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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第5章 20年の終止符
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第5-8話 第一回!「チキチキ!アイツをどうにかしよう会議」


 彼らは戦闘不能になった、デュークとリューコを回収すると一度城下町を後にし、赤岩家へ戻り作戦会議を開いていた。

「はいじゃあ『第1回・オーバーコートを何とかしよう』の会始めまーす」

 司会進行はどうやら順のようで、会議室に設けられた黒板に文字を書きながら開始を宣言するが、なんとも気の抜けた会議光景である。


 ミアはというと茶の配膳等で歩き回り、ギリアムはと言うと「残していた仕事を済ませる」と言い書き物をしながら参加する始末。


 本当に大丈夫かこの会議、真面目に聞いてるのジン君位なんですけど。アスタちゃんに至っては、話しを理解しているのか怪しい!

「んじゃまず……おっさん、手合わせした感覚どうだった?」

「げぇっ!一番目おっさん?んー……昔とは段違いに強くなった、それに見たことも聞いたこともない技を使うって感じかな。それよりも何でおっさんが、負けるって解ったのジュンちゃん」

 ニヤつきながら彼は席につくと、腕を組みたった一言……「あんたがアイツより弱い事は知ってたから」と言い放った。

 この事態を前から知っていたかのように言う彼は、周りの避難誘導やメンバー全員の集結を指示し、デュークが敗北した所に現れた。


「正直にぶっちゃけるわ、一対一サシならミアやギリアムでも勝てるかは怪しい」

「あ?お前今なんつった?」

「お?初見であんなトリッキーな動きする相手、俺じゃなきゃぜってぇ勝ててなかったつってんだよ!」

 机越しで急に始まった、がんの飛ばし合いはミアとジンにより宥められ二人共席に着席する。


「今回のはあくまで敵の情報を引き出すのが目的だ。……死んじまった人には申し訳ねぇがな」

 決して他人の命がどうでもいいというわけではないが、世話になった宿の女将の死亡を安く扱われたような気がしたデュークは席を立つ。

「ジュンちゃん……あんたから言わせりゃ、他人の命って情報より大事なのか?」

「……それはイエスともノーとも言えるな。俺達はこういう何でも屋兼傭兵業みたいな仕事な訳だ。時には盾よりも情報の方が命を守る事もある」

「まっそりゃそうだわな。おっさんもこの業界長いからさ、それはよく分かるけどさ」

 歯切れの悪いデュークは、考えの纏まらない頭を掻きながら自身の心境や考えを纏めようとするが、何故最初からジュンが解決の為出なかったか、何故犠牲を一人も出さない方法を取らなかったかと考え出すとやりきれなかった。


「んで、おっさんあんたの考え当ててやろうか「何故俺が最初っから動かなかったか」って考えてるだろ」

「ははっ……図星、もしかしてジュンちゃん読心術使えたりしちゃうタイプ?」

「いいや使えねぇよ?ついでに言うなら未来予知もできねぇ。でもあんたの言いたい事や、考えてる事はおおよそだが解る」

 自分の年の半分程しかない青年に、こうも心を見透かされ遠慮もなく当てられるとやはり良い気はしない……

「俺が出ない・動かない理由は色々ある。まず一つ仁君とアスタの事だ、何でもかんでも俺やギリアム、ミアやリューコの大人が解決しちまったら若い子は育たねぇ。「大人が解決してくれる」という思考回路になり、自分で試行錯誤するという考えがなくなるからな」

 振り返ると先程まで見せていたニヤつきは消え、真剣そのもので此方を睨む様に見つめていた。


 情けないかもしれないが、デュークはジュンの視線から一時も目が離せず動くこ事もままならなかった。

 経営者や何かのトップに立つ者の気迫、それとも一流のその先を超えた戦人の気迫なのか、ソレに気圧されたデュークはただ言葉を聞く事しかできなかった。

「俺の故郷がそうだった。上からの圧力や何だで下の若い衆は指示を待つだけの体制になっていた。指示だけをこなし、気が付けば自分で考える事を辞めた奴が大多数の世界だったんだよ。仁君やアスタにはそんな風になって欲しくなかったからな」


 いつの間にか作業をしていたギリアムも手を止め、皆ジュンの言葉を聞き感じていた。

「それにもう一個、俺が動くってのは1国家の戦力を総動員するのと同じだ、下手したら外交問題になりかねない。まっこれはぶっちゃけどうでもいい」

 強すぎるが故に生まれた弊害か、戦うこと自体が時には宣戦布告を意味する場合もある。彼がその気になり、腰を上げれば5大国すら滅ぼしかねないからだ。


 彼からすれば外交問題は本当に些細な事なのだろう、それよりも重要だと言わんばかりに口角をグッと上げ、最初に見せたニヤつきを見せる。

「そして何より……切り札は最後まで取っといた方がカッコいいからだ!」

 何を言い出すかと思い、真剣に聞いていた自分が本当に情けなく思える程、実に彼らしく馬鹿らしい最後の一言だった。


 会議はまだまだ始まったばかり、これからのオーバーコートに対する作戦とは?



 ~~~~????~~~~


 某国某所にあるロザミアを筆頭とした魔族の拠点、フェミリア・ショージ・ランペリオン・ロザミアの四人に加え、その茶会に同席しているルナ。

「さてこれよりルナ君が持ち帰った、赤岩家の戦闘データをゆっくりと見ていくとしようか」


 ルナの見て聞いた全てを、記憶結晶という魔導具を使いその当時の記憶を映像化し、プロジェクターの様に壁に映し出す。

 まず最初に浮かび上がった記憶映像は、ミアVSアスタという対戦カード。

 結末は当然とも言えるが、ミアの圧勝であったが二人の攻防は激しい上に、主な戦闘域は高束帯という事も相まって、二人を捉えきれておらず映像も不鮮明。

「流石ヴァルキリー、噂には聞いていましたが当時の強さは婚約し、腰を据えた今も尚健在といった所でしょうか。だがそれに付いていくあの少女もまた逸材…と言った所ですかね」


 不鮮明な画質のなか、二人の攻防を把握していたランペリオン。紳士な笑みを崩さず、二人の実力をきっちりと把握していく。

「……おせぇ……あのガキの速さは、まだこんなもんじゃねぇ……」

 キレた時のアスタの爆発力を目にし、一度その身に浴びている庄司は映像を見ただけで、今にも怒り狂いそうな殺気を垂れ流している。


 二組目 ギリアムVSジン


 ジンもあれから修羅場を潜ってきた事が解る程に、一撃の洗練具合やカウンターのタイミングや技法、他にも戦術面での立ち回りなども向上しているのが見て取れる。

 ギリアムという自分の師である彼には分が悪いが、既に並の格闘家なら汗もかかず勝利する事が可能な領域には至っている。

「おい……フェミリア、いつまでこんな胸くそ悪い映像見せんだよ、とっとと次行け」

 今まで自分よりも下と思っていたジンに、一度敗北した事で怒りを顕にする庄司は次に行くよう促すが、ランペリオンによって阻まれた。


「ショージ……一時的にでも君の師となったから言わせてもらうが、ロザミア様から聞いたよ君の敗北した時の事」

「……てめぇ、喧嘩売ってんのか……」

「素直に聞きたまえ。このまま君がこの少年に再戦を挑んだ所で、この間と同じ様に負けるのがオチだ。何が原因だと思う?」

「……俺が知るか!」

 椅子を弾き倒し、ランペリオンの胸ぐらを掴みかかる庄司。


「原因はその慢心だ。奴は自分よりも下、だから自分は負けない。等と思っている君はギリアム先輩どころか、あの少年にすら負ける」

「ふざけんな!俺は強ぇ!あんなカスに負けるはずが無い!」

 ランペリオンから乱暴に手を離すと、すぐさま何処かへ歩き去っていく彼。それを見ていたロザミアは、その怪しい色気漂う瞳を細め微笑みながら紅茶をすすっていく。


「あの子やる気になったのかしらねぇ~」

「そうであって欲しいものだ。私が言うのも何だが彼は天才だ、潜在的な能力だけを見ればいずれあのアカイワ ジュンに匹敵する」

 ロザミアとフェミリアはこの事態を想定していたのか、別段庄司を止める事もなく映像を見進めていく。


 三戦目 ジュンVSギリアム


 一連の組み手を見ていた4人だが、アカイワジュンという男の圧倒的な戦闘能力の前には、あのギリアムですら子供同然の扱いという事に、それぞれ眉間に皺を寄せ彼が自身達の計画の最後の壁になる事を再確認した。

「……すまない、ロザミア少し巻き戻すが良いかい?」

「えぇ構わないわ。でも気になるような所は特に無かったけど」

 そう言うとフェミリアは、少しずつ映像を巻き戻していく。そしてとあるワンシーンで映像を一時停止した。


 ギリアムの下半身のバネを最大に活かした上段蹴りが、ジュンの左側頭部に入った瞬間だった。

 当たった時にほんの一瞬、足が当たる箇所に魔力が集結し膜の様になっている。

「これが最強ザ・ワンの絶対防御の秘密……」


 4人はあまりの出来事に絶句する他無かった、どんな攻撃や魔術であろうとあの膜で全て無効化されてるのだから。

「あの膜を超えなければ、私達の攻撃はまず効かない……ですか」

「……あんな魔術は見たことも聞いたこともない。ロザミアなにか解るかい?」


 しばらくの沈黙が時間を進めるが、やはりロザミアであっても該当する魔術は知らない。

 よってここから推測されるのは、彼のあの膜は『体の自己防衛機能』か『彼が新しく作り出した未知の魔術』の二択に絞られた。

「これだけでも解っただけ大きい収穫だ、ロザミア……次は私自らが出よう」

「……わかったわ」


 それだけを言うとルナとロザミアを残す形で、各々解散していき上映会は幕を下ろした。


「ルナ……少し良いかしら」

「何すか?姉さん」

「人間って本当……何なのかしらねぇ」


To Be Continued

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