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82:火龍

 

 普通のマグマリザードマン・エリートと比べると強さの桁が違ったスカーとの戦いで興が乗ってきたというか、何というのか、その勢いを維持したままで攻略を進めて辿り着いた30層


 途中でその層内にいる魔物を掃討していなくても階段が現れた為、条件が変わっていたらしい。結局は全滅させるまでやっていたので関係は殆ど無かったのだが


 俺とソウマが張り切り過ぎたせいで時間は大体昼頃。フレッドの希望でお昼はボスの後に食べることになった





 30層は26層からの溶岩や赤熱した岩、割れた地面から噴出する炎という所は同じだが大きく異なる所があった


 それは、奥に聳える活火山


 あの形は確か成層火山だったかな


 そして、俺達の目の前にはこの層のボスである龍の巨大な姿


 そう、竜ではなく、龍だ


 俺達が今目にしているあの巨大なドラゴンは龍だとそう直感が、それに先日の3体の古竜と比べての推測。更に1度だけあった龍達の雰囲気に酷似している。けれども龍ではない


 酷似しているのみで、同じ訳ではないと俺は感じ取った。理由はその瞳。知性の色は見えるが、生気が感じられないのだ


 そしてここは神造迷宮ストーンパレス。そこから出される結論は


「あれってゴーレム?」


 考えついた答えに確信が持てずに2人に聞く


 が


「え?あれ偽物ってこと?」


「それはねぇだろ」


 2人はそんなこと考えてもいなかったようだ


「だって、あのドラゴンは火龍の見た目だよ?ここはストーンパレスで出てくる魔物は石や岩とかに関係する奴だから不自然だよ」


「言われてみれば」


「そういえばそうか」


 その巨大な体躯のせいで4足で立っていてもこちらを見下ろす形となる視線。先程も思ったようにその瞳には知性はあれども生気はない。鱗は鮮やかな赤。鱗のない腹部は黒色。ゴーレムかと疑ったものの、本物にしか見えない。まだ戦闘開始圏内ではない為に襲ってはこないが、その瞳は俺達をしっかりと捉え、尻尾や翼がこちらを威圧するように動く


「うーん。僕には本物にしか見えないな~」


「俺も本物にしか見えん。てか、そんな気にすることじゃねぇだろ。戦えば分かるぜ」


「そうなんだけどさ、もしそうだったら凄いなと思ったんだよ。それにリンガに言ったら面白そうだな~って」


「おー、確かに。リンガに言ったら面白そうだな。てか、彼奴なら作れるんじゃね?」


 ガアァァァァァァァァァ!


 突然の龍の咆哮。それには確かな感情が含まれていたように感じられた。タイミングからしてソウマの発言にだろうか。簡単にソウマが作れると言ったことへの製作者の怒りの代弁なのかも知れない


「おうおう。向こうさんも早く戦いたいみてぇだぜ。そろそろ始めっか」


「そうだね。ほら、びびってないで行くよフレッド」


 さつきの咆哮で恐怖の表情が浮かんでいるフレッドに声をかける


「い、いやでもさ、あれはヤバイって」


「ぐずぐず言わない。俺とソウマがいるんだから死ぬ心配はしなくて良いし、フレッドのエクストラスキルは強力だ。死ぬ心配もなく、力もある。これでやんなきゃ強くは絶対になれないよ」


「で、でも」


 強くなれないという言葉に反応するフレッド。学園の襲撃の後からだろうか、フレッドは前よりも強さを、力を求めている


 だけど、フレッドはまだ何処か躊躇いがあるように思える


 そんな状態では力など手に入ることも、ましてや強くなることも出来やしない


 リスクを背負って挑戦できないものに成長や進化はあり得ない


 フレッドの両肩を掴み、目を合わせる


「フレッド、お前は俺が見込んだ奴だ。自信を持て。無責任に出来るなんて言わない。だけど、挑戦することをやめたならそこで終わりだ。少なくとも今は俺が協力してやれる、助けてやれる」


 フレッドが俺の言葉を聞いて、恐怖の感情を抑え込み、瞼を閉じる


 そして、次に目を開けた時には強い意志を宿した瞳になっていた


「やってみるよ。そのかわりに本当に危なくなった助けてよ」


 けれどやっぱりフレッドはフレッドの模様


「そうこなくっちゃな!」


「うおっ」


「うわっ」


 上機嫌で俺とフレッドの肩に手を回してきたソウマ


「色んなことに挑戦しねぇとな!何なら可愛い子紹介してやるぜ?」


「い、いいよ!僕、好きな人いるし!……あ」


 ニヤ~っとした意地の悪そうな笑顔を浮かべてソウマがフレッドに話しかける


「ほほう。それは誰なのかな?ほれ、言ってみ」


「うう~」


 肩に回した手でフレッドの頬を突きながら催促するソウマ。可哀想な感じだが、ボロを出したのはフレッドだ。甘んじて弄りに耐えて貰うべきだろう


 しかし、目の前には更に待たされて若干不機嫌さが増したボス


「はいはい、ソウマその話は後で。敵さんがご立腹だよ」


「そういやそうだった。んじゃとっとと終わらせますかね」


「ああ、行くよ!」


「おうよ!」


「僕の馬鹿~」


 フレッドの情けない声が響きながら戦いは始まった





 ガアァァァァァァァァァ!


 やっとか! と怒りをぶつけるかのような先程の咆哮よりも大きな声での咆哮は、音が大気を揺らして衝撃波となりて、攻撃として襲い来る


 そう言えばフレッドのサポートをする約束だったので衝撃波はソウマに任せて今のうちに済ましてしまおう


 視線をソウマに送って対処を任せる。俺はフレッドに手をかざして無魔法のシールドを3枚と豪風魔法のソニックをかける


 シールドは自立して指定した対象を守る魔力で出来た盾による自動防御の魔法。ソニックは追い風を常に受けることが出来、風の噴射による推進力を得ることも出来る素早さを上げる魔法だ。因みにどちらもオリジナル。似た様な魔法があるにはあるが、効力が弱かったりしたので改良した


 フレッドの周りに3枚の半透明の盾と、風が体に纏わりつく様にして渦巻いた


 急に上がった己の性能に少し驚きを見せたが、当たり前の様に使いこなせているあたりはやはりフレッドは優秀だ


 その間で迫ってきていた音の衝撃波はソウマの槍のひと振りで発生した衝撃波にて迎撃された


 龍は今ので多少なりとも影響が出ると思っていたようで驚きが窺える


 それにしても、やっぱり本物なんだろうか。俺の勘違いか? まあ、倒せば分かることだし、攻撃してみたら分かるはずだ


 駆ける速さを上げて距離を詰める。300m以上あった距離は既に50mをきっているがまだ剣の間合いではない。剣の剣風で発生した斬撃波を飛ばしながら距離を詰めて行く。因みにフレッドは正面からではなく回り込みながら横から風魔術で攻撃を加えている


 そんな俺達に向けて火龍がとった次の手は、魔法だ。宙に多くの火球が出現し、それが一斉に放たれた。威力は龍魔法の為に高く、火球の大きさが1個で俺達の身長位の大きさがある。着弾すれば、その場で燃え上がる


 更にそんな火球が迫り来る中、火龍は右前足を振り上げて地面に叩きつけた。すると、正面から来る俺とソウマに向かって、地面を隆起させながら振り下ろしの衝撃が飛んできた


 上からの火球と正面からの衝撃による攻撃。避けるのは難しくはないが、相手は俺とソウマにとっては格下だ。なら正面から叩き潰す


「ソウマ、このまま行くよ」


「分かってるって」


 ソウマに声を掛けて俺は【碧雷】をソウマは【赫雷】を発動する


 駆ける速さが更に上がり、目の前から迫る敵の攻撃との距離が縮まった


 目の前から迫る脅威に向けて、俺は左右に持つ剣を、ソウマはその手に持つ槍を振るった。極太の、碧色の雷と赤く輝く雷が迸り火龍の攻撃を蹴散らした。雷は尚も直進し、火龍はそれを間一髪で避ける。流石にあんなのはくらわないか


 が、そんな火龍に先程俺達が放った雷よりも速く動くフレッドがその手に持つ短剣に魔力を纏わせ、火龍の左脇腹から後ろ足の間を駆け抜けた


 ギャリリリリリリリ!


 フレッドの短剣は確実に火龍の黒い腹部を引き裂き血を噴出させるかに思われたが、そんなことはなく、金属と金属が擦れ合うような音が響いて、斬撃の跡を残すだけとなった。その斬撃の跡も数秒のうちに修復されてなくなった。まるでゴーレムのように


「うわ、まじでゴーレムじゃんか」


 隣を走るソウマの若干呆れた様な感心したような声音でそう漏らす


 一応予想はしていたとは言え、これは流石に驚いた。後でリンガに教えてやろう


 そんなことを考えながらも距離を詰める。飛ばれると面倒だから先ずは翼からだね


 火龍が繰り出してきた左前足による叩きつけをソウマが槍で文字通り弾き、俺はその隙に跳び上がり火龍の背に。そして、着地と同時に翼の付け根に左右の剣をそれぞれ振るう。翼の付け根に距離があったので魔力で剣身を伸ばした


 ザンッと言う音を立てて翼を根元から断った。翼も恐らく硬い鉱石か何かで出来ていた為、地面に落ちた時に物凄い音を立てた


 だが、やはりゴーレムだからか痛みに呻くようなことはしない。更にどういう原理か、斬り飛ばした翼は光の粒子となって、その粒子が翼に集まって行く。一旦、様子を見る為に背中から降りて確認してみれば、そこには元通りとなった翼が


「やっぱ、ゴーレムだから核だよな」


 合流してきたソウマ


「僕の攻撃、魔術しか効かないんだけど」


 困ったように言うフレッド


 うーん。フレッドの方は直ぐにどうにかなるね。核は……頭か、それも眼の部分の2箇所


「核は両目。取り敢えず各自自由に」


「りょーかい」


 直ぐ様駆け出して行くソウマ


「それとフレッドはこれ使って」


 フレッドにアイテムボックスから取り出した短剣を渡す


「これは?」


「俺の父さんと弟の作った短剣。今フレッドが使ってるのよりも段違いだからそれなら攻撃が通ると思うよ。魔力を纏わせるのもやり易いと思うから。じゃあ、頑張れ」


 フレッドにそう伝えて俺も火龍に向かう


 ソウマが尻尾の薙ぎ払いを避けて豪炎魔法での目くらましをしたのに合わせて右側の足を右手の剣で切断。治るとはいえ、それは一瞬のことでは無いので体勢が崩れる火龍。そこにソウマの槍のひと突きが左目に決まり、破壊。続けてフレッドが右目を狙ったが、火龍が首を逸らすことで回避されて右目の下の辺りを切り裂いただけに終わった。この間に距離を詰め、俺が続いて左手の剣で突きを放った。素の状態でも高い身体能力と【碧雷】による上昇のため、火龍が反応することは叶わず、右目も破壊


 これで終わりかに思えたが、そんなに簡単に終わるわけも無く、瞬時に再生する火龍の瞳


 気が抜けてしまったのだろう。直ぐに火龍が行なった尻尾の攻撃をフレッドがモロにくらってしまって吹き飛ばされた。幸い、俺のシールドがあるため、怪我は無いはずだが、油断は駄目だな。感覚的にフレッドのシールドにヒビが入ったのを感じ取り、遠隔で修復し効果も上げておく


 全て消し去れば、素早く、確実に倒せるだろうが出来れば正攻法で攻略して、綺麗な状態であの火龍のゴーレムを手に入れたい。あれはコレクションとする価値が大いにあるだろう。それ程までに緻密で雄壮的だ。是非とも正攻法で行きたいところだ。正直、リンガに伝えればあれよりも凄いのを作ってくれそうだが、自分の手で入手するというのが良いのだ。自分で作るなら別だが、生産の関連には正直あまり興味が湧かない。やれば出来そうだし、剣などの武器なんかはかっこいいが自分で作りたいわけではないのは何故だろう


 まあ、そんなことはいい。正攻法を考えないと。眼というのに意味があるなら両方同時だと思うが、合っているだろうか。取り敢えずは試してみないと


「ソウマ、次は同時に行くよ!」


「任せろ!」


 火龍は切断した右側の足も既に治って此方を警戒するように見ていた。が、それは少し誤りだったようだ


 急に火龍の魔力が膨れ上がった。どうやら魔力を制御して魔法発動の兆候を隠していたようだ


 今回展開された魔法は特大の火球。大きさを表すのは難しいが、視界が埋め尽くされたというのが1番わかり易いと思う。このまま地面にぶつけさせると何が起こるか分からないので魔法で相殺しにいく


 使う属性は氷、炎を凍らす絶対なる氷!


 瞬時に魔力を練り上げてイメージを構築。そして、発動


 一瞬にして、特大サイズの火球は凍りつき、炎を閉じ込めた不思議な氷の塊になった。氷は俺が砕けるように念じて中に閉じ込めた炎は凍らさせられていたため、粒子となって消えていった


 火龍は魔法に力を傾けていたため、そこが隙となる


 俺が火龍の右目、ソウマが左目を狙える位置に移動。ソウマとタイミングを合わせて攻撃を放った


 俺は【碧雷】の能力で意志を宿した碧色の龍、ソウマは【赫雷】によって宿された赤色の狼。2体が左右から咆哮を上げ、同じタイミングで両目に直撃し、破壊することに成功


 結果は崩れ落ちる龍。どうやらあれで正解だったようだ


 動かなくなった火龍のゴーレムをアイテムボックスに回収し、吹き飛ばされたフレッドの所に向かった。吹き飛ばされてから戻ってこなかったのでどうなっているか少し心配だ。まあ、本当の所は心配なって殆どしてないけどね


 フレッドは大丈夫だろうか


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