第3ー10話 宣戦布告
~~~シシリアル埋葬墓地~~~
娯楽都市というだけあり、街は観光街・カジノ街等の様々なエンターテイメントに富んでいる国では有るが、ここは死者を祀る場所。
過去に起きた戦争での戦死者、はたまた流行病で亡くなった人の墓、どれも家族等に手厚く葬られ、墓もきちんと清掃が行き届いており不衛生では無いが、辺は月の灯りのみで照らされ、足元には薄っすらと霜が降りており何処か不気味な印象を与える。
「ミア…どこから来るか、分からん気を抜くなよ」
首を縦に振りミアは、返事をするがゆっくりと歩く彼らに敵意を向ける者は全く居ない。
暫く歩き街の皆が骸骨を見た、というポイントへ到着し2人はその場で静止すると、前からカシャカシャと何かが擦れる音と共に、白衣を着てカーキ色のズボンを履いた例の「骸骨」が一人姿を表した。
「あんたが招待状を送ってきた「フェミリア・アルクラウド」で間違いないな」
「いかにも、「最強」に「戦乙女」とは、今夜は楽しい茶会になりそうです」
本来目がある場所には、赤いモヤの様な物がひしめき男の感情に合わせ、大きくなったり細まったり感情を表している。
「あんたに一つ問う、俺達は話し合いで事を済ませたい。だがあんたに戦闘の意志が有るのなら、此方は迷わず攻撃させて貰う。それでよろしいか」
「くくく、最強等の称号は持っていれど、やはり20そこらの血気盛んな若者と言うことか。私には戦闘の意志はございませんよ、何せ今回は茶を嗜み、会話を楽しむ為の「コミュニケーション」なんですから」
フェミリアが指を鳴らすと、何処からか大小異なった骸骨が無数に姿を表した、その手には各々自身が担当する持ち場の道具なのだろうか、ある個体はティーセットにクッキー等の菓子類、そしてまた他の個体はバイオリンにチェロと言った弦楽器。
「最強貴方、クッキーは好きですか?なんなら紅茶もありますよ」
からかった様な声のトーンで街の者にした質問を、ジュンへ向けするもジュンは臆すること無く骨で出来た椅子に腰掛け「あぁ、好きだぜ」と、挑発に乗ってやると言わんばかりに微笑み机に肘を掛ける。
「ならこのフェミリア、誠心誠意込めておもてなしさせていただきましょう。好きな音楽のジャンルはございますか?」
「ジャズ・ブルース・歌謡曲・ロック何でもござれだ、だがクラッシックは眠くなる、良さがあまり分からんのだ」
彼がそう言うとフェミリアは、骸骨達に指でさっと指示を出すと、骸骨達は金管楽器は無くとも、打楽器と弦楽器で3人の茶会のBGMとして演奏を始めた。
「いいでしょう、骸骨弦楽団。私は生前から音楽が好きでね、個人としてもバイオリンを嗜んでおりましたよ。」
「ほう音楽とはまた趣味の良い、音楽は今まで聞く側だったんで演奏なんて考えた事は無いですね」
ジュンは言葉を交わすと、クッキーに口を付け紅茶をすするとどちらにも睡眠薬が入っているのを確信し、横に座っているミアに手をかざし「食べるのはやめとけ」と合図を出す、ミアもこれを予想していたのか最初から出された食品には、一切手を付けていなかった。
「…フェミリアさん、あんた今「生前」と言ったがもしかして今こうして俺と面と向かい話しているあんたは、一度死んだって認識でいいのかい?」
フェミリアはモヤを細め、臓器も無いはずの体に紅茶を流し込んでいく、暗さであまり気に止めて居なかったが、肋骨の内側と言えば良いのか、本来心臓や肺が有る位置に黒いモヤが目と同様充満しており、紅茶はそのモヤに吸収されていく。
「いかにも…、そしてこの体になったのはれっきしとした原因が有るんですよ」
ジュンは彼の言葉を遮ること無く、沈黙を続け耳を向かいのフェミリアに耳を傾ける。
「私は「ある目的」の為に、今では全世界共通認識で禁忌とされている「禁術・死霊術」を、自身の体に死ぬ寸前施しましてね、ご覧の通り睡眠も食事も不要、文字通り「不死身」となったのです」
「死霊術ねぇ…俺も一度資料では読んだことがあるが、使う気にはならんな。生命に対しての冒涜だ」
「そう生命に対しての冒涜と言うことで、私も生前…いや「ある事件まで」は私も使う気にすらなら無かった、だがそれを期に私はこの禁術に情熱を傾けた。妻と息子が殺されたあの日にね」
今まで紳士的に会話を交わしていた彼だが、途端に底の無い激しい憎悪を放ち、目は激しく煙を上げまるで怒りを具現化したような眼光で、モヤが激しくしたたかに宙を焼く。
「最強貴方に朗報だ。魔人の元「魔人種」を作ったのは私だ」
そう言った彼の胸ぐらを掴み、仕込み剣を抜刀しているミアは初めて声を荒げた。
「貴方のせいで、一体どれだけの人が死んだと思っているんですか!…人が化物に変わり!罪もない人が死んでいく!何故こんな負の連鎖を作り上げたんですか!!」
「ミア!!…やめろ。まだこいつの話しは終わっていない」
突如2年前から姿を表し、各地で人々が殺され、途方もない悲しみ暮れる人を見続けていたミア、そして自分の夫や仲間が人を救う為という目的で、その化物になった人を殺すと言う矛盾に気丈ながらも、悩み悲しみ、それでも答えを見つけれずに居たのだ。
「ミア怒りたいのは、お前だけじゃないさ。俺だって同じ気持ちだ。だが…まだその時じゃない」
「てっきり私は、「最強」貴方が殴りかかってくると思っていましたがねぇ」
白衣を着直しながらも、フェミリアはクスクスとジュン達をからかうように笑っている。
「フェミリア、何故俺にその情報を与える。」
「隠す必要が無いからさ。それにこれを伝える真の意味…貴方はもう理解しているんじゃないか?「最強」」
「あぁ…宣戦布告だろ」
「ご名答!君さえ殺せば後は烏合の衆、我々の敵ではない。それにもう君達と私達の戦争は始まっているのだからね…ん?」
フェミリアの背後から見たことのある、あの禍々しい闇、獣人国で庄司が入っていったあの闇だ。
「フェミリア…喋りすぎよ。それに時間です、もう帰ってきなさい」
闇の中から声がすると、彼はカラカラと笑いながら席を立ち闇の中に向かい歩いていく。
「そうそう「最強」、我々は君と戦場で相対する事をとても楽しみしているよ。まぁその時は君の命日だがね」
フェミリアが闇の中へ姿を消したその時、彼の支配下から離れた骸骨達はバラバラと音を立て、その場にはジュンとミア2人だけが残されている。
「ミア…獣人国に向かうぞ。俺の予感が間違っていないなら、奴らは仁君やギリアム達にも接触している筈だ、それに新しく後2人戦争に向けて人員を補充したい、めぼしい奴が一人獣人国に居たからな。都合がいい」
「そうですね…確か「サブロー」さんでしたっけ?剣術でジュンさんと互角に撃ち合った」
「あぁ、まぁ協力してくれるか分からんがな。それに2年前の九尾ちゃんの謝罪も含めて行くか…」
普段の半分以下の力でやったとしても、ジュンと互角に張り合えうのは世界でもほんの一握りの計7人。
「獣人国所属・宝物蔵守護者 サブロー」
「赤岩探偵事務所所属・氷鬼の処刑人 ギリアム・ツェッペリン」
「上記同様所属・戦乙女 ミア・アカイワ」
「イーリア国所属・全体指揮長 ライガル族 ガルム」
「イーリア国所属・現国王 ギルバート・フェン・イーリア」
「イーリア国所属・酒場経営者 カシオ・ショールド」
「根無し草・傭兵 デューク・エル・ヴァンパイア」
ジュンが現在、把握しているのはこの上記7人のみ、そしてこの5人の内何名協力してくれるのかは不明だが、最低でも後2人は力を貸してもらう必要がある。
場合によっては世界を巻き込む、前代未聞の大戦となるかも知れないのだ。
この事を考えながら、ジュンとミアは墓地を歩き去っていく。
いざ目的地は「獣人国・霊孤山国主館」へ。
To Be Continued




