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63:本戦 決勝戦

 

 アンタレス先輩を降し決勝へと駒を進めた俺はその翌日、ブロック1とブロック2の決勝戦を観た後に控え室へと向かい呼ばれるのを待っていた


 俺の今の心情を表すとするならば、気持ちが炎のように燃えていると表現するのが適切だろう


 燃えていると言っても、何時もの戦いを前にした気持ちの高ぶりによるものでは無い


 その燃える感情は、怒り


 昨日目にしたあの所業を薪として燃え上がる


 アンタレス先輩との試合を終えた俺は決勝戦の相手になるであろう問題児の戦いぶりを観るために観客席へと移り、その模様を観戦した


 そして、試合が始まってから展開されたのは戦いではなく、イジメ


 俺はその問題児との面識はなく、どのように戦うかなどは知らなかった


 戦ったのはどちらも魔術を使う遠距離型。試合は魔術の打ち合い。だが、それは一方的。問題児は気絶しない、結界に転送されないギリギリで相手を痛めつけた


 その所業から相手に対する敬意も、戦いに対する本気さも、まるで存在してやいなかった


 しかも、それが今までの全ての試合でそうだったと聞いた。一方的に試合を進めていた奴の顔には愉悦の表情が浮かんでいた。それと奢り


 きっと、格上に会ったことが無いのだろう。確かな敗北もしたことなんて無いのだろう。だから弱いものの気持ちも、イジメられる者の気持ちもわからない


 許せない。いや、許さない。俺が本当の戦いを教えてやる。圧倒的な敗北を叩きつけてやる



 ~~~~~~



 会場の熱気が高まっている


 ブロック2の決勝戦が終わり、次はブロック3の決勝戦が始まる


 会場は今、ブロック2の決勝戦が会った時よりもその白熱具合は増しているように思える


 理由は対戦の組み合わせ


 戦うのは学年は違えどこの学園で特別な意味をもつ特待生のSクラスの2人


 1人は今年入った新入生である僕と同じクラスであり、風紀委員でもあるクウガ


 その容姿はとても整っており、男の僕から見ても素直にカッコいいと思ってしまうほど。というかロングの髪が似合う


 そんな容姿のいいクウガだが、その戦闘能力も凄まじい。此処までの試合は圧倒的だった


 一見互角のように見える。だが、見る人にとっとはその見え方が違う。僕から言わして貰えばあれは異常だ。理由は身体強化をクウガが使っていないことにある


 身体強化はその名の通り、身体の各種能力を上げることが出来る。その上がり幅には練度によって個人差あれどその恩恵は確かなものだ。そんな者を使っているのに対してクウガは使っていない。クウガのレベルを知った今だから驚きは比較的に小さいと思う。いや、充分驚愕はしているけれど


 問題は更にある。今回の選抜試合でクウガは怪我を負っていない。あの禿頭の先輩と殴り合った時でさえ怪我には至っていなかった


 周りでどっちが勝つかなどを予想している者たちがいるがクウガが勝つに決まっている。確かに決勝戦の相手となる先輩はそこそこ強い。魔術、いや既に魔法になっているであろう攻撃に無詠唱という武器。そして膨大な魔力量。これだけ聞けば強そうだ


 だけど、クウガはそれが全てできる。しかも相手よりも数段上のレベルでだ。こんなので勝負になるはずがない。近接と遠距離について力説してる奴なんて見当はずれも甚だしい。その点、実況の人は底がしれないと言っていたので見る目はある


 そうやって考え事をしながら待っていると選手が出てくる通路から演出が始まった


 演出と共に出てきたのはクウガ


 だけど、それはこの2ヶ月で知ったクウガとは違った


 何時ものように気高く、気品のある立ち姿。けれども今はそこにもう1つ、怒りだ。その矛先を向けられているわけでもないのにも関わらずこの首筋に走る寒気。遺跡の探検で何らかの危険を察知して僕を助けてくれていた【危険察知】が反応している


 それに、先程まで熱気と観客の喋り声で支配されていたはずの会場が静まり返っている


 そんな中で1人の人物がポツリと言葉を零した


「あー、やっぱむちゃくちゃ怒ってんな」


 こんな会場全体で緊迫したような中で発せられた気の抜けたような、軽薄そうな声


 僕達の中で1番クウガとの付き合いが長いソウマだ


「やっぱりって?」


 クウガのあの怒気に当てられたのだろう何時ものような溌剌さのない声でイヴちゃんが聞く


「クウガが昨日自分の試合が終わって上機嫌でブロック3のもう1つの準決見たろ?あれのせいだよ」


 と実況のひとの機転のおかげで再び騒がしくなった会場の中で答えるソウマ


「え?確かにあの試合とあの先輩は胸糞悪かったけど。でもあの後っていつも通りじゃなかったかしら?」


 とナキアさん


「ああ、お前らじゃまだわかんねぇか。あいつ感情隠すの上手いからな」


 それはこの2ヶ月、風紀委員会の仕事の見回りを一緒に行っていてそれなりに長い時間一緒だったので知っている。クウガの感情は読みにくい。本人が意図してだす感情はとても分かりやすいんだけど隠したものは全然わからない


「昨日の試合はあいつの思いに反しまくってたからな。それで今日こんな感じになってんのよ」


 肩を竦めやれやれと言いながらクウガに視線を向けるソウマ


「クウガは怒らせると恐えから気をつけろよ」


 僕はそれに頷くことしか出来なかった



 ~~~~~~



 これから戦うクソ野郎についてはどうやって格上と言うものを教えてやるかは既に決めた


 舞台にて反対側の通路から現れるクソ野郎を待つ


 準決勝よりも派手な演出と共に通路の向こうから現れた


 その気配から既に驕りを感じられる。そして俺に対しての侮りと嘲り。おそらく俺が平民だからだろう。この先輩が貴族だ平民だと煩い問題児


「決勝戦に相応しい演出と共に次に現れたのはこの人!この国の公爵家にして2-Sクラスであるカリウス フォールツエイン選手だー!」


 会場の多くの者たちからブーイングが。奴の一味と思われる奴らから拍手と声援が。明らかにブーイングの方が多くて嫌でも聞こえるはずだが、本人には聞こえていない模様。都合のいい事しか聞こえないくそったれな耳の持ち主のようだ


 そして、舞台の開始線まで奴が辿り着きボコボコにしてやると思ったら奴は開始線を素通りして俺の前までやって来た


 何だ?と訝しげに見ていると


「貴様が噂の平民か」


 こいつはまだ俺を怒らせたいようだな。無視だ無視


「ここまでは運良く勝ち上がって来れたようだがそれもここまでよ。この貴族である私が平民である貴様を完膚無きまでに叩き潰してくれる」


 なーんか、勘違いしてるな。てか、一応怒気は隠してないんだがそれすらも感じ取れないようなカスか?会場でさえ静まり返ったんだぞ?意外と大物か?


 まあ、いい。だけどあそこまで言われたら言い換えさんとな


 自分の言いたいことを言い終えて満足気に開始線はと向かうクソ野郎に向けて言葉を放つ


「先輩、貴方は勘違いしておられる」


「なに?」


 小馬鹿にしたような俺の声に不愉快そうに片眉を上げながら振り向いた


「貴族や平民なんて生まれにそれ程の意味はないし、この試合で完膚無きまでに叩き潰すのは俺で、潰されるのは貴方だ」


 そう爽やかな笑顔を添えて言ってやれば、貴族の生まれというだけの中身の伴っていないプライドを刺激されたクソ野郎は顔を赤くして怒鳴り返してきた


「ほざくな!愚民が!身の程を知れ!この試合が終わったら奴隷としてこき使ってやる!」


 そう言い残して開始線に行き、こちらを睨みつけてくるクソ野郎


 けれどもそれは不可能だ。何故ならあんたはここでその空っぽのプライドも、驕りも、慢心も、全て俺がへし折ってやるのだから


「準備が出来整ったようですね!それではブロック3の決勝戦……始め!」


「我が手に集いし魔力を糧に」


 開始早々、障壁を張り杖を掲げて詠唱を始めるクソ野郎。そんな柔な障壁では俺に対しては全く意味がない。が今回は全てに上回り叩き潰すと決めている為に剣は使わないのでどうでもいい


 ではどうするか。それは


「我が手に集いし魔力を糧に」


 同じ魔術、魔法で全て迎撃することだ


 詠唱が重なる


「「形を成せ 絶対なる炎 敵を屠る炎の鳥となれ!」」


 詠唱が同時に終わり、魔術が完成する


「「炎鳥!」」


 互いに同じ属性、同じ詠唱、同じ階梯の魔術が激突


 しかし、互いに消滅することはなく、カリウスの炎の鳥のみが四散する


 俺の放った炎鳥がカリウスへと迫るがカリウスにぶつかる一歩手前でクルッと回転し消え去る


 自分の魔術が簡単に消され、危機が迫っていたのが急に消えて意味がわからないと言った顔を俺へと向ける


 今ので分からないとは知能の方も低いようだ


 なので俺は馬鹿にしたような笑みを顔に浮かべ、かかってきなよというジェスチャーを送る


 それを見てようやく馬鹿にされ、おちょくられているのに気づいたようだ


 直ぐにまた杖を構え詠唱を開始する


「大いなる風よ!偉大なる炎よ!」


 今度は混合属性第3階梯魔法か、やはり能力自体はそこそこあるみたいだな


 まあ、それは置いておいて俺も詠唱する


 そしてまたもや同時に完成へと至る


 放たれたのは


「「炎嵐の大蛇」」


 大きな蛇の形を取った炎を纏った強力な風がぶつかり合う


 そして、先程の炎の鳥と同じように俺のが勝ち、奴の目の前で消える


 先程から起こるこの同じ魔術、魔法なのにカリウスの物のみが消えるのは魔力操作の練度によるものだ


「調子に乗るなよ」


 と俯きプルプルしながら言うクズ野郎。それはこちらの台詞なのだがね


 するといかなり顔を上げ両腕を左右に広げた


 その動きに連動して多数の炎の槍が奴の後ろの上空へと姿を現した


 やっぱり無詠唱も使えたか。肩を上下させて息も荒くなりかなり消耗しているみたいだが


「どうだ、平民!貴様にはこんなことは出来まい!私の勝ちだー!」


 高らかにそう宣言し両腕を前に突き出し後ろに出現させた槍を放ってきた


 にしてもたかが、無詠唱で普通の炎の槍を130本顕現させただけであの粋がりよう。滑稽だな


 俺は迫る槍を見据え指を鳴らす


 そうして俺の背後へと現れたのは剣、槍、斧、矢、などの様々な大きさ、種類の武器。その数は向こうに合わせて丁度130本。そしてこれはラーヴァアローのアレンジ版だ


 そんな俺の所業を見て、驚愕に目を見開くクズ野郎を視界に収めながら


 手を顔の横に上げ、射出の合図として振り下ろす


 炎の槍と溶岩の武器がぶつかり合い、炎の槍は消滅し、溶岩の武器が奴の周りに突き立った後に消えた


 危険を感じたのだろう。腰を抜かしてへたりこんでしまっている


 もうお終いにするかな


 俺が更に何かをすると感じ取ったのだろう、慌てて降参しよとして口を動かそうとした。だが、カリウスの口は動かない。声を発せない


 そんなセコイことを許すわけが無いだろう


 こちらを呆然と見つめるカリウスに獰猛な笑みを返してやり、魔法を行使する


 使う属性は火、水、風、土


 互いに反発しあうエネルギーを纏め上げ一振りの剣とする


 構えは大上段。途轍もない魔力に大気が軋み会場が震える


 剣は4色が混じり合い不思議な色合いの光を放っている


 本当はもっと属性を足していけるのだがこれ以上やると観客ごと演習場の一部が吹き飛んでしまうのでやめておく


 流石にこれ程の魔力ともなれば感じ取れる模様。カリウスの表情は崩れ、股間は濡れている


 擬似的な死さえ恐れているようだ


 やはり此奴は許せない


「セラス・スパーダ」


 師匠につけて貰った名と共に振り下ろす


 振り下ろされ、響く轟音


 剣は膨大なエネルギーの奔流を解き放ち、そのエネルギーの奔流はカリウスを飲み込み消し去り、会場の壁に当たる前で消滅させた


 これに懲りたら貴族だ何だと言わないことだ


 会場から浴びせられる大歓声に片手を上げることで答え、その場を後にした



 ~~~~~~



 僕はとんでも無いものを見た


「なに、最後の」


 そう呟くナキアさんと絶句するイヴちゃん


 それに答えたのはこの場で唯一知っているであろうソウマ


「ん?ありゃあ4つ以上の属性を組み合わせて、わざと反発させてとんでも無い威力を得るって奴だよ」


 えーと、凄すぎてよくわからないや


 それに、その前にやったあの様々な武器の形を取った無詠唱で行った魔法もとんでもなかったと思うんだよね~


 というか、もうクウガだからいいやって思えてきたよ


 と考えていたら絶句していたイヴちゃんがものすごい勢いで聞き取れるか聞き取れないかの声でブツブツ言い始めた


「なによ…てん…なかっ…かみ……つき…うちの…ばけも…ばっか」


 よく聞き取れなかったのだがブツブツ言い終わったら後ろにふらっ倒れ込んでしまった


 慌てて受け止めて確かめてみたら気絶してた。なにが気絶するほどショックだったのだろうか


 その横ではありえないでしょって言いながら頭を抱えるナキアさん。だけど直ぐに頭を下げ上げてソウマ君に顔をビタッと寄せて


「ソウマもあれ使えるの!?しかも4つ#以上__・__#ってことはまだ威力上がるってこと!?」


「お、おう」


「私にも教えなさい!」


「え、でもあれかなり難し」


「いいわね!?」


「あ、はい」


 ソウマはナキアさんの剣幕に押し負けた


 このソウマもとんでも無く強いんだよね。これは凄い人と友人になったんだと改めて思ったよ


 

 魔術と魔法にはそれぞれ階梯が存在し、威力、範囲、難度で分けられている


 因みにここに無詠唱での魔術や魔法は含まれない


 魔術 第1階梯~第7階梯


 魔法 第1階梯~第13階梯


 混合魔法 第1階梯~第7階梯


 魔術では混合を使うことができない


 ただし、同時に扱った上で影響を及ぼしあうことは可能


 混合魔法第1階梯は魔法の第3階梯と同等

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