第2ー5話 男ってほんと…バカ
ここは…何処だろう。僕は確か庭でギリアムさんの作った、氷像と戦って…それから、記憶があやふやだ、あの後何が起こったか全く覚えてない…
背中がふわふわしてる、やわらかい光、それになんだろ…とてもいい匂いがするんだ、落ち着くというか…安心する匂い。
僕が目を覚ますと、ベットに横たわった僕に「治療魔法」を施す、桃色の髪に黄金の瞳をしたとても綺麗な女性が座っていた。
「もう起きて大丈夫なの?ジン君」
「はっはい!…ありがとう…ございます」
「良かった意識が早く戻って。でも初日なのにギリアムも飛ばしすぎよ、まったく…」
彼女は此方ににっこりと、可愛らしい笑みを向けてくれ、治療を終了し立ち上がった。
「ほらジン君、書斎でジュンが待ってるよ。起きたら来るようにってさ」
「はい!…えっと…貴方は?」
再度お礼を言おうとしたが、肝心の彼女の名前を僕は知らずそこで口ごもってしまう。
「私は、リューコって言うの。…ジュンから聞いてない?」
魔女・リューコ、彼女はこの「赤岩探偵事務所」に所属する魔術・魔道具に精通し、自他共に認める大天才。
担当は「新型魔道具の開発」「魔術式関連の依頼の解決」「魔人の生体データの解析」を、主に一人で賄っており、この事務所における頭脳の役割を果たしている。
~~~屋敷・書斎~~~
「あのなぁ、お前に悪意が無いのは解るけど、それでもあれはやり過ぎだつってんだよ!」
「あぁ?!俺に任せるとお前が言った以上は、教育方針は俺の判断だろうが!それになぁっ、あんな素人を叩き上げるには、あーゆうやり方が1番なんだよっ!」
また書斎の扉越しに、赤岩さんとギリアムさんの喧嘩が聞こえてくる。
「はぁ~…また、あの2人は喧嘩してるし。」
彼女もミアさんと全く同じ反応だ、この屋敷ではこれが日常…なのだろうか
「あっ…あはは…」
「ジン君…良い?あれは「ダメな大人」の典型的な見本だから、あぁなっちゃダメよ」
「あんた達!煩いのよ!」
部屋に入ると、突然リューコは火球を赤岩さんとギリアムさんに放つ、2人は爆炎に巻かれ煙り混じりに吹き飛ばされ、髪の毛は見事なまでの「アフロ」。
「(あっ…あの髪型、6時だよ!全員集合~!で見たこと有る…)」
2人の髪型に地球の再放送で見た、昭和コントが頭をよぎった。
「もう…その内ミアちゃんに本気で怒られるわよ」
ギリアムさんは物凄く不機嫌そうに腕を組んでいるが、赤岩さんは「それは不味い」と言わんばかりに、顔を青ざめる。ミアさんって…実は凄い怖いのだろうか。
仕切り直して赤岩さんは僕に視線を移し、そこからギリアムさんに視線を移す。
「おいギリアム…仁君に何か言うこと有るんじゃないか…」
「ふん…、付いてこれないソコのヘタレが悪い」
「ったく…いい加減にしろよ…この石頭!いつまでもガキみてぇに維持張ってんじゃねぇ!」
再度喧嘩が勃発しそうになった2人、そこに僕は勇気を振り絞り割って入る。
「ギリアムさん…ありがとうございます!まだ…まだ…えっと…」
「言いたいことが、有るならはっきり言え」
「まだ未熟者で…弱い僕ですが…これからもご教授お願いしますっっっ!!」
ギリアムさんに僕は頭を下げ、指導を懇願する。その気持ちには「一寸の虫にも五分の魂」とでも言おうか、あの氷像に手も脚も出なく僕には柄にもなく「悔しい」、と言う気持ちがほんの少し湧いていた。
もうトクルの村の皆の様に辛い思いをする人を、一人でも良い減らしたいんだ、そして僕はここで「強さ」という物を学び、弱虫を卒業しなくっちゃならないんだ。
「そう思うならここで喋る暇なんか無いはずだ、1分1秒惜しむ事無く鍛錬しろ、今お前に出来んのはそれだけだ。解ったならとっとと行け!」
「はいっ!!」
僕は背中を押され書斎を後に、再度庭に向かっていく。足取りは軽く、体が朝とは全然違う気がしたんだ。
「ふぅん~ギリアムも案外優しい面があるんだ?私はてっきり「死ね」「カス」「殺すぞ」位しか喋んないと思ってたわ」
「おい魔女…貴様の目には一体俺がどう写ってんだ!殺すぞ」
「ほらほら~また言ってる「殺すぞ」」
リューコはギリアムをからかい続けているが、突然何かを思い出したかのようにジュンに、冊子状に束ねられた紙を手渡す。
「そうそうこれ、ジュンが前に言ってた「魔導銃」の開発案、研究員達にバカ受けだったわよ。それに開発資金も各所から援助が出るみたい。でもホント男って新しい物が好きねぇ…」
「ははは、地球でも異世界でも男の本能は変わんねぇよ。新しい武器だとか、新商品とか、未知の物には目がねぇんだよ。ロマンだロマン」
「ふふっ、まぁあたしも未知の物を作ったり、発見したりするのは大好きよ。っま、使うより作る方だけどね」
「そうだな。あっリューコ、この資金計画書はミアに渡しててくれ、俺がやると怒られるからな」
異世界最強の男でも、家庭内では奥さんに財布を握られ尻に敷かれている、どこの家庭も似たようなものなのかも知れない。例え世界が変わったとしても。
「おい…アカイワその計画書俺にも見せろ。」
これにはギリアムも食いつく、やはり「男」の性として気になるらしい。
「ふむ…アカイワ、この「魔導銃」の理論だと俺達にはあまり不得手だった、長距離の攻撃が可能になるのは解ったが、近距離に寄られた場合はどうする。格闘に心得がない者だと不味いぞ」
「あぁ俺もその辺を考慮して、3ページ目に書いた通り銃身の下に備え付けたブレードを展開する様にしてるんだ」
「ほう!ここのボタンを押すと、刀身が突出し起動する仕組みになっているのか、この換装時間はどれ位だ」
「大体1秒から2秒って所だな、それにこのモードだと「魔弾」の発射が出来ないから、どちらも一長一短だな」
「ふむ…なら、供給される魔力を刀身に宿すシステムを作るのはどうだ。」
「それはいいな、なかなかの良案だ!リューコそれは出来るか?!」
リューコは呆れ返り、深い溜息を吐いていた。
「(こんな時だけ仲良いんだから)」
「おいどうなんだ!リューコ!
「おいどうなんだ!魔女」
「もう!2人いっぺんに喋んないでよ!鬱陶しい!解った!やるわよ!やるから!」
全く同じタイミングで詰められるリューコは、男というものは、何処に行っても、何をしても、何歳になっても基本的には「バカ」なのだと、改めて認識する。
魔女リューコ・本日帰還
To Be Continued




