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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第3章 獣人国・宝物蔵の守護者編
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第3ー7話 侍狐サブロー

 庄司が消えてから、仁は気を失いリューコ・ギリアム・アスタに連れられ、国主館へと戻っていた。顔は青ざめ、呼吸も荒くひと目見れば異常という事はハッキリわかる。

 仁が眠る傍ら、アスタも仁に釣られ横でぐっすり眠っているのを確認したギリアムは、仁を看病し濡れた手ぬぐいを変えている、リューコに真剣な面持ちで話しかけた。ギリアム自身も、信じ難い現実を。

「魔女、お前もしあの「魔族・ロザミア」が生き返った…と俺が言ったらどうする」

「…正直、嘘じゃないかと思う…でもあんたは冗談なんか言える器用な性格してないのは知ってるつもりよ。…生き返ったの?ロザミアが」

「あぁ…、といっても半分確信、半分疑惑…というよりも「あいつではない生き返る筈がない」と言う、願望かも知れんが…俺は見たんだ…奴の禍々しい「能力」を。それにあのイラつく声を聞いた。自分でも嘘であってくれと今でも思っている」


 ギリアム自身と、ジュン・ミア・アスタの4人でやっと倒せたあの魔族、正直自分たちが成長したと言え、ジュン達と離れた今襲われると全滅は確実。

 だが今それ以上に気にしているのは、奴も一度ジュンに敗れたのだから、今回は前以上に策や他の何かを共謀しているに違いないと言う確信、街で戦った庄司の様な悪の下僕を見れば、嫌でも他に居ると言う可能性も出てくる、自分達だけで全て乗り越え3年前の様にロザミアを倒せるとは限らない。もしやすると会えずに死んでしまう可能性だってある。

「今シシリアルに居る、アカイワに連絡を取る事は可能か?」

「んー…少し難しいかも。鳩を飛ばしたとしても、やっぱり数日は掛かるかも」

「そうか…、まぁしない事に越したことは無い。ヘタレが目を覚ましたら俺の所へ来いと伝えろ、俺はアカイワに連絡をしてみる」

「わかった、それとどうする?獣人国から引き上げて、屋敷に戻る手配は」

「いやそれはアカイワからの連絡を待つとしよう、それにショージと言うガキがここに来た以上何か有る気がする、俺はこっちに残るのが得策と思うがな」


 部屋を後にしたギリアムは、切羽詰まったというよりも、何か不愉快な思いをし苦虫を噛み潰した様な難しい表情をしている。

「俺がアカイワの力を借り、相談しなければならんとは……はぁ、屈辱だ」



~~~国主館・客間~~~

 僕が目を覚ますと、初めての研修の日の後と同様にリューコさんが僕の額に手を当て、濡れた手ぬぐいを変えていてくれていた。

「あら?ジン君目を覚ました?」

「はい…すみません、お見苦しい所を…」

「いいのいいの、気にしないで。でも大丈夫?顔色凄く悪かったけど」


 彼女は僕を心配し、額と額を当て熱を測ってくれるが、女性とこんなにも密着するのは…緊張する。それに眼福と言えば眼福なのだが、目には刺激の強いものが視界にチラチラと入ってしまう、男の性だろうか…

 異常無しとリューコさんに太鼓判を押され、ギリアムさんが呼んでいるという事で、彼の所へ向かう為立とうとした時、右手にずしりとした重さを感じた。そちらに視線を移すと、静かに眠っているアスタちゃんが、僕の右手をしっかり掴み解けそうにない。

「あはは、アスタちゃんは随分ジン君の事気に入ってるみたいだね~。」

 少々困りながらも、眠る彼女を起こさないようゆっくりと手を離し、リューコさんに任せ僕は部屋を出た。


 廊下に出ると、床の冷たい感触が伝わり、爽やかな風が頬を撫でる、その時僕は昼間の事を思い出し、自分でも想像すらしていなかった、この世界で庄司君と出会うなんて。考えたくもなかった…という現実に、少し後悔に似た感情を覚えていた。

「おーい、ジン殿」

 歩いていると、中庭の方から独特な侍言葉の青年「サブロー」さんが声を掛けてきてくれた、上半身は先程まで運動していた証明とも言える汗に、手には木刀を持ち素振りでもしていた様だ。

「ジン殿、どうされたのでござるか?浮かない顔をして」

「あっサブローさん、…実は」


 何故彼に打ち明けようと思ったのか、2人で中庭の夜桜を見上げながら、僕は彼に庄司と言う名は伏せながらも、「1番会いたく無い人物と出会った」「怖くて体が動かなかった」「自分が弱いからダメなんだ」と、彼にポツリポツリと漏らしていた。

「そうでござるな…ジン殿は弱い。その御仁等と比べると、天と地、雲泥の差があるでござろう」

「ははは…サブローさんって、結構バッサリ言うんですね」

「嘘は付けん故すまんでござる、でも本当にジン殿の光魔法だけが目当て、地球?の出身のよしみというだけで「最強ザ・ワン」のアカイワ殿が、ジン殿を守り教育しようなどと思うでござろうか?拙者なら可哀想だとは思えど「教育」しようなどとは思わんでござるな」

「教育…」

「そう。人に何かを伝える、教えると言う行為は、その者の人生を大きく変えるかもしれぬし、何より時間と労力を多大なまでに費やす。どうでもいいと思っている相手には決して出来んでござろ?ジン殿がアカイワ殿にどう言ったのかは拙者には分からぬ。だがこうして、アカイワ殿の元で学びたいと思った何かが有るのでござろう」

 サブローは弱い自分が嫌だと言った僕に、赤岩さんが何故僕に気を掛け、ギリアムさんやリューコさんの元で働くよう言ったか、その真意を諭すように語る。


「それに、イジメ?と言ったか。これに関しては弱肉強食と言えば当然の様に思えるが、拙者はそうは思わんな。強い者が弱き者を糧とする、これは自然界の法則、でも我ら人間は知性を持つ。よって動物と同じ事をしていては、人間の恥でござろう。だが強き者に負け、恐怖を覚えるのも当然」

「そうですね…僕はいつだって…弱虫で負け組だった。でも赤岩さんと出会って少しは変われた、つもりだったんです。でもいざ彼…を思い出すと…」

「なら恐怖を乗り越えればいい、簡単な事でもなければ、茨の道かも知れぬ。だがこの茨の道を越え、恐怖を乗り越えたのならジン殿が言っておる「変わった自分」とやらになったつもりではなく、なれるのでは無いのでござろうか。それに拙者も今では剣一本でそれなりに戦えるようにはなってきた、でも最初から強い訳ではなかったでござるよ」

「やっぱり…一朝一夕でなれるものじゃない…んですね」

「あぁ。長い年月が必要でござるからな」

 サブローは座っていた腰を上げ、中庭の中心へと移動し仁を誘う。


「ジン殿、本当に変わりたいのであれば、及ばずながら拙者も協力しよう。九尾様の良き友になってくれた礼でござる」

 一振りの木刀を仁に投げ渡し、サブローは屈託のない笑みを浮かべ仁に手をこまねく。

「あっありがとうございます!…でもギリアムさんに呼ばれてて…」

「あははは、今は気にしないでいいでござろう。ギリアム殿には拙者が誘ったと言っておこう」

 こうして仁は、少々戸惑いながらもサブローに稽古を付けてもらうため、上着を廊下に置き、腕をまくりサブローの前で剣を構える。


 そうして仁はサブローから剣術の基礎から教えを受け、稽古に熱中していく。

「ジン殿!足運びが甘いでござるぞ!打ち込もう打ち込もう、という気になりすぎて、体重も前のめりに偏っているでござる、そんな動きでは相手の打ち込みに反応できませんぞ」

「はい!!」

 言われた所を直し、サブローに切りかかっていくが、彼は右手一本で構えた木刀で仁の攻撃をいなしていく。

「そうそう、中々良くなってきたでござるぞ」

 サブローが褒める中、仁の頭から重いゲンコツが振ってきた。もちろんサブローでは無い。


 涙目の仁は、拳の持ち主が居る後ろへ振り向くと、ギリアムがタバコを蒸かし怒りを露わにし佇んでいる。

「ギ…ギリアムさん。痛いですよぉ…」

「起きたら来いと言っただろ!…何楽しく稽古してんだバカタレ!」

「すっすいません…って痛だだだだだ!!ギリアムさん痛いです!!」

 ギリアムは仕置と言わんばかりに、仁の頭を右手で掴み「アイアンクロー」をお見舞いしているが、サブローはまぁまぁと宥めギリアムに事情を説明していく。


 サブローさんの説得もあり、僕達3人は廊下と庭をつなぐ階段に腰掛け会話を始めた。

「すまんなギリアム殿、連絡が遅くなって。でもジン殿は筋が有るぞ、突然始めた稽古でも必死に食らいついて弱音は吐かんからな」

「そうか?こいつは毎日ウジウジしてるがな」

「それはギリアム殿が毎日一緒に居るからでござるよ」


 眉をしかめ、気持ち悪いと言わんばかりにギリアムは嫌な顔をするが、自分の頭をガシガシと掻きながら言葉を続けた。

「胸糞悪いが、アカイワの指示だからな」

「ははははは!ギリアム殿は相変わらず律儀でござるな。そうそうギリアム殿、此方にはいつまで残るおつもりで?」

「う~む、大体2週間程か、アカイワから連絡が来るまで動けんからな」

「ならその間、ジン殿を我に貸しては頂けんか?実に鍛えがいがある」

「まぁ俺は構わんが…どうするんだヘタレ」

 ため息を付き、迷っている僕にギリアムさんは僕にサブローさんの提案をどうするか、聞いてくるがおおよそ彼の中で、僕がなんと言うのかは容易く想像しているのだろう。


「サブローさん…よろしくお願いします!」

「任された!」

 爽やかな笑顔を彼は僕に向け、「よろしく」と言う言葉は無いにしろ、握手を求め僕はその握手に応じた。


To Be Continued

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