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異世界の語り部~僕は主人公じゃない  作者: 時雨
第5章 20年の終止符
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第5-7話 20年の終止符 前奏

 共同戦線を張る事になった俺とリューコちゃん、現状の急ごしらえの戦力としては申し分ない。

 だがこのじゃじゃ馬娘は、一向に此方の言うことを聞こうとはしない、何度巻き添えをくらいそうになったことか……。

「リューコちゃん!だからおっさんも燃えちまうって!」

「なら避けりゃ良いじゃない!おっさん何か来るわ!防御とって!」

 空中で大砲の弾と、リューコの爆炎魔法が炸裂し激しい爆風と煙幕が視界を包む。すかさず煙幕に飛び込み、やつの気配をたどり追撃に入るが相手もそれを読んでいたのか、煙幕の中で剣と剣がぶつかりあう。


 衝突の風圧で煙が晴れると、鍔迫り合いのまま空中へ何者かに放り投げられた。下を見るとリューコが即席で作り上げた大型ゴーレムが、たくましい両腕を振り上げてから元の土塊へ戻っていった。

「あはははは!やっぱり戦はこうじゃなくっちゃね!」

「ったく不愉快な笑い方しやがる……大人しくその素っ首跳ねられやがれ!」

 何度と無く交わった互いの剣、デュークの太陽の光を跳ね返す白銀の太刀と、相手の男が持っている鈍色の太刀。男の太刀は何度か衝突を繰り返すと、ボロ鉄の様に砕け散っていく。


 互いに着地すると、先に仕掛けたのは男の方だった。

「でもよぉ……すまねぇなぁデューク!!!!俺の勝ちだぁぁぁぁぁ!」

 肩・肘・拳の三ヶ所同時で繰り出された、掌底に酷似しているこの技はデュークの内蔵や筋肉繊維にダメージを与え、肋骨も2本や3本では済まない程に折られ民家の瓦礫へ吹き飛ばされる。

 常識を遥かに凌駕したその強さ、そして戦いを楽しみ遊び尽くす純粋さ、子供が虫を殺すような無邪気な残忍さ。それら全てを持つこの男に、デュークは敗北してしまう。


 リューコは駆け寄りデュークに治療を施すが、ジンやギリアムの様に歳に任せた早い速度での治癒は不可能なのだ。

 邪悪な笑みを浮かべ、治療中のリューコの腹部を蹴り上げ壁に叩きつけ、治療に戻った所を見計らって同じ様に今度は顔を蹴り上げた。

「なんでさ~そんな頑張るの?デュークは負けてもう助からない。それなのに何で助けようとするのかな?わっかんないな~」

 全身ボロボロで尚立ち上がり、デュークの元へ歩み寄ろうとするリューコ。


「なになに?もしかしてデュークに惚れちゃってた?そんなに必死になるって事はさ~」

「うるさい……こんなおっさんに誰が惚れるもんですか……あたしには一つ何よりも優先するべき命令があんのよ『仲間を死なせるな』って命令が」

 その言葉を聞いた瞬間、男は体内から剣を取り出しリューコ頭目掛け、一直線に振り下ろした。


 リューコが真っ二つに切り裂かれるその時、男は一歩引いてしまう程の殺気を感じ、思わず後ろを振り向いた。


 その後ろに居たのはジュンを筆頭とする、赤岩ファミリーの全員だった。

「リューコよくやったよ。後は見てな……俺が出る」

 ミアに普段の着ているコートを預け、指を鳴らし軽いアップを済ませ、構えを取り男に『来い』とアピールする。

「ジュン……ちゃん……やめろ……そいつ……は……俺が」

 目を覚ましたデュークは、今にも男とジュンが激突する瞬間を目にし、自身の彼岸が潰えるのか、俺は友を救えなかったのかと痛む体を起こし言葉を出すが、体が動かない。


「俺は格闘専門だが、てめぇが武器でやってくれってんならそれで相手してやる。どうするよ」

「あはははは!アンタが噂に聞いた『最強ザ・ワン』か!全力でやってくれ!んでぶっ殺した後にそのボディ俺が使ってやるよ!」

 デュークと戦っていた時とは別格の速度、それに咥えて攻撃の連携はやはり化け物じみている。だが上には上がいる、化物の上にはやはりそれより上の化物がいる。


 デュークとリューコでさえ敗北を喫した男を、ジュンは右手一本で攻撃を捌き欠伸すらする余裕があった。

 左手を上げ人差し指と中指を立てると、ミアが投げナイフの様に投げた葉巻が指の間に入り、小さな火で葉巻に火を付けると一服を始めた。

「ふぅ~……やっぱ葉巻は『ハラダ屋』に限るな。風味がそのへんとは段違いだ。ほれ……おっさんと戦ってた時みたいに全力でやれよ」

 挑発に挑発を重ねるジュン、その態度に男は徐々に苛立ちを現し、攻撃の速度もどんどん上がっていく。


「すっ凄い……あんな速い攻撃を片手で……それにタバコを吸いながら」

「ヘタレこれがどういう事か、お前に解るか」

 その様子を見ていたジンは口を開けたまま、分からないと首を横にふるとギリアムに若干呆れられた様子。

「あれはな、アカイワの野郎『キレてる』んだ」


 キレてるということは、相当怒っているのだが全く感情が分からない。口ぶりや態度は普段、皆と接する時と何ら変わりないのだから。

「まずは5%だ……」

 それだけを言うと、攻撃が当たったタイミングで拳を振り上げ、男の体制を崩すとそのまま手刀を顔に当たる寸前で止めた。

 止めた時の風圧だけでジン達には、立ち続けるのも難しい程。


「ミアー、何%まで出していい?」

「15%でお願いします。それ以上出すと、商店街が壊れかねないので」

「りょ~かいっ!……じゃあ行くぜ『15%』」

 内側から膨れ上がる筋肉と振り上げられた拳の速度により、ジュンの服の袖は跡形もなく千切れ、神速のアッパーカットは男の顎を打ち砕き、遥か上空へと打ち上げられた。


「そして、追撃行くぜ!『15%二回目』!とあっ!」

 掛け声と同時にジャンプをすると、上空から落下する男への追撃、ジュンの右足には爆炎が纏われており男の遥か上空から急降下キック。

 空中で男の体が大爆発し、胸部分に当たった事が解る抉れ方。


 地面に激突した男は、ズタボロの状態で立ち上がり楽しそうな笑い声を上げている。

「あははははははは!楽しい!面白い!愉快!痛い!最高!決めた!最強ザ・ワンアンタは最後に殺す!強い奴全部殺したらお前を殺す!」

 そう言うと男は最初に殺した、親子の母の体へ傷口から滑り込むように入り込み、その体を使い走り去り逃げていった。



「っち!本体を殺せてなかったか……仁君、アイツの名前どうするよ」

 中に本体……男の『本人』が居た事に攻撃したジュンは気付き、トドメをさせて居なかった事に悔しさを少々顕にするが、これから追う対象に付ける名前をジンに委ねた。


「死体……本人……なら『死体を重ねて着る男・オーバーコート』でどうでしょう?」

「……OK!じゃあ当面の目標は、オーバーコートの捜索及び討伐だ。だがアイツは尋常じゃなく強い、決して一人で戦わない様に。最低でも2人だ。後おっさんとリューコには話し有るから」

 睨んだように二人を見るジュン、傍から見ても怒られるというのはジンですら予想がついていた。


 新たなる敵『オーバーコート』、彼の目的は如何に。

 デュークはかつての親友を殺せるか。



 新章「20年の終止符」開幕


To Be Continued

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