G外伝 ギリアム・ツェッペリンと言う男
今回は順の喧嘩友達&仁の鬼上司こと「ギリアム」さんのお話し
ヘタレとチビを九尾の所に置いてきて、正解だった…
薄暗いとある1軒の民家内に、ギリアムとリューコは来ていたのだが、目の前に広がるのは無残な「血無し死体」が5人分。体の大きさからするに「夫婦・子供3人」の家族構成だろう、1番大きな男の死体は女の死体へ覆いかぶさる様に、妻と思しき女性の死体は3人のわが子を守るように…
眼球の水分すら一切残さず、カラカラに干からびギリアムが触ると塵となり風と共に去って行く。
2人は5人の仏に合掌をし、ジュン同様に彼らの冥福を祈っている。
「なぁ…魔女…」
「なに?」
「くだらん質問かも知れんが、アカイワはなぜこの様に死者に手を合わせるよう、俺達に義務を設けたと思う」
「…ジュンの国の風習…じゃないのかな。でもめったに人が死ぬことは無いって聞いたけど」
「あいつの国の風習なら俺達は、合わせる必要は無いと思うのだが」
「まぁジュンはたまに何考えてるかわかんないけど、やっぱりこの行動は何か意味があるんじゃないかな。」
「…そうか。魔女追跡を開始するぞ、術式の準備だ」
「はいはい」
ギリアム・ツェッペリン、彼はその生まれ持った類稀なる武術の才能により、幼少の頃から剣術・徒手空拳・魔術等と幅広く学を治めてきたが、病弱な妹と自身の患った【魔漏症】と言う、自身の意志とは無関係に体外に魔力が流れ出る病気を発症している。
この魔漏症は代々ツェッペリン家の者が発症しており、3年前まで医学や魔術では解明すら不可能な奇病だったのだが、この魔女リューコを彼と妹に引き合わせ、2年の歳月を掛け根本となる原因の解消には至ってはいないが、症状を軽くする治療法を確立したのは紛れもない「赤岩 順」だ。
ギリアムは自身よりも妹の命を優先し、8つの時に亡くした両親の遺産を妹の体のために使い、どんな病気でも治すと言う『万能薬』を求め何度も何度も人を殺めた。時には探す人を雇う資金を稼ぐ為、時には万能薬を購入する資金の為、時には万能薬を貰い受ける為に。
だがどれもこれも眉唾物で、妹の体は治るはずもなかった。
だがそれでも彼は何度も…何度も…死体の山を作り上げ、妹のために色んな人間の人生を潰してきた、いつの間にか人としての感情は曖昧なものになり、妹の為に人を殺すといった言い訳のような気持ちに、そしてそれは積り積もって彼に『不安』という形で覆いかぶさった。
もしも明日、妹があのベットから起き上がらなかったらどうしよう、このまま人を殺し続けても万能薬が見つからなかったら、もしも…もしも…もしも…
彼はそんな苦悩を約12年も続けていたが、自分の唯一殺しそこなった男‹赤岩順›に人生で初めて敗北したのだ。そこでギリアムは生まれて初めて『自分に無い何か』を持つ順に嫉妬したのだ。
そして今から約3年前、800年以上生きる‹魔族・ロザミア›を順やミア達と討滅し、魔力の消耗によりその場で気絶。
そこから彼を待っていたのは妹とはもう2度と会えない「牢獄」の生活、毎日を無気力に朝起きて夜には寝る、という日々を送っていたが投獄から1ヶ月した頃か、またあの鬱陶しい男が現れた、そう‹赤岩順›だ。
順は開口一番「力を貸してくれて、ありがとう」と言い、ギリアムは戸惑った、生まれて初めての感謝、何よりもこの世で1番大嫌いな相手から…、そして順は続ける。
「俺に力をまた貸してくれ。協力してくれるなら外での生活の保証と、お前の妹とお前が抱えてる病気の症状を改善するよう手配する。失礼だがお前の事1から調べさせてもらった、もちろん妹さんの事も」
「…リィナの体が、良くなるのか…」
「あぁそうだ。…と言ってやりたいが世の中そんな上手く出来てない。だがリューコが居る、あいつは天才だ。それに必要なら全世界、西でも東でも走ってやる。治る可能性は0じゃない、どうせならそっちの「治せる可能性」に賭けてみないか?」
「…俺は1度…いや、何度も貴様を殺そうとし、何百人も殺してきた男だぞ。なぜ俺にそこまでする、しかも妹のリィナの名まで使って」
「お前にそれだけする価値が有ると、俺が判断したからだ。それに今まで殺すだけだったお前が、今度は人を生かす為に戦うんだ。それが俺の作る【会社】の立派なアピールポイントになるんだよ」
「俺が人を…生かす?」
「あぁそうだ。正直お前は今世界で『大罪人』という肩書を持っている、でもそれを俺が逆手に取って「大罪人すら更生させた」ってなれば、『最強』の名前がもっと売れるだろ?」
「ふん…結局お前も、道具として俺を使うんだろ。良いぜその話し乗ってやる、だが俺の1番の目的はリィナの事だ。目的が達成したらお前をぶっ殺してやる」
「おう、良いぜかかってこいよ何度でも返り討ちにしてやっからよ。それに俺は道具はかなりこき使う性分だ、覚悟しとけよ」
「上等だ」
獄中で交わされた、この数言の会話だけだが、ギリアムはリィナの為ならなんでもして来た、今までもこれからもそれだけは変わらない、その覚悟でのみ動く。
彼が出所し、赤岩順の元で働きだして2ヶ月が過ぎた頃。とある名もない辺境の村が魔物に襲われている所を、ギリアムも加え5名で救った時の話だ。
「ギリアム!そっちに逃げ遅れた人が居る!カバー頼む!」
「あぁ!?うっせぇ!解ってる!」
村人の小さな子どもとその母だろうか、2人が襲われてるのをギリアムが氷の魔法で魔物を倒し、2人の窮地を救った。
「ありがとうございます、ありがとうございます」と、母は何度も何度も涙を流しながら、小さな女児は「氷のお兄ちゃんありがとー!」と感謝の言葉を彼に。
その言葉を聞くと、自然に彼の口角は上がり「ふっ…」と笑みが溢れた。
「感謝か…馬鹿らしい」
「おーいギリアムー!こっちの魔物は終わったぜ。…あれれ~~ギリアムちゃ~ん、感謝されて嬉しかったのでちゅか~?」
ギリアムが感謝を受け、初めて溢した笑みを見た順は面白おかしく茶化し、そこからこう言った。
「他人を傷つけて食う飯より、人助けをして食う飯の方が上手い。どうだギリアムこれから「人助けをして食う最高の飯」楽しみじゃね?しかもミアの料理だぜ!」
相も変わらず馬鹿みたいに鬱陶しい男だ、馬鹿で、無神経で、めちゃくちゃな男だ。
「ふん…戦乙女が作った飯など知れてる、それにそんな飯など微塵も楽しみじゃねぇ。だが食料が勿体無いから喰ってやる、感謝しろ」
「はぁ?!お前今言ったな!食ってから後悔すんなよ!本気で美味ぇからな!美味かったらお前謝れよ!」
飯を美味いと感じたのは、実に12年ぶりだった眼の前のモノクロだった世界が色付くように、積もっていた何かが少し取れた気がした。何を食べても味もせず、食事を楽しむと言う事を長らく忘れていたという事を思い出したんだ。
そこからギリアムは、徐々に人の命を助ける様になり、彼なりに人の命を慈しむ事を覚えた。
これが氷鬼の処刑人が、人々に害を成す「魔人」と戦う正義の意志を継いだ話だ。
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「…アム…ギリアム!解析終わったわよ!」
「あっあぁ、ならとっとと行くぞ」
そうしてギリアム達は、風化したような死体の家を後にし魔人を倒すため街に戻っていく。
To Be Continued




