90:進展
ドクン ドクン
自分の心臓が発する鼓動の音がやけに大きく聞こえる
俺が気持ちを伝えるとラキアは顔を俯かせてしまい、静寂が場を支配する
沈黙が痛い
流れる時間がとても遅く感じるし、考えが止まらない。悪い考えばかりが頭をよぎる
ラキアは俺のこと好きじゃなくて、下手したら嫌いなんじゃないのか?
そんな風に見てなかったとか?
ここは俺から聞いた方がいいのか?
待っていた方がいいのか?
わからない
どうしたらいいんだー!
表には出さずとも心の中で次々といろんな可能性を考えているとラキアの顔から光るものが落ちていくのが見えた
涙だ
いやいや、そこまで嫌だったのか!?
俺が何もできずに硬直しているとラキアが顔を上げる
「それでマスターは私にどうして欲しいのですか?」
涙を流し、目元を赤くしながら俺にそう問うてくる
俺はラキアにどうして欲しいのか
それは
「俺はラキアと召喚者と召喚獣っていう主従の関係じゃなくて、ソウマとナキアさんみたいな互いが対等で互いにわかり合って互いに支え合う、そんな恋人の関係になりたいんだ」
今までずっと言えなかったことをちゃんと言葉にして伝える
「俺の隣にずっといて欲しい」
おれがそう言うと再びラキアは顔を下に向ける。表情が見えないのでラキアがどう思い、何を考えているのかが分からない
また静かな時間が訪れるのかと思ったが、ラキアが顔を上げて言葉を発する
「私もマスターの事が好きです。いいえ、愛しています」
ラキアも自分を好きでいてくれた。その事にものすごい喜びと安堵を感じた
しかし、ラキアはその表情を曇らせ、顔を背けながら言葉を続ける
「でも、私は召喚獣で、人の姿にはなれるけど所詮は獣です。それでも良いんですか?」
ラキアの声は震えていた
それが何を意味するのか。自分の気持ちを言葉にして伝えたことで幾分か冷静になれて、ラキアの気持ちも聞き、俺は分かった気がした
きっと、怖かったのだ
気持ちを伝えて召喚獣だからと、人ではないからと拒絶されるのが怖かったのだ
後悔しないためにと気持ちを打ち明けたのに、それでも遅かった。もっと早くに気持ちを伝えていなければならなかった。勇気をだして言わなかった今までの自分をぶん殴ってやりたくなった
でも、そんな事は出来ない。やろうと思えば出来るかもしれないが
まあ、意味は無いだろう
それよりも、今はラキアの不安を取り払ってやらなければならない
「当たり前だよ。俺はラキアが好きなんだ」
言葉だけではその不安は取り除けなくて、ラキアの肩は震えている
ラキアに歩み寄り、その体を抱き寄せる
今では俺の方が身長が高くなり、俺の胸にラキアの顔がくる感じになる
びくっと体を震わせるも受け入れ、俺の背中に手を回してくる
「本当にマスターを好きでいて良いんですか」
「ああ」
「ずっと一緒にいれるって信じても良いんですか」
「ああ」
俺を見上げ、泣きながら微笑むラキアはとても眩しく見えた
「マスター……大好きです」
俺はそれに対して誓いを立てるようにキスをした
その瞬間は一瞬にも永遠にも感じられた
~~~~~~
ラキアと共にルームを出るとニヤニヤした笑みのソウマに赤面するフレッド、何処か微笑ましい表情を浮かべるライルとメイルがこちらを見ていた
こいつら見てやがったな。わざわざ出て行かせたのに
因みにルルとファイオスは床で丸くなって寝てた。ファイオスの姿は【千変万化】によって自由なのだが、ルルと同じ姿になっていた
「いやー、ここまで長かったな!ラキアさん待ちくたびれてたでしょ? クウガ、変なとこで弱気になってたから」
ぐうっ、実際のところそうだから何も言い返せない
「ふふっ、そうですね。もっと早く言って欲しかったですね」
ソウマの言葉を受けて俺の右腕に抱きつきそんな事を言う
「よし! そんじゃまあ、次はフレッドだな!」
「ええっ!?」
ここでソウマの弄り対象がフレッドに変わる
「無理! じゃなくていないから!」
すかさずボロを出してしまう
「ほらほら~、イヴ好きなんだろ? クウガみたいに気持ちを伝えようぜ!」
もの凄いいい笑顔とともに親指をビシッと立てるソウマ。かなりうざい
とその時に俺はこの部屋に向かってくる気配を感じた。人数は3で覚えのある気配
そこで俺はソウマの企みを悟る
「そうだけど……」
「じゃあ、直ぐに告れとは言わねぇからさ、本番の時に失敗しねぇようにちょっとここで練習しとこうぜ」
「れ、練習」
あー、ソウマの思う通りになっていくよ
気配ももう直ぐそこだ
「ほれ、僕は」
「僕は」
「イヴのことが?」
「イヴのことが好きです!」
ソウマに誘導され、最後は自分の気持ちが入り声が大きくなった
そして
「今の本当?」
扉が開き、そこにはイヴがいた
「ふえ?」
驚きのあまり変な声が出るフレッド
「本当なの!?」
イヴが同じことを先程よりも大きな声でフレッドに詰め寄りながら言う
「ひゃい」
イヴの勢いに圧倒されるフレッド
その返事を聞いたイヴはと言えば
真剣だった表情から一転してニヘラっと緩んだ表情に変わり
「ウチも!」
とフレッドに抱きついた
「えええー!?」
フレッドはかなりびっくりしているが他の人からしたら分かっていたことなので驚きは少ないのである
計ったようなタイミングだった事は驚いているかもしれないが
人のは分かるのに自分のこととなると分かんないのはなんで何だろうか
てかこのままじゃソウマだけ不公平だと思うんだけど……
そこで部屋に入ってきたナキアさんとメアリーさんが視界に入った
特にメアリーさんだ。抱きつくイヴの事を羨ましそうに見ているのだ。そして、その視線はソウマへ
つまりそういうことであると
さらにナキアさんと視線が合った
そこで成り立つ視線による会話
「ソウマー、お前も気持ち受け止めてあげないといけない人いるんじゃないのー?」
ソウマのニヤニヤ顔を思い出して真似し、いい仕事したぜみたいな顔してるソウマに話しかけた
「は? なに言って……」
と俺に視線を移す時にその熱が入った視線に気づきそちらを見、その視線を送る本人であるメアリーさんとばっちり視線が合う
メアリーさんは無意識だったのか、視線が合うと顔を赤くしながら慌てて視線を外す
それを見たソウマが
「え、いやでもナキアの許可が」
と視線をナキアさんにソウマが移すとナキアさんは鷹揚に頷く
既に認めているのだ
それを見たソウマは「あー」と言いながら頭を掻き
「じゃあ、お前らさっさと出てけ」
「嫌だねー。俺の見たんだから俺も見るもんね」
「あ、てことはクウガ告白したのね。良かったわね!ラキア!」
「ありがとう、ナキア」
この2人は敬称なしで呼び合うくらいには仲が良い
フレッドはイヴに抱きつかれて硬直したままである
「ほらソウマ! 女の子は待たせるなって言っているでしょ? 早くしなさい!」
脱線しかかった話を元に戻すナキアさん
「わーったから、声の大きさ下げて下げて」
そう言って表情を変え、状況について行けず何時もの冷静な感じではないメアリーさんに近づくソウマ
「メアリー」
「ひゃ、はい」
ソウマのいつになく真剣な表情のせいか変な声が出てしまっている
「俺の1番はナキアだ。それでも俺の事を想ってくれるなら俺はそれに応えたい。ナキアと一緒に俺を支えてくれ」
「うん、ナキアと一緒にソウマの力になるよ」
嬉しさと俺たちが見てる事で恥ずかしいのだろう顔が真っ赤っかだ
そんなメアリーさんにソウマは追い討ちをかける
「皆んなが見てるから軽くだけど誓いのキスな」
と言いメアリーさんの額の髪をどかして額にキスをした
それを受けてメアリーさんは呆然
ナキアさんは「私にもー!」と言いながらソウマに抱きつく
ムードやなんかは無くて物語のように感動的ではないかもしれないけど
これが俺たちの形なのだろう
隣にいるラキアを見る
俺の視線に気づき、微笑んでくれる
この笑顔を俺は守るんだ




