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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第3章 獣人国・宝物蔵の守護者編
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第3ー1話 初任務・「九尾玉藻御前・身辺警護」その①

 イーリア歴827年後春ごしゅんの月6日、僕・アスタちゃん・リューコさん・ギリアムさんの計四人で、獣人国首都「孤霊山これいざん華和省かわしょう」の中央通りに来ていた。

「凄い…初めての外国だ。」

「何訳の分からん事を言ってるヘタレ…うぷ…、早く国主の「九尾」の所に行くぞ…」

 真っ青な顔をしたギリアムさんは、どうやらここに来る道中の「犬車」で酔ったようで、今にも吐きそうで見るからにヤバイみたいです。


 獣人国

 国主こくしゅの「九尾玉藻御前きゅうびのたまもごぜん」が統治する国で、完全に合併されたのは約60年程昔、町並みは昔の「日本」時代は江戸辺りだろうか、どこか古いが懐かしい、そして獣人語としてこの辺りで主流なのは「漢字」である。

世界史の授業で習った程度だが、字体等を見ていると「中国語」に非常に似通っているし、一部は全く同じのだって有る。

 主な交通手段は体長約3.5m程の、超大型犬が引く「犬車」だ。犬が怖い僕は最初はかなり怖くて食べられるかと思った…、激しい上下の動きで荷台が揺れ、ギリアムさんの様に乗り物に弱い人はスグに酔ってしまう様だ。因みに一部の観光客からは、アトラクション感覚で人気らしい。



「ねーねージン君、あっちからあまーい匂いするよ。アレなんだろ?」

「あれは、おしるこだね。確か…小豆を煮た甘い汁物だったかな」

「おー!おいしそう!ねー食べに行こうよ!」


 僕の袖をグイっと彼女は引き、屋台でやっているおしるこ目掛け歩き出そうとするも

「おいチビ!まだ目的地にすら着いてねえだろ!食うのは後だ!後!」

 ギリアムさんに、一喝されその場は引き下がる彼女だが…、その後からギリアムさんの周りをクルクルと付いて回り「おしるこは?」「おしるこはまだなの?」「早く食べたい」等と、2歩3歩あるく度に質問をし、ギリアムさんは乗り物酔いに加え更にぐったりとしていた。


~~~獣人国・孤霊山・国主館本殿~~~

 本殿前では警備兵が、2人門前で僕達4人を警戒するもイーリアの紋章と、赤岩探偵事務所の捺印が押された封書を提示すると、すんなり通して貰えた。

 そこから侍女として従事する、女性の獣人の方に「九尾の間」へと通され、今僕達はそこで待機している。

「アスタちゃん、九尾さんってどんな方なんだろうね」

「アスタ会ったこと有るよ?きゅーびちゃんね、すっごい可愛いんだよ!それにね、もふもふしてるの!」

 2人でヒソヒソ声で会話するも、リューコさんに静かにと諭された後、右のふすまが開き艶やかな着物を着た、狐の尻尾と耳が有る綺麗な女性が入ってきた。


「赤岩探偵事務所の方々、大変おまたせ致しました。…本日は赤岩殿は何処へ?」

「アイツは、今別の仕事が入ったんで、今はシシリアルに向かっている。今回はこっちじゃねぇよ」

 ギリアムさんは、室内であろうとお構い無しにタバコを蒸かし、粗暴な口使いで目の前の女性に説明をする。


 彼女は「では、少々失礼を…」と一礼し、入ってきた襖に顔だけ入れ何かと会話している。

「(九尾様、赤岩殿は今回居られませんよ。早くお客人にご挨拶を、お願いします)」

「(ほっ本当か?!嘘じゃ無いじゃろうな!嘘付いたら、お主アレじゃぞ!針千本じゃぞ!)」

「(わかりましたから、早く出てきてください。)」


 暫くヒソヒソとした会話が続くと、彼女が会話していた襖から、アスタちゃんと同じくらいの背丈で、赤と黄の混じった夕日のような色の着物を着た、少女が出てきた。

「おっお待たせしたの、客人…おぉアスタではないか!久しいのぉっ!」

「やっほー!きゅーびちゃん!久し振りー」

 相も変わらず、誰にでもフレンドリーに話しかけるアスタちゃんは、手を大きく振り九尾に挨拶をする。

「こら!アスタちゃん!失礼でしょ」


 リューコさんに注意された彼女は、軽く頭をはたかれ、2人で九尾様に謝罪の為頭を下げていた。

「よいよい。アスタと我は友の中じゃからな、礼儀こそ友として逆に無礼というものじゃろう」

 その姿を見た九尾様は、軽く笑い飛ばしアスタを隣に手招いた。

「やっぱりきゅーびちゃんの尻尾もふもふだねぇ~、ふわふわ~~」

 アスタちゃんは隣に座ると、九尾の尻尾に抱きついたり、手を入れたりし感触を楽しんでいる。羨ましいと思ったのは、秘密にしておこう。


「さて友との挨拶も済んだ事じゃし、今回の「魔人」に関して話していこうかの。ナナ」

 ナナと呼ばれた艶やかな着物を着た、女性は床に手を付き今回の件を説明する前に1枚の、A4サイズの紙を僕らに渡して回った。

「これが、今回の魔人の情報です。尚目的や主な出現場所も、固定されていませんが、華和省付近で計18回に渡る目撃例と被害有り。自己掲示のように力を振りまく事から、最近魔人化したと推測されます」

「…ふむ。それだけ目撃例があるのか。それにこの事件頻度だと、まだ力が安定していないな、お宅らの推測通りここ1ヶ月以内にしたみたいだな。」

「はい、我らも此方で討伐隊を編成しましたが、やはり成り立てとは言え魔人、我らでは手に余りました故、あなた方を頼らざるを得ませんでした」

「わかった、それじゃこっちは2人1組で別れる。2人ここに置いとくが、問題は無いか?」

「当方としては問題ありませんが、一体何故?」

「まぁ推測だが、これだけ事件を起こしたやつだ、遊戯感覚で多分ここを狙う可能性を加味した上での班分けだ、魔女・俺は捜索兼討伐隊、ヘタレ・チビはここの防衛だ。何かあったら兵を走らせてくれ。すぐに戻る」



 そう言うと彼とリューコさんは、一礼し「九尾の間」を後にしていった。

「さて、堅苦しい時間が終わったのぉ。そこの坊そなた名は何という?」

「ぼっ僕ですか?!」

「お主しかおらんじゃろ…」

「すっすいません…、僕は「岡野 仁」と、もっ申します…」

「岡野 仁な、覚えたぞ。でも何じゃお主情けないのぉ、男児の癖してナヨナヨしよって」

「すっすいません…」


 九尾様のからかいを真に受けた僕は、謝罪をするもそこで九尾様に再度笑われてしまう。

「きゅーびちゃん!ジン君はすっごい優しいんだよ!この間ね晩ごはんの「唐揚げ」一つ分けてくれたし」

 どこからも無くアスタちゃんの声がしたと思い、周囲を見渡すも見当たらず暫く目で探していると、九尾様の尻尾の中からスポッと顔を出している。





 イーリア歴827年後春ごしゅんの月6日、仁初任務「九尾玉藻御前・身辺警護」初日開始

To Be Continued

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