35:ラキアとお出掛け
心地の良い風が頬を撫でる。青空が広がり、太陽から陽光が降り注ぎ雲が点在している空をラキアの背に乗って特に目的地もなく進んでいく。
今日の予定は午前中ラキアと空のお散歩をしてお昼を食べるに良い場所を探してそこでお昼を食べてから飛剣の練習に行く。
ラキアの背から眼下を眺める。高度は100m程で地上に見える物がかなり小さく見える。【龍の眼】で問題なく見れるけどね。ラキアの進む速さは魔物でも何でも無い普通の馬が地上を走るのと同じか遅いくらいで進んでいるので景色を楽しめるし風が気持ち良い。
「風が気持ち良いね~」
『そうですね。それに私はマスターといれて楽しいですよ』
ラキアがかなり照れ臭いことを言ってきた。
「ありがとう。俺もラキアといれて楽しい」
そう返して鬣のある首の辺りを撫でてやる。念話で嬉しそうな感情が伝わってくる。ラキアの鬣がふさふさで癒される。もっとラキアと一緒に出掛けるのを増やそうかな
『マスター、綺麗な湖が有りますよ』
「ん?おお~確かに水が透き通ってて凄い綺麗だね」
ラキアが見つけた湖は水が透き通っていて底が見えているほどだ。お昼はあそこで食べよう
「お昼はあそこで食べようか」
『いいですね。今から向かいますか?』
「お昼までは時間あるけど木陰で休憩でもしてようか」
『分かりました』
早速湖に向かった。ラキアの種族はとても珍しいし、その見た目や空を走ることから目立つので光魔法のステルスで見えなくして向かった。騒動になっら面倒だからね。ま、湖には人が居なかったので要らぬ心配だったんだけど。
湖は上から見た通り水は透き通っており、上から見ただけでは分からなかったが、結構な大きさだった。しかも湖には魔力が溢れていた。
魔力が溢れているという事は他の場所よりも精霊が多く集まっているか、力のある精霊がいるかのどっちかだ。【魔力感知】と【龍の眼】で確認したら前者だった。精霊は体が魔力そのもので構成されており、精霊を見る事が出来る眼がなくとも【魔力感知】で感じ取れる。似た様な理由で【龍の眼】なら見る事ができる。
精霊のことは置いておいて、【魔力感知】を使って気づいたのだが湖のすぐ近くにある此処からでは見えない茂みの所に何かがいる事がわかった。数は2で片方は魔力を抑えている様だがもう片方はだだ漏れだ。魔力は【魔力感知】で感知されたりしないようにする事が出来る。これにはそれなりに技術と練度が必要だ。今までいる事に気付かなかったのは、そいつらが気配を殺していたからではなく認識阻害のような物が張られていたからのようだ。魔力は湖の魔力で分かりづらかったからだと思う。
【魔力感知】から【気配察知】に切り替えると魔力を抑えてた方はどうやら凄い消耗しているのが気配から分かった。直ぐにでも死んでしまいそうなぐらいだった。もう一方はそいつと比べると小さい。子供か?
人の姿になって俺と同じ場所に視線を向けていたラキアに声をかける
「ラキア、あそこ気づいてる?」
「はい、何かいますね」
「ちょっと見に行こう。おそらく動物か何かなんだけど片方が死にそうだ」
「わかりました」
ラキアを伴い茂みへ向かう。認識阻害の物は障壁やらは無かったので特に苦労せず茂みを抜けた。
そこにいたのは体長3mほどの黒い体毛を持つ猫のような、だけど体毛は猫より長くモフモフしており、尻尾は狐のようなものが3本生えている。そいつが目を伏せ、荒い呼吸で横たわっていた。
そいつの状態は正に瀕死だった。肺があるであろうあたりに穴が開き、後ろ足が片方無かった。足の切り口が刃物の物だったので恐らくやったのは人型でそいつから逃れて此処に隠れていたという感じだろうか。そうやって観察、推測をしているとそいつの影から小さい影が俺の前に出てきた。
『お母さんに近寄るな!』
なんと念話を使ってきた。ちっこい影は大きいやつの子供だろう黒い体毛が同じだ。しかし、違う点が幾つかあった。耳の横、足首、尻尾の先端に炎が纏わり付いているのだ。
そこで俺はこいつらの種類に心当たりがあった。
まあ、それを考えるのは後にして治療を先にしよう。
それにしても目の前で頑張って威嚇する子供は正直に言うと全く怖く無い。何なら可愛い。そんな奴に俺は話しかける
「落ち着け。俺ならお前の親を治してやれる」
『本当!?』
俺がそう言うと直ぐに炎を消して
『お願い!お母さんを助けて!』
と懇願してきた。
任せろと頭を撫でながら言ってやり、母の横に座り手を置き光魔法のハイヒールと【再生lv6】を使う。
何故此処で【再生lv6】を使うのかと言うとハイヒールでは傷を治すことは出来ても穴を塞いだり足を新しく生やすということは出来ないのだ。聞くところによれば、光魔法の上位属性である聖光魔法で使えるようになる魔法なら可能らしい。
しかし、今の俺の光魔法では出来ないが俺の持つスキルである【再生lv6】ならそれが可能なのだ。スキルレベルが上がったことによってスキルの説明が
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【再生lv1】魔力を使って傷を治す
↓
【再生lv6】魔力を使って再生する
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という感じで変わっていたのだ。
さらにこの【再生】というスキルは他人にも使えるのだ。その事に気づいたのはラキアのスキルを色々と試していた時だった。ラキアのは【自己再生】という風に自己という文字が付いている。最初は種族的な違いなのかと思ったが竜人や龍人のもつスキルという感じで師匠に聞いたのだがそちらも自己という文字は付いているものらしいと分かったので検証してみた。
ソウマの頬をぶん殴ってヒールとかと同じように離れて使ってみたが効果がなく。ソウマがすかさず自分で治してしまったのでもう1回殴って、今度は手を当てて使ってみたら出来てしまった。つまり、魔法系と違って触れていなければ治せないがとても強力な物だと分かった。
つまり何が言いたいかと言うとこの子供のお母さんは助けられるということだ。
ハイヒールの青緑色の光と【再生lv6】の銀色の光がお母さんを包む。
数秒が経過し光が無くなるとお母さんに開いていた穴は塞がりなくなったはずの足も生え、五体満足になった。
「ミ~!」
子供が治ったお母さんに突っ込んだ。お母さんの方は苦しかったのが無くなったのに気付き閉じていた子供と同じ赤色の眼を開け、俺を見つけ、姿勢を正した。
『貴方が助けてくださったのですか?』
「ああ、そうだ。完璧に治せたと思うが違和感は無いか?」
『いいえ、しっかりと治っております。改めて命を救っていただけたこと、感謝致します』
凄い丁寧な感じだ
「気にしなくていい。俺が助けたいと思ったから助けたんだ」
『いえ、そんな訳にはいきません。貴方が治して下さらなければ私は死んでいましたし、この子もどうなっていたか分かりません』
まあ、それは間違ってはいないんだけどな。俺は失うことの辛さを知っているし、何よりも母親だという事が俺と同じのように思えたのだ。だから助けた
『助けて頂いたのに無礼とは思いますが、お願いを聞いてくださいませんか?』
「内容によるな」
『お願いは2つ御座います。1つは私どもと召喚獣の契約を結んで欲しいのです。このまま何も恩を返せないのでは歯痒いのです。きっとお役に立ってみせます』
「1つ確認したいんだけどさ、お前らの種族は幻獣種のケルムだよな?」
『はい、私達の種族はケルム。幻獣に分類されています』
「わかった。もう1つのお願いは?」
『夫を助けて欲しいのです』
「夫はまだ生きているのか?」
『恐らくですが。私達を襲ってきたのは魔王軍と名乗る者どもでした。目的が私達の捕獲だったようなのです。私は夫が囮になってくれたことで息子と共に逃げて、奇襲で足をやられていまっていたので此処で隠れていたのです』
「そうなると直ぐに行かないとな」
『助けてくださるのですか!?』
「俺の力になってくれるのだろう?俺は目標がある。成したい事がある。その為には多くの力が必要だ。俺の力となってくれるなら喜んで受けいれるし、そうなったらもう仲間だ。ならその仲間の大事な者を助けるのは当然だろ?」
『ありがとうございます』
母ケルムが頭を垂れる。
「もう動けるな?案内を頼む」
『はい!』
子ケルムは母ケルムの頭の上に乗り走り出す、俺とラキアはそれについて行く。魔王軍は色々と癪にさわることをやってくれる。徹底的に叩き潰す。




