第1話 スパイ
サイレンが鳴り響く。
ドタドタと足音が下で聞こえる。
さすがは暴力団、やることがハンパではない。
-------誘拐・窃盗・麻薬---------
「バカだな」
オレは換気口から青空の輝く外へでた。任務は果たした。
オレはスカイ・ドレット15歳。
背は149cmと小柄だが、IQはなんと212。
「スカイ。シャドゥに行かなくていいのか」
「うん。もうちょっとしてから行く」
さっきのは父さん。ウィン・ドレット。父さんのIQは254。オレなんか比べものにならない。背もオレなんかよりずっとでかい。
あ、シャドゥてのは秘密組織。
なんの組織か?
スパイだよ。
オレもその一員。さっきは暴力団のアジトに潜入操作。
操作内容は『暴力団員たちが犯した罪を探れ』というものだった。
--------昨日 午後9時32分 暴力団アジト
「ひゃっひゃっひゃっ。サツがオレらのボスを怖がってここに来れないんだと。笑わせるよ
な」
「くだらない」
オレは暴力団員の言葉にボソッとつぶやいた。
ここは換気口の中。ところどころサビついている。タバコの臭いもすごくする。咳き込んだらおしまいだ。プロなら大丈夫だろうが、オレは一ヶ月目。油断できない。
「この前の、児童誘拐事件。あれが暴力団員達がやったと言われているんだ。余罪もあるかも しれない。調べてきてくれないか」
ボスからの指令を頭の中で繰り返した。
オレはここに潜り込んでから、一番バカでペラペラ何でも話しそうなやつ、つまり今高笑いしてるやつをびっちり見張っている。しかしなかなかコレっていう証拠を言わない。
「それでよ。-----」
ピクッ、オレはまた話始めたやつらの話を息を殺して聞く。
「この前のあの事件。ほら!児童誘拐のやつだよ」
「あれがどうしたってんだよ」
「ああ。それがな、もうサツがオレらがやってんじゃねぇーかって、かぎ回ってんだよ」
「心配ねぇよ。オレらがやったていう証拠はねぇはずだ。証拠はカンペキに消してきたから
よ」
「そーだよなぁ。ひゃっひゃっひゃっひゃっ」
オレは換気口の中にいて汚れている顔に満面の笑みを浮かべた。
「まぁ、オレらがやったんだけどな」
もういいかな。
あらかじめ用意しておいたスイッチを押した。
ウイィイィィィン
サイレンが鳴り始めた。もちろんわざとだ。
「何だ!?」
「おい。行くぞ」
二人は何処かへ行ってしまった。もちろん、さっきの話は録音済みだ。
オレは外へ出た。外はもう明るくなっていた。
そしてその結果をボスに報告しに行くのだ。
途中店のガラスにうつった自分を見てみるとひどい有様だった。もともと短くボサボサの髪が、さらにボッサボサになって、鳥の巣みたいだ。顔だって洗ってないから汚い。
「帰ったら風呂はいろう」
しばらく行くと、コツ・・・コツ・・・と、人の足音が聞こえた。オレが止まるとそいつも止まる。たぶん、さっきの所の見張りか追跡のやつだろう。こういう時は、アジト、つまり
シャドゥにもどるとバレるから公園やその辺でブラブラ時間をつぶしつつ、トランシーバーでボスに報告するのだ。
オレは公園のベンチに足を組んで座った。
ジ・・・ジジ・・・
(?)
トランシーバーがつながらない。
ジジ・・・ジ・・・ジ・・・ビビーーーッ
おかしい。来る前は大丈夫だったのに。
妨害?!
辺りを見回すあくまでさりげなく・・・・。バレないように・・・。
人は一人。大柄だけどやさしそうな人。
(あいつか)
バレない様に録音したデータを内ポケットに入れる。
(これで大丈夫かな・・・。)
こんな事は初めてだから緊張する。オレは歩き出した。きっとあいつとついてくるだろう。
(?)
足音がしない。・・・いや遠くからついてきている。でも、さっきとはちがう音だ。別のやつだったか・・・。
ジジ・・・ジ・・・ブツッ
「ボス追跡されてます。指示を」
「そのままもどってこい。だが、追跡は振り切れ」
よっかたつながった。
「ラジャ」
さて問題です。追手を振り切るにはどうすればよいでしょう。
1ひたすら逃げる
2物陰に隠れてやりすごす
3戦う
でもオレはこの中にはない、とんでもない方法をとった。ヒントをあげよう。オレはこの町にある空き家は全て知り尽くしている。
----------------------30分後
オレは無事にシャドゥに帰った。
どうやって帰ったか?
おれだってスパイ。IQ212。
パッと思いついたのさ。
まずオレは近くの空き家に入った。追手は外にいる。2分程いてから他の空き家に。そしてまた次、また次と空き家をめぐる。そして路地裏の空き家の秘密の階段。
床を開けると出てくる階段からシャドゥへ行った。
これが『まどわし作戦!!』
この空き家以外にも秘密の入り口はあるが、一番わかりづらい所にあるここにした。ここはボロボロでほこりだらけの汚い小屋。しかも暗い。だからわかりづらいのだ。最高の作戦!!
さぁボスへ報告だ。