量の紙袋、尋常じゃない量だ…

「よっ!リューコ、アスタ元気にしてるみたいだな!」

「当たり前よ!」

「やっほーししょー!」

 リューコさんとは軽くハンドサインで、アスタちゃんの頭をガシガシと撫でる彼は、僕の方へ振り向くと肩に手を置きポンポンと軽く叩く。

「よ!仁君、暫く振り!…結構鍛えてんじゃん、また筋肉ちょっと付いたか?」

「はい!サブローさんや、ギリアムさんに毎日稽古付けてもらてっますんで!」


 「そっか」と言った彼の表情は、とても穏やかで兄貴…というよりも「親父」に近い安心感を僕にくれて、少し離れて鍛えただけの些細な変化にも直ぐに気付いてくれた、この事に僕はこれ以上無い位嬉しかったんです。


「そうそうこれ、手紙で言ってたお土産!「シシリアル名物・ピヨ子ちゃん饅頭」リューコやアスタと仲良く分けて食ってくれ!」

 手に持ったとてつもない量の紙袋の一つを、僕に手渡すと彼は大きな声で笑いながら、奥でお辞儀するナナさんに歩み寄っていった。

「ご無沙汰してますナナさん、突然の無茶で皆を泊めて貰って。」

「いえお気になさらず、あんな短期間で帰られてしまうと、九尾様がアスタ様と遊べなかったと、後で駄々をこねられますので。此方としても願ったり叶ったりですよ」

 赤岩さんの横に付いて歩いているミアさんも、ナナさんに頭を下げるとナナさんもそれに応じ会釈を取る。


「あっこれ、仁君達に渡したやつと同じなんですけど、ピヨ子ちゃん饅頭皆さんで食べてください、これだけあったら一人1つか2つは食べれると思いますんで」

「まぁまぁ…気を使わせたみたいですみません。有難く頂戴致します」

 彼はナナさんと会話を交わすと、紙袋を全て近くの兵へ手渡していく。…っていうか紙袋それ全部「ピヨ子ちゃん饅頭」なんですか!!

 開いた口が塞がらないとはまさにこの事、軽く見積もっただけでも30は有る紙袋が全て同じものなのだ、驚いているとミアさんは耳元で静かに耳打ちをしてきた。


「…あれ、試食で食べた時ジュンさんが「これ超うめぇ!!気に入った!!」と言って皆のお土産にするって言い出したんですよ…」

「あ…あはは…なんというか…豪快ですね」

 困り顔を浮かべたミアさんは、赤岩さんが中に通されていくのを追うように彼女も玄関から中へと入っていく。


~~~九尾の間~~~

「(九尾様…そろそろ、お顔を出されては?アカイワ様も待ってらっしゃいますよ)」

「(いっ嫌なのじゃ…こっ怖いんじゃぁあ!!)」

「(もう!さっきのお土産真っ先に食べてたのは誰ですか!せめてお礼位は言ってください!)」

 とうとう駄々をこねる九尾に、ナナは痺れを切らし腕を強引に引きながら九尾を襖から引っ張り出した。


 赤岩さんの前に立ったことにより、緊張と恐怖でかなりのパニックに陥り今にも泣きそうな彼女は、正直見てて可哀想にすら思えてきた。


「九尾様…いや、九尾ちゃん前は悪かった!…我ながら大人気なかった」

 赤岩さんは本心からか、彼女の様子を見た事の気遣いか、正座のまま両拳で畳みに額をこすりつける様に謝罪をした。これには「あれは九尾様も悪かったですから!頭を上げてください!」とナナさんまで、異例の自体にパニックとなっている。

「あらジュンさんも、3年の間に大人になられたんですね~」

 とミアさんは軽く茶々を入れているも、赤岩さんから歩み寄った仲直りだ邪魔などはしない、九尾様はまた何かされるのではと、涙目で辺をキョロキョロ見回していたが、赤岩さんの態度と謝罪の言葉により少し怯えも止まっていた。



 過去にミアの事をからかわれ、プッツンした順だったが、一度距離を置き冷静に物事を見ると自分も我慢が効かなかったと、それもあんな小さな子供に…と、少なからず反省していた。九尾への謝罪も今回彼が獣人国に来た、目的の一つだ。

 

 喧嘩をすれば、やはり時間を置いてでも仲直りは出来るのでは無いかと、少し微笑ましげに見ている仁であった。

To Be Continued

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