第3ー2話 短気は損気
僕とアスタちゃんは九尾様の護衛、ギリアムさん達は魔人を探しに城下へ、ふた手に別れて行動を開始し早3時間が経過した。
「仁よ、護衛とやらも暇なものじゃろう。退屈はせんのか?」
「いえ、だっ大丈夫です。」
九尾様がイーリアの国王宛、に親書を書くと言っていたので只今は九尾様の自室兼書斎に居る。
「ナナ、茶を持て」
「はい、承りました」
そう彼女が短く指示を出すと、7本の尾を持つ狐の女性「ナナ」さんは、部屋から退室しお茶を取りに行く。そしてアスタちゃんは、九尾様の尻尾を抱きまくらのように抱え、静かに寝息を立てぐっすりと寝ている。
「本当にアスタは自由な奴よのぉ」
「すっすいません!今起こしますので!」
「いや、良い。我にここまで、普通の立ち振舞で接せれるのは、此奴とナナ位じゃし、ここに居る他はなんとも面白味のない、政事しか頭に無いジジイくらいしかおらんからの」
「はっ…はぁ」
「そうじゃ仁、お主に聞きたい事があったんじゃ」
九尾様はそう言うと、僕の腰から下げたガンホルダーに興味を示し、質問をしてくる。
「それは何じゃ?筒に何やら刃が付いておるようじゃが…」
「これはえーと、魔導銃のジキルとハイドって言って、貯めた魔力を物凄い速さと威力で打ち出す魔道具…ですかね?」
「いや、我がなんじゃと聞いておるのに、我に聞き返されても困るわ」
「すっすいません…」
「でも凄い速さと、威力か…もしやすれば」
九尾様は何やら悪巧みをした笑みで、僕を引っ張り何処かへ連行していく。
「九尾様お茶が入りました…あら?」
私室には深い眠りに付き、幸せそうな顔をしたアスタだけが写った。
「アスタロッテ様、起きてくださいまし」
「…なーにー?」
「九尾様は何処へ行かれたのでしょうか?」
「…?アスタ知らないよ?」
~~~本殿・中庭~~~
庭は大きな桜の木が根を張り、その対角線上には大きな蔵だろうか、白い壁に黒い瓦の乗った小さな建物があった。地面には真っ白な小石が敷き詰められ、溝の陰影でまるで「川」が流れているように見える、現代の日本ではもう殆ど見ない「日本庭園」の面持ちの庭だ。
「ほれ仁、あやつを撃って見せい。」
「へっ?!」
僕はあまりの命令に耳を疑った、あの白い小さな建物の前に座る、一人の青年を「撃て」と命令してきたのだ。そう僕に今この人は「人を殺せ」と命令したのだ。
いくら退屈だからってやっていい事と、悪い事がある!
必死に抵抗するも、ジキルを奪い取った九尾様は銃をカチャカチャと弄っているが、使い方が解らない様で、銃口を覗き込んだり、銃口を此方に向けたりしていた。
「ちょちょっと九尾様、返してください!!危ないです!怪我じゃすみませんよ!?」
「いいじゃろちょっと位!それに我がやれと言ってやらんお主が悪いのじゃ!」
九尾様から銃を取り上げようとし、もみ合いになった時、赤岩さんに誤射した時の様に、トリガーが押し込まれ魔弾が発射される。
偶然か意図的か…、銃口は蔵前に座る青年に向いており、僕はこう考えた。
「(あぁ、駄目だ!当たる!)」
魔弾が横から青年の頭を撃ち抜くその刹那、急に魔弾は2つに分裂し青年の横を素通りしていく。
青年の姿勢は、先程まで正座をしていたのに何があったのだろう、僕たちは一時も目を離していない、それなのに彼は右足を上げ腰に携えた刀を抜刀していた。
「おや九尾様、またお痛ですか?程々にしてくださいよ。それに拙者にそんな玩具は当たりませぬよ」
「ふんっ、いつから我に物申せる程、偉なったんじゃ?サブロー」
「これは厳しいお言葉。大変無礼を致しました。」
目の前の男は、特徴的な「侍言葉」に頭頂部で結った、くすんだ金の髪に特徴的な狐目をした物腰の柔らかい青年。
「仁、お主に紹介しよう。こやつは「サブロー」宝物蔵の守護人にして、我の1番のおもちゃじゃ」
「お初にお目にかかります、拙者サブローと申しまする。…仁殿は不思議な匂いをされる方ですな、あの「最強」どのと縁あるの匂いが」
僕達の居る所から、かなり離れているのにこの男は僕の放つ「地球の匂い」を嗅ぎ分けたのだ。
「いやお主、赤岩の所で働いておるのじゃから、同じような匂いがして当然じゃろ」
「ははは、そうでござったか!それでその珍妙な得物で我を闇討ちしたと」
サブローさんに九尾様と揉み合いになり、誤って撃ってしまったことを深く謝罪していたがサブローさんは軽く笑い飛ばす。
「ちっ…、今回も賭けは我の負けか」
九尾様は何やら、心底悔しげな表情で今にも呪詛を吐きそうな雰囲気だ。
「九尾様、拙者に攻撃を当てるのであれば赤岩殿か、アスタロッテ殿程の御仁でなければ無理というものでござるよ。」
「嫌じゃ!!アスタは友達じゃし、何よりあの阿呆に手伝ってもらう等、嫌じゃ!!!」
九尾様はどうやら最初の様子と、今の言葉から解釈するに赤岩さんの事を相当嫌っているか、恐れている様だ。尻尾は9本とも腹を守るように、くるりと丸まり耳はヘタっている。
「九尾様…まだあの事を引きずってるのでござるか?」
僕はそう言ったサブローさんに、赤岩さんと九尾様に何があったのか訪ねた。
~~~3年前・九尾の間~~~
3年前赤岩さんが「最強」に就任し、国王命令で各国の代表にあいさつ回りをし、この九尾の元へ来た時の話。
「ほう、お主があの魔族「ロザミア」を殺し、イーリア最強の戦士「最強」を名乗る、若僧か…それにしても顔見せの為だけに、世界を周るなどとは酔狂な奴じゃ」
「ははは、各国の方にこうして顔を覚えて貰えという国王の命令ですので。」
「ったく…あの、バカ王には困ったもんじゃ。此方にも準備や日取りがあるというのに。そう言えば…お主なぜそこの「戦乙女」を妻にしたのじゃ?そのような使用人でなくとも、お主ならもっと良い女子を娶れたろうに」
ここでジュンは下げた頭を上げずに、九尾の見えない角度で眉をピクっと動かし、わずかながらに怒りを表していたが、九尾の悪い癖は止まらない。
「いえ九尾様…私は妻の「ミア」に惚れていますので、他の女性を娶ろうなど頭にございません」
(あんのクソロリババアーーー!何好き勝手言ってくれちゃってんだコラ!?)
「ほう…だが、この我に少々失礼ではないかえ?貴族と肩を並べる妻が元は「たかが使用人」と言うのは」
ブチッ
ジュンの、額にまで膨れ上がった青筋がブチ切れた、辺は暴風の様な魔力の波動が解き放たれる。
「ほう…この九尾とやろうというのか。命知らずめ」
散々人のことを煽っていた九尾は、喧嘩を買おうと言わんばかりに、大きな9本の尾を持つ大狐へと姿を変えた。
「じゅっジュンさん!?落ち着いてください!九尾様は悪意が合って言ってる訳じゃ…」
ミアが頭を上げジュンの方へ止めに入ろうとした時、もうジュンの姿は無い。
「口の悪い糞ガキには、大人としてしぃ~~~~っかり教育してやんなくちゃダメだよな。」
いつの間にかジュンは、九尾の背の上へと昇っており、顔は笑っているが怒っているのは明白。
~~~2分後~~~
「うわ~~~ナナーーーー!!助けて欲しいのじゃーーーーっ!!!」
「まてっ!!離せミアー!こんの糞ガキ!!その腐った性根一から教育してやるーーー!!!!GRRRRR」
「ジュンさん待ってください!ちょっと!!やり過ぎですって!!っていうかガルルって貴方は何処の野生動物ですか!!」
九尾は元の小さな少女の大きさに戻り、ナナに抱きついて号泣、ジュンはと言えばミアや他の近衛兵に抑えられるも、まだ怒り狂っている。
事情はと言うと、怒ったジュンは風を手に纏い、彼いわく「散髪」とい名で九尾の金色の毛を切断していったのだ。
~~~~~
「と、いう事の顛末でござるよ。まあ少々掻い摘んで説明しましたが」
「サブロー!!もうあの話をするではない!!本当に怖かったのじゃ…全身の毛という毛を毟られるかと思ったのじゃ…」
思い出した九尾は顔面蒼白、恐ろしさのあまりか全身「マナーモード」の携帯電話の様に震えている。
「あれは九尾様が、悪うございますな。はははは」
「あっ…あはは(赤岩さんって、わりと怒りやすい人なのかな…)」
To Be Continued




