第5-6話 再会
この連続殺人事件の幕引きを、期間終了と定めて彼『アカイワ ジュン』と契約を結んだ。
「ねぇリューコちゃん、そんな距離取られたら連携組み難いとおっさん思うけどなぁ」
「うっさい!それと極力話しかけないで、こんなセクハラ親父と知り合いだと思われたくない」
頬を小動物の様に膨らませてはいるが、投げかける暴言と威圧感は大型肉食獣そのもの。まぁそりゃ第一印象が最悪だった事は認めるけど、ここまで嫌うもんかねぇ普通。
~~~ 狛猫亭・一階ロビー ~~~
二人で宿に戻り彼女の口から、女将さんの死亡を伝えると親父さんは頭を抱え、見ているのが辛いほどに落ち込んでいる。
「ちょっと……一人にしてくれないか……デュークの宿泊費の受け取りは後日、行かせて頂くとお伝え下さい」
リューコは一礼をすると、無言で俺を引っ張り連れ出す。
宿前のベンチで一服をし、腹が立つ程の青空を眺めていると、横でリューコちゃんは何やら小さな道具を扱い、魔道具をいじり始めている。
「何してんの?」
「追跡用魔道具の再調整、こいつが使い物になってくれないと、これから先あのおじさんみたいな人が増えんのよ」
裁縫針に糸を通す時みたいに、彼女は難しい顔で此方には分からない程入り組んだ細かい機材をいじっている。
「……ンムム……だぁーっ!誰よこんな固く設計したバカは!……アタシだったわ……」
「おっさんがやろうか?」
彼女に声を掛けると、意外とすんなり魔道具を渡され、側で「これはこう」「アレをそーしろ」等言いたい放題言ってくれる。
そんな風に魔道具をいじっていると、ベンチに置いていたパーツが一つ転がっていった。
「やっべ!」
「もうちょっと!なにしてんのよ!早く拾って!」
運良く通行人の足に当たり、用水路に落ちたりする事は防げた。ほっと一息付き、パーツを拾い上げ通行人に謝罪をすると、言いようの無い違和感が体に走る。
体格は自分と同じほどで、銀色の髪は前髪やもみあげの様な横部分から、襟足の部分まで全て三つ編みで編まれて後ろで纏められている。鍛え抜かれた体は、褐色の肌に包まれ背中には刻まれた刻印の様な刺繍。
刺繍は一頭のヤギの頭に、3本の槍が突き刺さっている。
「(この紋章……どこかで見覚えが……)」
男はニヤリと此方に微笑みかけると、細まった目の隙間から覗かせた濁った深緑の瞳。
以前とは似ても似つかない外見なのだが、俺は確信した……「こいつが、俺の探していたダチ公だ」と。
後先を考える暇を脳に与えず、反射だけで腰に刺した居合刀を振り抜き眼の前の男を切り裂いた。だが男の掌から、一目で業物だとわかる鈍色の刀身がせり出し、往来の前で鍔迫り合いとなってしまう。
「デューク、あんまし俺の事をベラベラと話すもんじゃ無いよ~。だからあの女は死んだ、お前が喋って俺の事を知って死んだ。お前が殺したんだ。可哀想になぁ罪もない、一般市民を巻き込んじゃ駄目だよデュ~~~~ク。あはははははは!」
「……うるせぇ。あんま喋んなよ……」
せっかく数時間前にジュンちゃん達と契約したというのに、もう契約失効になりそうだこりゃ。と考えていると、体内から無尽蔵に射出される武器、同郷の元で共に培った技。その全てが自分の想像を、遥かに越えた連撃が繰り出された。
全てを弾き落とし、隙を伺うのが精一杯か。こりゃおっさん……思ったより歳かな。
「おっさん!ちょっと、こんな所で何してんのよ!」
彼女が何か語りかけて居るが、こっちも目の前の事で精一杯。言葉を聞いてる暇さえ無い。……アレを使うか。
「【絶剣・響音の太刀】」
一度刀身を鞘に戻し、刀身を鞘の中で震わせ起こる振動を相手に叩き込むこの技。特殊な振動域は相手の内蔵や、筋肉繊維をズタズタにし戦闘不能にするこの技。
確実に振動は打ち込んだはずだが、手応えが全く無い。それどころか腹が開き、此方の鞘を喰らおうとしているでは無いか。
その奇異な技に驚き、一瞬頭に登った血が冷めたが。それが此方の隙につながってしまった。
腹が開いたと思っていたが、今度は胸が大口を開け中から大筒が顔を出している。
「やばい!!!」
横に避け自分自身は無事だが、大筒の弾は近くの民家に着弾し火を上げている。
「あっはははははは!燃えてる燃えてる~、デューク~お前が避けたから無関係の人がまた傷ついた~。あはははははははは!!!あ~おもしろ~」
「うるせぇ!他人なんざ知ったことかよ!こちとらお前の命取ることに人生賭けてんだよ!」
周囲の阿鼻叫喚が耳に突き刺さり、逃げ惑う人々や消火に当たる人。
その一人の中に小さな女児が男の目に入り、口元がニタァと変形したと思うと、左手の指先から無数の縄がその女児の体を締め上げる。
「良い玩具はっけ~ん。どうお嬢ちゃん?怖い?苦しい?良いねぇ良いねぇその表情、おじさん君みたいに幸せに生きてきた子供とか、殺すのちょ~大好き」
「テメェ……子供を人質にするつもりか……」
その言葉を聞いた男は、愉快な喜劇を見た時の様に吹き出し、腹を抱えて笑っている。
「デューク……あのさぁ、そんなしょっぱい事言うなよ。面白いからやってるだけ、それ以外に理由要る?いらないよねぇ~」
そんなやり取りをしている中、締め上げられた少女の顔はどんどん青白くなり、生気がどんどん失われていく。
「やめて……やめて!娘を離して!」
母と思われる人物は、涙ながらに男に訴えかけ娘を離すよう懇願している。この母子に注意が向いた……今が最初で最後のチャンスか……3人もろとも切り抜ける。
そう決意し居合刀に手を当て、抜刀の構えをとったその時。悩む素振りすら見せず母親に子供を返したではないか。
「駄目!逃げて!」
そこでリューコちゃんの声がしたと思うと、その瞬間……母子共に背中から大型の刀剣で串刺しにされた。
「やっぱり希望を持った瞬間、地獄に叩き落すのがいっちばん楽しいわ~」
此方に向き直すと、両手を広げながらゆっくりとにじり寄り刃と刃がかち合う間合いに入った瞬間、背後から魔力が圧縮され打ち出されるレーザー砲が放たれる。
「あんただけは……絶対に許さない。おっさん!今は痴漢だとかどうとか水に流してあげる!だからあの野郎をぶっ飛ばすの手伝いなさい!」
「あぁぁ……ったくもう!おっさん一人でやらせてくれよったく!」
思わぬ形での再会と、共闘は一体どうなることやら。
~~~イーリア国・???~~~
「はぁ~おっさんとリューコ、案外いいペア何じゃねぇの。ミア悪いギリアムと仁君使って周りの人払い、アスタには憲兵への連絡させて。それ終わったら残った人の救出作業入ってくれるか?」
「はいはいわかりましたよ。ジュンさん今回も見てるだけですか?」
「ん~そうだね。二人が死ぬ一歩手前なら出るかな。おっさんの実力を見ときたいし、切り札は最後までとっておくもんでしょ」
「それ自分で言いますか……まぁ、間違ってはないんですけどね」
例のごとく傍観と周囲の手配に勤しむ夫婦、ミアが走り去ったと同時にどこから仕入れてきたのか、遠望鏡に目を当てながら焼き鳥を頬張り半笑いで眺めているジュン。
To Be Continued




