第3ー8話 赤岩夫妻シシリアルにて
「ふ~やっと付いたぜ…船ってやっぱ時間掛かるなぁ」
「たまには良いじゃないですか、こうやって時間を掛けて旅をするのも」
「…まぁミアがそう言うなら、それでいいか!」
仁やギリアムが、事務所兼屋敷を出発してからの4日程過ぎた頃、ジュンとミアは「娯楽王国・シシリアル」へと到着し、多少の手荷物を持ち船から降りていた。
ジュンは服は普段のままなのだが、深く黒のハットを被り目元は遠目で見る限り、あまり露出しておらずひと目では「最強」とはわからない。ミアも普段のメイド服は来ておらず、濃紺のシックな大人の女性と言った雰囲気を醸し出す、上品なドレスに身を包み肩からは純白の布を掛け海風でたなびかせている。
「おい…あれって、最強じゃねぇか?!」
「いや似てるけどきっと別人だって!…でも連れてる女も中々のベッピンさんだよなぁ」
2人が街を歩くと、やはり少しよどめきが生まれる、アカイワジュン本人かはたまた似ている別人に、世界でも何本指の内には入るである美女が、歩いているのだ視線を集めない筈がない。
「…ん~、そろそろ王女の所の使いとの待ち合わせの時間何だけどな…」
「あら?少し早かったですか?」
「そうみたい、んじゃブラっとその辺見て回るか」
「ふふっ、それってデートのお誘いですか?」
「もちろん!さっ行きましょうかお嬢さん」
久し振りに夫婦水入らず、少々小洒落たジョーク等も挟みつつ2人は色々な物を見て回り、時間を潰していた。
服屋に入り商品を見たり、帰りに事務所の皆に配る用の土産の選定、見たこともない珍しい食べ物の試食等で、散財しないにしろじっくり楽しめた2人は待ち合わせ場所に戻る。
ジュンは手荷物を、一度地面へと起き懐中時計を懐から出し時間を確認していると、一人の少し落ちぶれた風貌の男がジュンの荷物へと手を伸ばす。
「(マヌケめ、警戒心ってもんが無いのか?これだから貴族相手のスリってのは止められねぇ、金目の物は持ってるし、何より取られたって気付いた時のあの間抜け顔が最高なんだよ)」
男が普段の通り、旅行客相手にする様に、流れる動作でジュンの手荷物へと手を付けたその時、男は頭が地面足が空へ向いて、逆さまにひっくり返っていた。
想定していたよりも、手荷物は格段に重くとても普通の人間に持てた物ではない。
「ん?お兄さん大丈夫かい?」
ジュンは男へと手を伸ばし、少々強引ながらも引き上げ立たせると、男の体に付いた土埃りを払ってやると耳元で低く、ドスの聞いた声で男に囁いた。
「しょうもない事ばっかしてたら…しばくぞ」
普段の紳士な彼からは、あまり想像の出来ない流暢な関西弁に、低くゆっくりと迫る彼の声に男は失禁寸前、足は震え奥歯が浮き頭の中で「金輪際スリはしない」と近い、一目散に逃げていった。
「あら?ジュンさんどうかされました?」
「んっ?あぁ、さっきの男の人が俺の荷物に躓いて謝ってただけだよ。声かけたら直ぐに逃げちゃったけど」
ジュンはミアに軽く誤魔化しを入れ、説明をしていると、一台の「シシリアル国・王族紋章」の刻まれた一台の、絢爛豪華な馬車がジュン達の前で停車した。
「oh…異世界版ロールス・ロイス…」
王族にしか所持の許されていない、選ばれし者ののみが乗れる「高級車」の様な出で立ちの馬車。
普通馬車は馬二頭で引き、安皮の手綱で操るのが一般的で、ジュン達も家に一台持っているのだが、目の前の馬車は馬4頭で引き、それぞれの馬には純銀製の鎧を付けられ、馬車の本体というよりも人が乗る空間は、真っ赤に塗装され壁と壁の継ぎ目には金色の装飾を施し、見るもの全ての目を引いて仕方ない。
ジュン達の馬車とこの馬車を比べるのであれば、普通のホ◯ダ製軽自動車と大統領専用ベンツの違いくらいは有る。
「アカイワご夫妻様、遠い所からわざわざご足労、大変恐縮痛み入ります」
手綱を離し馬車から降りてきた、シルクハットを被った細い老人は、胸に手を当てジュン達に一礼をし、無礼が無いよう紳士に礼を交わしていく。
「いえ此方こそ。今回は依頼をして頂き誠にありがとうございます、詳しい依頼内容は城でお伺いでよろしいですか?」
「此方もそのよう、手筈を整えておりますので。ですが今回の件を大方纏めた書類を馬車内に置いてありますので、そちらも見て頂けると幸いかと。」
老人はジュンを馬車まで案内し、自分は客人の荷物を荷台へと乗せようとするが、全く持ち上がらず年甲斐もなく顔を真っ赤にし息を荒げている。
「あっすみません。荷物は自分で荷台に乗せますんで。」
ジュンは老人に爽やかな笑顔を向けると、荷物を軽く持ち上げ荷台に乗せ、手慣れた様子でガッチリと紐を括り付けていく。
「ミアこれどう思う…」
ジュンは馬車の中にあった、書類を読み終わるとミアに手渡し意見を求める。
「墓地にて赤い目の白衣を着た骸骨ですか…何か今まであった魔人の依頼とは異質…な雰囲気が」
「あぁ俺もそう思うんだ、ただの骸骨ならただのアンデットの線も有るけど、今回の異質な点と言えば、その次の行動なんだよな。」
「これですね「目撃した青年を殺さず、自身は魔人だと名乗り、2通の封書を持たせ街へと帰した」…って所ですよね、青年は身体面・精神面共に健康そのもの。今までの魔人なら、人を見れば即座に殺していたでしょうし、何よりこの封書が何かですね」
「そう、その封書の中身を見ない事には、俺もなんとも言えない。ただの愉快犯か…なにか別の目的が有るのか」
「別の目的?」
「例えば…俺を呼び出す為に。とか?」
2人はくすくすと笑いながらも、窓から王城が見えてきたのでゆっくりと降車する準備を始めている。
王城の玄関前へと到着すると、そこには一列に整列したメイドや執事が傅き、騎士をぞろぞろと連れ歩いてくる女性が一人。
「はぁ…」
この光景だけでジュンは心底疲れており、頭に手を当て深い溜め息を付いている、その横で元王族の世話をしていたミアでさえ、少々反応に困るこの仰々しい行進。
ジュンに向かい騎士をぞろぞろと引き連れた、ドヤ顔全開の女性はこのシシリアルで1番偉い人「娯楽女王・メイリーン・レノ・シシリアル」。
「よく来たな!アカイワジュン!どう!?びっくりしたんじゃないかしら!」
指を真っ直ぐジュンに向け、この行進隊を自慢する彼女。
To Be Continued




