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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第3章 獣人国・宝物蔵の守護者編
27/111

3ー3話 豚々屋にて

ここは華和省かわしょうの中央通りから、少し西に入った飲食街。周りを見渡せば屋台や、いい匂いのする中華料理屋等が立ち並ぶ町並みである。

 リューコの追跡魔法で、民家を襲撃した人物の魔力の波長を頼りにここまで来たのだが、ここでリューコの持つビー玉程の大きさの水晶が、赤く短い間隔で点滅しだした。

「ギリアム…、ターゲット発見よ」

「あぁ解った。魔女は出入り口付近の席に付き、敵の情報の収拾及び、必要な場合は後方支援。俺はターゲットを確実に仕留める。」


~~~華和省・飲食街「とんとん」~~~

 豚の頭をした店主は、大きな声で来客したギリアム達に挨拶をし、若い犬方の女性はギリアム達を席に案内しようとするも、ギリアムは一人で奥の座敷席に座る、嫌がる女性を侍らせ大きな声で馬鹿笑いをする男の席の横に座った。

 対象の男の特徴は、腹は少し出ており長い舌、皮膚は青緑の蛙の様な見た目だ。ギリアムはその男の隣席に座り、いつもの様にタバコを一本。

 男はタバコが嫌いなのだろうか、頭蓋から飛び出た赤色の瞳をギリアムに向けた。

「おいおいおいおい、そこのあんちゃんよ~…。俺の横で喫煙なんざ、ちぃとばかし失礼じゃないか~?!煙も掛かるし、何よりここは禁煙席だぜ~」

「…ふん、失礼なものか。だがここが禁煙席とは知らなかった、そこは謝罪しよう」

 と言いギリアムは、男の湯呑みにタバコを入れ火を消す。

「何しとんじゃワレェッ!!おいコラ人が優しい言うとる間に聞いとかなアカンどコラァっ!!!」

 

 男の長い真っ赤な舌が、ギリアムの胴に巻きつけられるも、ギリアムは表情を一切変えず目の前の男を見据える。

「貴様が、近辺の破壊行動及び連続死傷事件を行った魔人フルグラで間違いないな」

「だったらどうだってんだ!!」

 巻きつけられた箇所を軸に、ギリアムは壁や床に叩きつけられるも、全くダメージは無いようだ。

「おい魔女!敵情報は解析どの程度進んだ!」

「大体80%かな。体の体組織から純粋な「蛙型獣人」、魔人化深度は1よ」

「…なら、必要分は集まったな。魔女の出る幕は無い30秒で終わらせる。」

「はいはい…勝手にしなさい。私はご飯食べてるから」

 リューコは後ろで暴れる、2人を無視し始め厨房で縮こまってる店主にメニューを開き注文を始める。



ちべてぇっ!」

 フルグラという魔人の舌は、ギリアムから漏れ出した魔力の影響で霜焼けに近い状態となり、つい拘束を緩めてしまう。

「魔人…といっても、成り立てのしかも半人前ときたもんだ…」

 やれやれと言いたげなギリアムに、目の前の魔人は激昂しがなりたてる

「こんの野郎…澄ました顔しやがって!ムカつくんだよこのボケェッ!!」

 フルグラは飛び上がり、自身の巨体を活かしたボディプレスをギリアムに繰り出した、だがこれも…効かない


 ギリアムは、自身の23年という月日を掛け鍛え上げた体に加え、卓越した戦闘の才を持つ男、攻撃はどの角度にそらし無効化する等造作もない、だが目の前のフルグラと言う魔人は、つい最近までただの普通の男だったのだ、まず勝ち目がない。

 突如手に入れた強大な力に慢心し、力での豪遊を楽しんでいただけにすぎない。


 飛び上がったフルグラの右手首を掴み、柔道の一本背負いの様にフルグラは床に組み伏せられる、そして握られた右手首から徐々に凍結が始まる。

「言ったろ…30秒だと。あと5秒以内に凍結させる、もう25秒を切ったんでな」

 そして腕を基点に、フルグラの体全身にまで急速に凍結が始まり、フルグラを包んだ氷は一気にその場で爆散する。


 魔人フルグラ、全身凍結により死亡


「脈無し…呼吸無し…瞳孔も開いてる…タイムは…29秒か!ミスった!30秒じゃねぇ!!」

 目標タイム丁度に決めれなかったギリアムは、自身の落ち度と言わんばかりに怒りを露わにする。


「ん~~~~!美味しいわぁ~~~この「エビチリ」獣人国に来たら、本場の味っての一度食べておきたかったのよね。うま辛~~~」

 この豚々屋は店主の料理が出るのが速い、ということが売りな店なのだが注文してから約20秒で出てきたのはリューコも驚いた。だが出されたエビにはしっかり火が通されており、他の野菜も実に水々しいまま火が通っている。

「…美味いなこのエビチリってやつ、おい店主他になにか無いのか」

「あっ!ちょっとギリアム!これ私の「エビチリ」よ!勝手に食べないでよ」

「いちいちうるさい魔女だ…店主、俺はそうだな…このチャ…チャッ…おい魔女これは何と読む」

「これ?あー、炒飯チャーハンね。おじさんそれ一つ」

 ギリアムは獣人国の発音に不慣れなのか、読めはするのだが中々発音が出来ない、リューコに代わりに注文をしてもらうと、今回の魔人の特徴等を書き記す為、胸ポケットからメモ用紙とペンを取り出し書き込んでいくが、書く用意が終わると同時に注文した「炒飯」が出てきた。

「おい店主…貴様何者だ」

「ここで30年この速さを売りに商売してるんでね。助けて貰ってありがたいんですがお客さん…あの蛙野郎逃げようとしてますぜ」


 後ろを振り向くと、抜き足差し脚で店外へ逃走しようとするフルグラが。

「おい待てこの野郎!!おい魔女それは俺の「炒飯」だからな!置いとけよ!!食ったらぶっ殺すぞ!!」

「…あんたはどんだけ食い意地張ってんのよ…良いから早く行きなさいよ…」

 フルグラを追いかけ、ギリアムも店外へ走り出すが、店を出るとごった返す人の波に、フルグラの蛙特有の跳躍力で屋根から屋根へ逃げ、ギリアムは次第に奴を見失ってしまう。


~~~華和省・路地裏~~~

「たっ助かった~~~。死んだふりが成功して命拾いした…」

 フルグラは自身で体の機能を一時的に停止させ、仮死状態になっており、いくらギリアムであっても仮死状態での判別は不可能だ。

 額に玉のような汗をいたフルグラは、腕で拭い更に逃げる為足を進めるが、曲がり角からある人物が出てきて鉢合わせた。

「あっ貴方様は…ショージ様!!」

「いよぉフルグラ…だったか?どうしたその傷は?誰にやられた?」

 山下庄司だ、彼は優しい慈愛に満ちた表情でフルグラの凍傷を心配し近寄る。

「きっ聞いてください!あっちの豚々屋という店にバカ強い男が!そいつにやられました!どうか…どうか私めの仇を…ぐふっ…しょ…ショージ…様?…何を?」


 ギリアムにやられ、敵討ちをしてくれると思ったフルグラは、味方だと思っていた庄司に鳩尾ちの辺りを何処から出したのか、刃渡り1m80cmは有ろうかという巨大な剣を、フルグラに突き刺していた。

「使える様なら、部下にしようかと思ってたけど…もういいやお前。まぁでも面白いものを見せてくれた礼だ、俺の糧にはしてやるよ」

 禍々しいその巨大な剣は、まるでポンプが水を吸い上げる様に、フルグラの血液を吸い取っていく。やがてフルグラは、あのギリアム達が見たあの「風化した死体」同様ミイラとなってしまった。

 その少年の顔は、先程までの慈悲等は無く、悪意の固まった様な邪悪な笑みを浮かべ、「悪の権化」と呼ばれた片鱗を表していた。


 「ったく…貴重な「魔人種」を無駄遣いさせやがって…、まぁ吸血するなら女子供か魔人だな、旨味が違うね」

 目の前に倒れ込んだフルグラの死体を、庄司はまるで土を払いのける様に頭部を踏み、どこかへ歩いて行く。



To Be Continued

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