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89:俺の想い

 

 ドフッ


「ぐえっ」


 ん? なんか今声が


 声が聞こえた下を確認すれば俺に踏みつけられているソウマ


 どうやら特殊な空間からの転移であった為に転移場所がずれてソウマの上になってしまったようだ


「失敗した」


「言われんでも分かるわ! さっさと下りろ!」


 どうやら寝てたみたいで若干機嫌が悪い模様。結構な音量で怒鳴られた


「いや~、ごめんて。初めての事には失敗はつきものだよね、うん」


 ソウマの上から下りながら、つい言い訳がましい事を言えば


「はっ。お前が初めてだからって失敗するような奴かよ。どうせ他のこと考えててあんま集中してなかっただけだろ」


「うぐ」


 実の所その通りだったりする。皆んなに話さなきゃいけない事だったり、あの記憶の追体験の事だったりと気になる事柄が多くて


「そんで? 試練はどうだったん?」


「合格だって」


「英雄譚にも出てくる裁定者の試練を突破するなんてなー。流石、俺の親友でライバルだ!」


 笑いながらそう言い、背中をばんばん叩いてくるソウマ


 てかちゃんとセルフィアトのこと思い出したんだな


「こんな所で躓いてなんかいられないからな」


「おお、そうだよ。クウガ、そこら辺のことちゃんと説明してくれるんだよな?」


「当たり前だよ」


 そう返してアイテムボックスからリンガ開発の通信と時計の機能が付いたマジックアイテムを取り出し時刻を確認する


「ただ、もう直ぐで夕食だから戻ってから話すよ」


「りょーかい」


 俺とソウマが話している間にこちらへ来ていたフレッドにも確認する


「フレッドもそれでいいか?」


「う、うん」


 ちょっとばかしぼーっとしてる様な感じだがしょうがないことか。フレッドならセルフィアトも知ってただろうからな


「マスター、お疲れ様です」


「お疲れー」


「ああ、ありがとう。ラキアとルルは戻っててくれ。話をする時にまた呼ぶから」


「分かりました」


「お腹へったから早くね~」


 そう言い残して戻っていく


「じゃあ、帰ろうか」


「おう。てか俺も腹減ったぜ。今日の飯なんだろうな!」


 ソウマがお腹を鳴らしながら言い


「昨日は魚系だったからお肉じゃ無いかな」


 フレッドが答える


「うー、早く食いてえ~」


「ははっ、ソウマ、涎垂れてるよ」


 他愛もない話をしながら学園へと向かった




 ~~~~~~




 美味しい夕食を食べてお腹を満たし、浴場でサッパリした後、俺とソウマの部屋にあるルームに移動した


「まず、フレッドに説明するところから始めようか」


 なんかセルフィアトが言わなくても良いような事を言ったせいで少々フレッドがぎこちないので疑問とか諸々を先に解消する事になった


 フレッドの疑問は1つ。俺の感情についてだ


「まず言っておくと正直な話、俺自身も感情についてはあんまし分かんないんだ」


「そうなの?」


「ああ。分かってるのは感情というか心っていうか、そういうものは持ってる。けどそれはフレッドやソウマ達、人のものとは別物らしいんだ」


「別物?」


 フレッドは理解出来ていないようだ


「そう、別物。俺の感情は俺以外の人達が持つものとは似ているようで違うものなんだ。例でいうと、そうだな……フレッドはさ、人を殺すことに抵抗が恐怖があるだろ?」


 フレッドは少し俯きながら頷き


「うん。クウガには話したけど学校の演習場でも無理なくらいね」


「あー、だから選抜試合出なかったのか」


 納得したといった感じでソウマが相槌を打つ


「うん。魔物とか動物とかでもまだ慣れなくて少し抵抗はあるんだ」


 情けないよねと言い苦笑する


 うーん。非常に申し訳ないし、言いにくいが


「俺にはその気持ちが分からない」


「え?」


「俺には殺すことへの恐怖や罪悪感、死ぬことへの恐怖が分からない。殺したりすることへの躊躇なんかは倫理って言ったかな。詳しく言うと戦闘に関わる感情で不要だったり無い方が良いもの楽なものは全く感じなかったりするんだよ。それと、それに連れてなのか普通の感情っていったものも弱いんだ」


 これのせいで今まで不自由であったことはない。むしろ、これのおかげで俺はリンガを守る事が出来たと思っているので感謝してるくらいだ


 初めて知った時は少し動揺したもんだが、ラキアやルル、それにソウマが励ましてくれたからなんとかなったけど


 動揺してるのが感情がある証拠だってラキアが一生懸命伝えてくれたんだったな


「じゃあ、感情は有るんだよね?」


「ああ、ちゃんとな」


「そっかあ、良かった」


 ん?良かった?


 その言い方だと感情が無かったら悪いって事か?


「フレッド、感情が無かったら何かあるのか?」


「ああ、僕が遺跡を探索していたのは知ってるよね」


 俺とソウマは頷く


「遺跡には古い伝承や言い伝えなんかが壁に刻まれていたり書物として残っていたりするんだけど、そんな中の1つに心無き者についての壁画があったんだよ。大部分は風化や崩壊していて見れなかったんだけどそこに触れた時にイメージが頭の中へ流れ込んで来たんだ。そのイメージで1番強く残って忘れられないのが“神よりも、何よりも恐ろしきもの、心持たぬものなり”っていうのなんだ」


 イメージが流れ込んで来たってのはセルフィアトの使ったあの魔法と似たようなものかな


「その時のイメージは言葉に出来ないけどとても恐ろしいものだったんだ。だから凄く気になっちゃったんだ」


「やけに反応するなって思ってたけどそういう事か。トラウマって奴だな」


 トラウマ?


「「あー、ソウマのワームね」」


「2人して言うんじゃねぇよ!」


 うん、良い反応ですね


「まあ、それは置いといて」


「おい」


 非常に不満そうだが気にしない


「今から話すのは俺の目標。成し遂げねばならないと俺が思っていること」


 全員を見渡す


 正直なところ、このことに関してはまだ言うつもりは無かった。出来ないこと、身の丈に合わないことを口にするのは好きではない


 けれど、今言わなければ後悔するかもしれない


 あの英雄の記憶を見て、そう思った


「俺の目指す事は邪神の討伐だ」


 俺の言葉を聞いた皆んなの反応は異なる


 ソウマは不敵な笑み


 ラキアは微笑み


 フレッド、ライル、メイルは驚愕


 ルルとファイオスは疑問


「困っている人達を、助けを求める人達を、苦しんでいる人達を俺は放っておきたくない。見て見ぬふりをするなんていうかっこ悪いこともしたくない。この気持ちは堕神を倒した時により強くなった」


 それに俺の持つこの他の人とは違う心


 これの持つ意味を考えた


「俺は出来ないなんて思わない。何より、出来る出来ないなんて諦める為にある様な言葉だ。だから俺はこう言おう」


 俺の気持ちは伝わっているだろうか、届くだろうか


「俺は此処に邪神を討伐することを誓う」


 そして、もう1つ伝えなければいけない事


「だが、この大望を達成する事は容易ではないし、1人では不可能だ。だから、皆んなの力を俺に貸してくれ」


 1人で出来ることなんてのは必ず限界がある


 何でも出来て、1人で全てのことをこなせる人はいるだろう。かく言う俺もそういう部類の奴だと思う。けれど、1人は寂しいのだ。悲しいのだ


 様々な英雄譚や物語を読んで、分かったことがある


 それは、関わりを絶った者と、関わりをいつまでも繋いでいた者の最期は決定的に違うこと。関わりを絶った者達の最期はどれも悲しく見えた、寂しく見えた


 復讐を遂げる為1人になった者。仲間など必要ないと切り捨てた者。彼らの最期は1人で消えていくものばかりだった


 関わりを繋いでいた者達の最期が必ずしも良かったわけではない。しかし、どの物語も俺には輝いている様に見えた


 手を取り、知恵を出し合い、背中を預け、強敵に立ち向かう


 こう言った考えは復讐の果てに俺に言葉を残して死んだ、あの冒険者(・・・・・)との出会いも大きい


 俺の言葉を聞いた皆んなは少し止まっていたが、まずソウマが喋り出した


「邪神討伐とか、デカく出たもんだ。けど、そんくらいデカくなくちゃ遣り甲斐もねぇよな」


 不敵な笑みをそのままにそんな事を言うソウマ


「マスターなら必ず」


 優しく微笑み肯定をするラキア


「クウガはそう言う奴だったな」


 呆れた様にライルが言い


「私達は凄いお方にお仕えしているのですね」


 と慈愛の表情をメイルが浮かべ


「よく分かんないけどクウガは凄いからいけるよ!ボクも手伝うし!」


 と無邪気にも肯定と手伝いをしてくれると言ってくれるルル


「我が力、主の為に」


 ファイオスは恭順を示す


「本気? というか正気?」


 とフレッド


「ああ、俺は正気だし。本気で邪神討伐を目標としてる。フレッド、お前も俺に力を貸してくれ」


 どこか落ち着きなくあわあわするフレッド


「え、えーと、でもクウガは何でも出来て僕よりもすんごく強くて、そんなクウガに僕は力になれるの?」


 ふふっ、力になれるかが不安でしょうがないって事か。フレッドには自信が必要なみたいだな


 まあ、ここでなんかかっこいいこと言ってフレッドに自信を持たせてあげるっていうのが英雄譚や物語でよく見るのだったりするけど、あいにくそんなに上手く言える自信がない


 俺が言えるのはただ1つ


「ああ、俺にはお前の力が必要だ」


 明確に告げ、手を差し伸べる


 数秒間、俺が差し出した手を見つめ何かを考えるフレッド


 そして


「わかった。本当に僕が力になれるかなんて分からないけど、僕よりも凄いクウガがそう言ってくれるなら信じてみるよ」


 差し出した手を掴み言ってくれた


 俺はこの日、同じ目標に向かって共に進む仲間を、戦友を得た





 ~~~~~~





「マスター、話とは何ですか?」


 皆んなに俺の目標について話した後、俺はラキアと話す為に他の皆んなには出て行ってもらい、2人っきりになっていた


 まあ、何をするのかと言えば、告白だ


 正直、さっきの話よりもこっちの方が重大な上にとってもキツい。感情が薄いとか嘘だろとか自分で思ってしまうほど心臓がドキドキ言ってる気がする


 もし、これでも他の人よりもマシなのだとしたら俺は普通の感情だったら死んでたかも


 何故こんな事を今しようとしているのかと言えば、これもあの英雄の記憶である


 今出来ることを、今言えることを


 その時にやっておかなければ絶対に後悔すると分かったのだ


 だから俺は今日、ラキアに告白する


 ラキアは俺の事を好きなのか、とか無茶苦茶不安だが、後悔はしたく無いのだ


 あの英雄もきっと、断られるのが、今の関係が崩れるのが怖くてあの瞬間まで言えなかったのだと思う


 でも、それでは、最期の時では遅いのだ


 だから俺は今から告白する


 息を吐いて吸い、呼吸を整える


 ドキドキと鳴っている心臓の音をシャットアウトし、ラキアを正面から見る


 初めて召喚した時はラキアの方が大きかったが、今では俺は成長し、ラキアの身長を越している


 真剣な表情になった俺を見てラキアもしっかりと視線を合わせてくる


 さあ、伝えるんだ


「ラキア」


「はい、何でしょうかマスター」


 この気持ちを


「俺はお前のことが」


 好きだというこの気持ちを


「好きだ」


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