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78:気持ちの整理と……

 

 グレイス先輩の挙動から少し不安に思いつつも、今後についての話し合いをしてから別れ、部屋で考え事をしていたら日が暮れてしまった。ソウマが帰ってきて、気づいた


 長い時間考えていたのはグレイス先輩のこと


 グレイス先輩との偽恋人を演じるのは暫くは続けていくこととなった。急に断ってしまうのもなんか悪いと思って了承したのだ


 グレイス先輩は俺に好意を持っているかもしれないと思ってしまったらずっとその事について考えてしまった


 まあ、嬉しくてそれしか考えられなくなったとかではなくて、どうしてこうなったのかを考えていた


 自分は何人もの女性と関係を持ちたいとは思っていない。まあ、複数の人を平等に愛する自信がないと言った方が良いだろうか。それに、もし俺が女性の方で自分の愛する人が他の女性も好きだと言い、俗に言うハーレムを築いたのだとしたらと考えた時、自分の中でドロドロしたものが蠢くのを感じた


 だから自分は1人の人を愛そうと随分前から心に決めている


 俺のお嫁さんとして自分の隣を一緒に歩いて欲しいと思えるのはラキアだけ。だけど未だにこの気持ちは伝えられていない


 もし、彼女が駄目だと、無理だと言うなら諦める。そう思っていても好きな人に拒絶されるかもしれないと思うと辛い


 そして、それを分かっているから俺はなるべくラキアやナキアさん辺りの女性以外には多少なりとも気を配ってきた。あまり深く関わらないように。好きになられないように


 好きといっても色々とある。俺が気をつけてきたのは、愛へと変わる好きだ。添い遂げたいと、そう思うような


 もし、告白されたなら俺は断ってしまう。そしてきっとその断られた人は悲しい思いをしてしまう。だから、気をつけてきた筈だった


 ソウマ達近しい人達以外の前ではポーカーフェイスで感情を表に出さず、近寄り難い雰囲気を出してきた


 けれども、やはり徹底的にやっていなかったからなのか、俺の予想であって確かな確信などないが、グレイス先輩が俺に対して好意を持ってしまった


 もし、これが貴族として親に言われて仕方なくだとか、打算的な考えの元での表面だけの好意なら何も俺の心は痛まなかった、悩まなかった


 だけど、分かってしまった。それが、誰かに言われたからそうしているというような紛い物ではないことが


 悲しい思いをさせたくないのなら、断らなければ良いのだと思った。それか気にしなければ良いと思ったこともある。けれども、気にせずにはいられない。心変わりが悪いものだと思ってはいないけど、これは曲げたくはないと少なくとも今は思ってる


 こういったことの話はソウマと何回かした。あいつは来るもの全てを受け入れるわけではないけれど、絶対に1人と言うわけでもない。既に1人ではないし


 あいつは言っていた、「女の人を養うのは男の甲斐性であり、強さを持つものの定めであり義務だ」と。あいつの言いたいことも、どうしてそういう考えがあるのかも分かっている。あいつの女となった人達がそれを当たり前のように容認していることも知っている


 けれども俺の気持ちは、思うところは変わらなかった


 父と母の幸せそうな生活を、姿を、この目で見ていた。自分もあんな風になりたいと、幼いながらに思い、夢見た


 そして幼い頃に母が好きだと言いながらよく読んでくれた、昔あったとある国の騎士の物語。幼い頃に将来を誓い合った騎士と王女。しかし、王女は病で亡くなってしまう。騎士は強かった。当然のように女性からのお誘いがある。けれども彼は誰にも応じず、ただ鍛錬を続けた。騎士は誓ったのだ、泣きながら、死にゆく王女に


「僕が唯一愛した、君が愛するこの国を僕が護るよ。僕の生涯を君の騎士として捧げよう」


 そうして騎士は、約束を守った。そして、その生涯を独身のまま終えた


 綺麗だと


 そう思った


 そして、憧れた


 その騎士の生き様に


 その在り方に


 だから俺はグレイス先輩の気持ちには答えることが出来ない。たとえ2番目でいいと言われても俺が許容できない。それは少し驕りが過ぎるかな


 だから考えていた。早めにこの事を伝えて悲しい思いをさせてでも諦めてもらうか。告白されないように、立ち回るか。気付かないフリをし続けるのか


 結局答えは出なかった。こういった明確な答えが無いものはやはり難しい


 けれどもこれが青春ってやつなのかな? ちょっとズレてる気がしないでも無いけど


 学校を卒業すれば、目標に向けて全速力で突き抜けるだけ。今この時しか、こんな事は考えていられないだろう


 明日からはまたダンジョンだ。気持ちを切り替えないとね




 ~~~~~~




「くそが!」


 割れた花瓶や、倒された家具が散らかされた部屋で1人の男が苛立たしげに暴れて更に散らかった部屋を酷いものにしていく


 自分がやらないからといって好き放題だ


「何故だ何故だ!何故思い通りにならん!私の物にならんのだ!」


 男は疲れたのか、動きを止めて額に浮かんだ汗を乱暴に拭う


「これもあのクウガとか言う奴のせいだ!グレイスは俺の物だ! あいつになど渡してたまるか!」


 他人が聞けば可笑しいと思う言葉でも本人はそれが当然だと、間違っていないと思っているのだろう。何がそこまで男に自信をもたらすのか


「彼奴さえ居なくなれば……」


 男の呟きが静かになった部屋に妙に響いた


 そして


『我がその願いを叶えてやろう』


 突然の声


「だ、誰だ!」


 急に聞こえた声に対して誰何の言葉を発して周りをキョロキョロと見回す男


『我を探しているなら無理だぞ。お前には見えん』


 周りを見るのをやめて先程と同じ事を声に聞く


「お前は何者だ。それと願いを叶えるとはどう言う事だ」


『我が名はエルーン。お前の望んでいた通りにクウガというものを消してやろうと言っておるのだ』


「なに!? それは本当かなのか!?」


 何か分からずに声に対して警戒をしていたがつい先程まで望んでいた事が叶うかもしれないと希望が見え、警戒が緩んだ


『ああ、本当だとも。我が其奴を消してやろう。そうすらば、女はお前のものだ』


「おお!」


 男は歓喜に震える


 だが、もしここに第三者がいれば、その男の様子の変化に気付いたことだろう


『だが、お主にはやって貰わなければならんことがある』


「何だ、早く言え!」


『我にその体を貸すのだ』


「分かった!どうすればいい」


『簡単だ。我の問いを承認するだけだ』


「なら早くしろ!」


 目は血走り、口からは汚い唾が飛ぶ。最早男は正気では無かった


『汝、我に体を明け渡すか?』


「ああ、開け渡そう!」


 男がそう答えた刹那、男の狂ったような様子が変化した。血走っていた目が元に戻り、正気に戻ったのだ


「可笑しい、私は何を」


 正気に戻るも、先程までのことを覚えていたのだろう。男が疑問に思っていたのも束の間


 男の周りに黒い煙が現れ、纏わり付き始めた


「な、何だこれは!何が起こっている!」


 男は慌てふためき、煙を払おうと我武者羅に動く。しかし、相手は煙だ。物理的なものでは意味をなさない


 そして、段々と煙が増え、煙に纏わり付かれるどころが増えてくると、手足が動かせ無くなっていく


「誰か!誰かおらんのか!」


 男はその事に恐怖し、喚き散らして助けを呼ぶ


 けれどもその男の叫びは誰にも届かなかったようで、部屋の扉が開く事は無かった


「あ、ああ……」


 男が完璧に煙に飲み込まれた


 その太った体に合わせて丸いシルエットとなっていたのだが、煙が蠢き、そのバランスを変えていく


 そして、先程までとは全く違うすらっとしたシルエットに変わると煙が晴れ、別人のように変わった男の姿が現れた。いや、別人へと変わったのだ


「はははははは」


 歓喜を含んだ笑い声。その笑いには狂気も浮かんでいた


「やはり、馬鹿で強欲な奴はやり易い」


 腕を組み満足そうに頷く男。だが、途端にその満足そうだった表情は憎悪に歪む


「やっと復活したぞ、クウガ~。今度こそお前を、殺してやる」


 男は笑う


 その顔に狂気を貼り付けて


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