9:龍と巨人
巨人は自分を傷つけたガキを殺そうと近づいていた
理性がなくなっても、恨みが残り、それに突き動かされて、ソウマを殺そうとしていた。
途中で攻撃をしてきた虫けらを吹き飛ばし歩を進める。対象は気絶しているのか眠っているから急がなくてもいい。
そんな時だ、急に後ろから眩いほどの光が放たれたのは。
巨人はその光が気にかかり、振り向いた。
光が収まると
そこには自分と同じ大きさくらいの2本足で立つ
龍がいた
~~~~~~
俺を包んでいた光が収まり、目を開けると目線の高さが変わり、巨人と同じくらいになっていた。さっきまで感じていた体の痛みはなかった。
自分の体を確認する体は銀の鱗で覆われ所々に金の紋様が入っている。
2本足で立つのに違和感はなく、手首と肘にはイメージした通り刃が付いていた。
体に力が漲っているのが分かる
これならばあの巨人に勝てると、確信した。
これで俺は大切な人を守ることが出来る!
感情の昂りを、気合を、咆哮に変える
グオォォォォォォォォオ!!
脚に力を入れるのと同時に、足裏に魔力を集め【縮地】を使う!
ドンッ!
地面が割れる、さらに翼も使いスピードを上げて、巨人の前に移動し、そのままの勢いを載せて、左足を踏み込み、【魔纏】により炎を纏わせ腰溜めにした拳を、腰の捻りを加えながら巨人に放つ!
巨人は爆発と打撃の勢いで10m以上吹き飛び、さらに地面を削り、木をなぎ倒しながら転がっていく
油断も手加減もしない。本気で殺す。
龍になったことによりなんとなく分かった龍の魔法を使う。
口を開け魔力を口腔に集めてイメージする。奴を吹き飛ばすぜったい的な威力のブレスを!
火、風、雷、光の属性を合わせる
巨人は起き上がろうとするがその前に俺のブレスの準備が完了した
「ガアッ!」
キュン!ズドーーーーーンッ!
巨人を中心に巨大な爆発が起き、黒い煙が立ち上る
煙が晴れたところには、巨人はいなく、木は燃え尽き、地面が抉れたクレーターがあるだけだった。
そこで、龍の体は魔素になって消え、俺は元の傷だらけになった体に戻り、こちらに駆けてくるソウマの姿に安心して気を失った
~~~~~~
俺は咆哮が聞こえ、目を覚ます。
あれ、俺どうして寝てたんだっけ。
確か魔王軍の奴と戦ってぶっ飛ばしたら、ちょっとクウガに怒られて、そんで男にトドメ刺そうとしたらなんかデッカくなって、そう思ったらいきなり衝撃がきてってそうか、巨人の攻撃で気絶したってことか。
そうだクウガは!あいつは大丈夫なのか!
そう思いうつ伏せになっていた体を起こし、前を見る。
そこには銀色の鱗に所々に金の紋様が入り、額に1本、左右から後ろに流れるように2本、角が生え、翼と尻尾を持ち、手首と肘に刃のようなものが生えている、2本足で立つドラゴンが咆哮を上げていた。
それを見た俺は一瞬で理解した
あれがクウガであることを
そして、あれが向かいにいる巨人よりも圧倒的に強いことを
そして、ドラゴンが、いや、龍が動き出す。
瞬きの間に龍は巨人の前に現れ炎を纏った拳によって巨人を数10m吹き飛ばす
そして、口を開き止まる
魔力を見ることが出来ないソウマでもその圧倒的な魔力の量は感じ取ることが出来た
そして、それは放たれた。
放たれたそれは巨人に命中すると物凄い轟音を立てて巨人とその付近を蹂躙した。
龍は攻撃を放ったあと、光の粒子になって消えていった
ソウマはすぐさま駆け出した。クウガが無事であることを祈って
~~~~~~
クウガが龍となり、ブレスを放った反対側、距離にして10kmは離れた丘の上で1人と1体がクウガ達を見守っていた
「いや~、冷や冷やさせやがって。まあでも我慢して良かったかな。あいつらも良い経験になったろ。ソウマは説教だがな」
『そうだが、まだ子供なのだ。ほどほどにな』
「あいよ」
見守っていたのはアイトとその召喚獣のガロウだ。
クウガとソウマは才能があり、かなり厳しく鍛えたと言ってもまだ2人とも7歳であり、修行を始めたのも2年前なのだ。だから放り出したは良いものの心配でずっと見ていたのだ。
「にしても、ありゃ悪魔化か?俺ん時は大きさは変わらんかったが個人で違うのか制御出来るものなのか?まあ、そんな事よりもクウガのスキルだよな~」
『確かにな。流石は<称号>付きといったところじゃないか?』
「そうだな。話は変わるがこんだけ戦えるならもうダンジョン行かしても良いよな?」
『ふむ、いささか不安だが大丈夫じゃないか?そうだ、あやつらに召喚獣を呼ばせたらどうだ。それなら呼んだ奴にもよるがあやつらが呼ぶのだからその辺は心配いらんだろうし』
「おー、確かにな~。んじゃそうすっか。それじゃあ、あいつら回収して帰るか」
『クウガを速く治してやることだ』
「わーってるよ」
そう言ってアイト達はその場から消えた
~~~~~~
とある国のとある城の中、そこには謁見を終えて、王とその側近の2人がいた
「ん?」
暗い紅の短髪に深紅の瞳で、鎧を着て、背中に大剣を背負った男が聞く
「どうしたんすか?陛下」
陛下と呼ばれた背中の辺りまで伸ばした黒い髪、整った顔、赤い瞳、そして頭の左右に捻れた角を生やした男が答える
「いや、悪魔化の邪法を施し、アルメキア王国に向かわせた者の反応が消えた」
その答えに、先程の側近と似たような姿だが髪は肩辺りに揃えられ瞳に理知的な色を浮かばせる男が疑問を言う
「それはおかしくありませんか?確かその者はワイバーンで向かわせたはずなのでまだアルメキア王国にはついていないはずですが」
「ああ、どうやら途中で殺られたようだな」
「どうなさいますか?」
聞かれた陛下と呼ばれた男は少し考える素振りをし、答える
「今回はアルメキアへの攻撃は見送ることにする。一応、カルス大森林に人を送って調べさせておいて。あともう下がっていいぞ」
「はっ!」
そう言って礼をし、側近はこの場を去っていく
「さて、どんなやつがアレを殺したのかな。まあ、わかんないことはいいか。次は何処に嫌がらせをしようか」
そういって、陛下と呼ばれた男は微笑むのだった
~~~~~~
老人が木造の家の前にある開けた場所で綺麗な装飾が施され、剣身が長さ70cmほどの剣を振るっていると
キーンと控えめに光りながら音を立てて震えた
「む、この反応は。そうか、遂に現れたか。私の後継となり得る者が」
老人はそのシワができた顔に嬉しさ、寂しさなど様々な感情が現れる。
「ということは、この村で隠居生活しとる場合じゃないのう。後継を探すついでに息子に会いに行くかの、孫に会いたいし。そういえばアイト君はどうなったのかのう~、久しぶりに会いたいもんじゃ」
そう言い老人は振っていた剣を鞘に納め家の中に入っていく。
その後は数分で旅支度を済ませ、村の村長の所に行き、村を出て行くことを告げ村を去った
「さてさて、後継はどんな奴かのう~楽しみじゃ」
老人は老いを感じさせない足取りで街道を進む
その腰に剣を提げて