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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第3章 獣人国・宝物蔵の守護者編
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第3ー4話 初任務「九尾玉藻御前・身辺警護」その②

~~~後春の月・8日~~~

 


 僕達が獣人国に来てから約2日が立っていた、街で見聞きした情報等を共有するため、ギリアムさんとリューコさんは国主館本殿へと来ていた。

 いつもイライラしたような態度のギリアムさんだが、今日ばかりはいつも以上にイライラしているのが、見ているだけでも解ってしまう。

「っち…、思い出してまたイライラしてきた…」

「まっまぁギリアムさん、少し落ち着きましょうよ…」

「あぁ?!ヘタレは黙ってろ!!」

 九尾の間にて、僕・リューコさん・ギリアムさん、そして九尾様から今回の1件を預かっている七尾の「ナナさん」の4人で会議をしてるのだが、突然一人の警護兵が九尾の間へと入ってきた。


「何ですかいきなり入室など…不敬ですよ」

「すっすみません…ですが火急にお耳に入れたい情報がございまして。」

 警護兵はナナに一喝されるも、額ににじみ出た汗とその見開いた眼から伺える、その緊急性に僕たちはその警護兵に耳を向けた。


「魔人フルグラが…華和省外れの裏路地にて…死亡が確認されました…、顔は消失しておりますが、身体的特徴などから確実にフルグラの亡骸と」

「…死んだ?あいつは魔人だ、一般人に到底殺せるとは思えんがな…、おい兵士現場まで案内しろ」

「はっ!」


 ギリアムさんは、リューコさんに会議の続きをしておくよう指示をし、僕を同行させ犬車に乗り込み現場へと向かっていった。


~~~華和省外れ・裏路地~~~


 僕たちが現場に到着したのはあれから約30分後、付いた所には兵士が約20人程居て野次馬達を遮っている。

 僕達の姿を見ると、兵は通路を開け壮年の兵士、この隊のリーダーらしき男がギリアムさんに一礼し状況を説明を始めた。

「お初にお目にかかります、私はこの部隊を一任されております、犬型獣人・メルドゥと申します。魔人フルグラの亡骸までご案内と、状況説明をさせていただきます」

「あぁ、頼んだ」

「よっよろしくおねがいします」


 2人を先頭に僕は後ろからついていく形で、薄暗い裏路地の中を進んでいく。

「状況から察するに、全身の風化、一切の水分が無いことから未知の病気か、薬品や妖術を使った殺害等の線を考慮し、この2つの線で部下に捜査を命じております」

「そうか、解った。詳しい死因の判別と魔人の死亡手続きは俺達でしよう。何か進展があるなら、俺か国主館本殿に居る魔女に連絡をよこせ」

「はっ!」


 黒い布を被せられた、死体の側の周りには僕とギリアムさん、それとメルドゥさんの3人だけだ。辺りには人払いがされていて、部外者は一切居ない。

「ヘタレ、メモとペンを渡す。今から言う事をメモしろ」

「はっはい!!」

 死体の上に被せられた、黒い布を取り払いギリアムさんは、その死体をじっくりと観察する。


「名前はフルグラ、身長約170cm後半、体重90台前半、種族は蛙型獣人、死因は…!他殺だ。急所への一撃と失血死、それも大型の刀剣類での…魔術の使用痕跡有り、症状は全身の風化」

 ギリアムさんの言葉を逐一メモし、それが終了するとギリアムさんに横へ来るよう指示された。

「ヘタレ…今からする俺の真似をしろ。」

 彼はそう言うと、両手を合わせ瞳を閉じ目の前の死体へと祈りを捧げた。僕もそれを傍らで、同じ様に手を合わせた。詳しくは僕も知らないけど、地球に居た頃に葬式なんかで見たことはあるけど、いくら魔人とは言え死亡した者にこうやって手を合わせ、冥福を祈るってのは複雑な気持ちだ。


「もういいぞヘタレ、お前は本殿に戻れ、そして魔女に「今回の任務はもう2週間延長」と「俺は調べる事があるから単独で動く、魔女は九尾の警護」の2つを知らせとけ」

「はい…でも、ギリアムさんは何処に行かれるんですか?」

「調べる事があると言っただろ…、フルグラと戦う前に似たような死因の家族が居てな、もう一体別の魔人が居る可能性を考慮したまでだ。それに調査だけなら1人の方が動きやすい」

 ギリアムさんはそう言うと、ポケットからタバコを出しゆっくりと来た道とは反対方向へと歩いていった、。


~~~国主館本殿・九尾の間~~~

「…と言うことで、ギリアムさんは別行動を取るって言ってました」

「わかったわ、それじゃいつギリアムから応援要請が来るかわかんないから、ジン君達はいつでも動けるよう準備しててね。まぁ今日位は私が九尾様に付くから、2人は街でも散策してきなさい」

 会議も終了し、現場での事の顛末をリューコさんに説明をすると、アスタちゃんと2人で自由行動をして良いという指示と、多少のお小遣いを手渡して貰った。


「のぉナナや…その何じゃ、わっ我も館の外へ出たいのじゃが…ダメかのぉ?」

「駄目です」

「何でじゃ!我もアスタ達と外で遊びたいぞ!!」

「九尾様…我儘はよしてください。それにお休みを頂いたお二方の邪魔をしてはなりませんよ」

 見た目の歳相応に、九尾様はナナさんに対し我儘を言っているが、ナナさんはいつもの事と言わんばかりに九尾様の頼みを簡単に断る。


「ならナナさんこうはどうでしょうか?ジン君とアスタちゃんを護衛にして街に行かせるのは、ジン君達なら危険な場所に行くことも無いでしょうし、何よりアスタちゃんが居るから生半可な暴漢にも対応出来るでしょうし」

 まさかのリューコさんが、ここで九尾様の外出へと助け舟を出し、九尾様もそれに便乗し母親にお願い事をする子供の様に頭を下げている。

「はぁ…、仕方ありませんね。九尾様…必ず夕暮れまでには帰宅すること、そして街で食べすぎないこと、夕食が食べれませんからね、それにアスタ様とジン殿に迷惑を掛けないこと。知らない人には声を掛けられてもついて行かないこと。良いですね!」


 ナナさんは九尾様に、まるで母親の様に厳しく言い聞かせるも、九尾様は楽しみのあまりに聞いているのかどうか不安なところだ。


 身支度を済ませるため、九尾様とナナさんは九尾の私室へ向かった。

「ごめんねジン君…せっかくゆっくり遊べる機会だったのにね」

「いっいえ、そっそれに2人より3人で遊ぶ方が楽しい…と、思います」



 これから僕たちは、華和省の中央通りへと遊びに行くが、まずアスタちゃんと合流しなくては…


~~~獣人国・華和省・???~~~

「あーあ…どっかに美味そうな女か魔人になる奴は居ねぇもんかなぁ…こいつらは適合しない上に糞不味かったからなぁ。早く口直ししたいぜ」

 高台から、太陽を背に街を傍観している庄司、彼の後ろには見張りの兵の風化した死体が3体程転がっているが、その死体も風に吹き飛ばされ塵となって消えていく。



To Be Continued

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