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62:本戦 第3試合

 

 代表決定戦3日目。本日からは準決勝となり、数が減ったことから、第1演習場で2ブロックずつ行われる


 昨日の内に観戦組のフレッド達に聞いたところ、俺以外の1-S ではソウマ、ダリアさん、イヴが参加しているが全員勝ち残っているそう。ソウマとは部屋で話すのだが、ソウマの方では特に楽しめなかった模様。まあ、手加減すんの面倒とか言って終わらせてるからなのだが


 因みに、ダリアさんとは今ではみんな打ち解けて仲良くなっている。切っ掛けは俺が師匠の弟子でソウマが息子と知ったあたり。ダリアさんは師匠に助けられ、その助けて貰った師匠に憧れて修行し力をつけたそう。そんな訳で、そこからダリアさんが相馬に話しかけ、仲良くなり、素っ気ない感じだったのは恥ずかしかったからだと皆んなが知って打ち解けたと言った具合だ。一応言っておくと、ソウマが狙っておりまする


 あと、ナナ先輩などの風紀委員会のメンバーやレイガルド殿下などの生徒会のメンバーも勝ち残っている


 そして、1ヶ月もの間、模擬戦をひたすら繰り返したガルガロッソ先輩も勝ち上がってきている


 ついでに問題児と呼ばれる方々も力はあるので勝ち上がっていらっしゃる。問題児の方々とは少なからず関わってガルガロッソ先輩のように、全員が全員悪い人ではないと分かったのだが、悪い人はとことん悪い。俺と同じブロックに1人勝ち残っているので決勝にきたならばボコボコにする予定である


 現状はそんな感じで、準決勝ともなると登場演出に拘りたいらしく、通路で合図があるまで待機していて欲しいと言われ只今待機中です。会場がここ第1演習場だけになったことと、出場して敗れた選手などが増えて人が途轍もない数となっている


 そうして考え事をしながら待っていると合図が出たので通路を進み観客の前へと出た


 と同時に両脇から魔道具による演出とスポットライトによって照らされる


 会場自体は暗くなっており、舞台と今入場してきた俺を照らす光が光源となっている


「まず現れたのは~、1年生にしてここまで勝ち進んできた、腰にまで届く銀髪を靡かせ、3本の角が特徴のあの人!クウガ選手だー!その強さは未だ底知れず、今回はどんな戦いを見せてくれるのか!」


 そんな実況を聞きながらも舞台上に向けて進む


 実況が言い終わり、俺が舞台に上がって止まると同時に俺の出てきた場所とは反対側の通路から俺が出てきた時と同じ演出がなされ、人が現れる


 身長は俺と同じぐらいだが、俺よりもがっしりとして筋肉が制服を盛り上げている。そして、何よりも目立つのが、その人を照らすスポットライトによって光り輝く禿頭と、そんな禿頭から生える2本のスッとした角。耳は人のものとは若干違い垂れたような感じ。そして、揺れる尻尾


 あの特徴から恐らくだが獣人の牛系統だと思われる。なぜ禿頭なのかは知らない。装備は頑丈そうなブーツとガントレットのみ。ということは近接格闘タイプか


「続いて現れたのは!誰がつけたか、照り玉ビーフンの異名を持つ3年生!禿頭のマッスル牛人!アンタレス選手だー!」


 実況に合わせてポージングを取るアンタレス先輩。なんかかなり酷い言われようだったが本人は気にしていないようなので良いのだろうか。てか、照り玉ビーフンて。確かに照り光る玉ではあるけども


 そんな風に少し呆けていると、先輩が舞台の上に上がり、俺の目の前にて止まる。後方ではまた演出が始まり、ブロック4の選手が登場し、実況が紹介を入れる


 そんな中で目の前にまで先輩が移動してきて


「いい戦いをしようじゃないか!」


 という言葉と共に右手を出されたので


「ええ、心踊る戦いに」


 と返し、握手をする


 握手を終えれば開始線のところまで戻る先輩


 先輩からは戦いに対する情熱と、確かな実力が感じられた。これは俺も拳での勝負にするしか無いな


 そう決めて、早速腰に下げていた4本の剣と胸当てと籠手を収納し、籠手の代わりにガントレットを取り出して装着する


 その様子に一瞬目を見開いた先輩だったがすぐに顔に気色を浮かべる


 そうこうしている内にブロック4の選手も入場し終わったようだ


「それでは!選手が揃いましたので始めたいと思います!」


 会場の熱気が増していく


 それに反して俺の耳には集中によって歓声が遠くなっていく。これから始まる闘争に、拳での殴り合いに、血が湧き、本能が暴れ、魂が震える。目の前の良敵と早く戦いたい


「ブロック3、4の準決勝第1試合……始め!」


 戦いの火蓋が切って落とされた


 猛り狂う内心とは裏腹に戦いのスタートで両者が走り出すことはなかった。まるで予め示し合わせたかのように歩き出した


 ゆつくりと、されど、力強く


 そして、両者の間に広がっていた距離は縮まり、お互いの拳の届く距離にて止まる


 視線が交差し、訪れる一瞬の間


 そんな様子に会場の多くのものが気づき、息を飲む


 お互いが右拳を握り締め、それは同時に放たれた


 放たれた拳は正面からぶつかり合い、途轍もない衝撃波と音を立てた


 殴り合いが始まった


 拳打の応酬。殴り殴られ、肉と肉がぶつかり合う音が響く。拳を受けた顔面、打ち合った拳、腹部へと叩き込んだ感触、両者が真正面から両足を地面につけ、殴り合う


 血が体中を駆け巡り、本気の闘争に気分が高揚し、生物として刻まれた本能が猛る


 顔には笑みが互いに浮かび、殴り合いが加速する


 顔面をぶん殴った。お返しとばかりに顔面を殴り飛ばされる。直ぐに体勢を整え、一瞬のうちに6連続の拳を叩き込む。相手はその連打を耐え、今度はこちらの番だと8連打。ガードはしない。全てを受け、耐える


 互いに笑顔。純粋な力のぶつけ合いに更に気分が上がり、雄叫びが漏れる


「おぉぉぉぉぉらぁ!」


 そんな雄叫びと共に再度顔面への殴打


 そして、向こうからも発せられる楽しいという感情が伝わってくる雄叫び


「おぉぉぉぉぉおぉ!」


 繰り出される反撃の拳。それに耐え、連続で繰り出されようとした左拳の攻撃に対して腕をクロスする様にして迎撃するカウンターを放ち、互いに互いの拳をくらう。カウンターによる影響でよりダメージをくらうも耐えてみせる相手


 殴り合いによって感じる生きているという実感が、戦っているという感覚が、また感情を高揚させる


「「おぉぉぉぉぉぉ!」」


 雄叫びが重なり、殴打が飛び交う


 激しい頭突き、いや角突きで踏ん張った舞台にヒビが入る。一瞬の拮抗の後に軽く弾かれる両者。体勢を戻すのに連動して放たれた拳は始まりのように正面からぶつかり合う


 殴り殴られ、殴り殴られと魔術などがなくてもド派手に見える戦いに観客が湧く、湧く、湧く


 歓声が会場を揺らす


 誰もがその圧倒的な肉弾戦をその目に捉える


 片や制服を盛り上げるほどのムキムキの筋肉を持つ牛人の男


 片や牛人の男程ではないにしろ、しっかりと筋肉のついた肉体を持つ龍人の男


 そんな2人の戦いが会場のボルテージを熱気をテンションを上げていく


 腹、腹、顔、肩、腹、顔へと連打を与え。腹、腹、腹、腹、顔へと連打を受けるも耐える


 そんな風に繰り返される殴り合い。何時迄も続くかに思われた


 しかし、ここにきて牛人の方に変化が現れた


 拳がまともに鳩尾へと入り、空気が吐き出される。その瞬間に俺は舞台を会場を震わせる程の震脚による踏み込みを行いその発生した頸を足から腰、腰から腕、腕から拳へと運ぶ


 腰溜めから捻るように相手へと向かって放たれた拳は相手の腹部へと直撃し、相手は吹き飛ばされ、そのまま会場の壁に衝突し、起き上がることはなかった結界のおかげで怪我は無いものの気絶しているようだ


 俺は拳を頭上へと突き上げ勝利を示す


 観客はそんな俺を目にし、俺とアンタレス先輩へと惜しみない拍手と喝采を贈った


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