双子の兄妹
初めて投稿している作品です。
完結するまで時間がかかると思いますが、それでもいいよと思って下さると嬉しいです。
私の中でずっと考えていた創命術師の物語。拙い文章ではありますが少しでも楽しんでもらえますように。
〜プロローグ〜
遠い昔。まだ世界中に魔法の光が満ち溢れていた頃。世界は5つの種族によって治められ、その均衡を保っていました。
強い力と逞しい翼で大地を守りし竜族。
圧倒的な知恵で天空を守りし神族。
汚れなき清き心で自然を守りし妖精族。
高度な魔法で魔界を守りし魔族。
ーーーそして人間族。
しかし、時が経つにつれて5つの種族うち人間族だけが少しずつ少しずつ変わってゆきました。
火を熾し、獣を狩り、村を作り‥‥‥。稲作を始め、家を建てました。国ができ、王が存在するようになります。そうして、最も弱く小さき存在だったはずの人間族はいつしか世界のあらゆる所に住み着いたのです。
そんな人間族に住処を奪われた他の種族は人間族の繁栄に反比例するようにその数の減らしてゆきました。
そして人間族に見つからないように息を潜めて隠れ住むようになりました。これこそが現在の世界に竜族や妖精族、魔族が存在しないとされる所以なのでしょうか。
〜第1章〜
アールシュ大陸の遥か西に位置するルディシア国の城下町、その一角では今日も今日とて複数の少年達が1人の少女を取り囲んでいた。
「ちょっと‼︎イキナリなにするのよ‼︎離して‼︎」
フードを目深に被った少女が抵抗する。その手は少年のうちの1人に囚われていて言う事を聞かなかったからその分かなり大声で叫んだ。
「うるせぇ‼︎今日こそお前の正体暴いてやるぞ‼︎」
「いっつもフードかぶってて怪しいもんなお前‼︎」
「そんなんだから魔族とか言われんだよ‼︎」
少年らも負けじと喚き返したが、1人の少女を3人かがりで追い詰めるというかなり情けない構図である事に変わりはない。更に己の被るフードに手を伸ばされると少女は反射的に瞳をギュッと閉じて叫んだ。
「やめてっ‥‥‥‼︎」
しかし、そんな少女の願いもむなしく次の瞬間、バサッと音を立てて少女のフードが取り払われた。
「‥‥‥っ‼︎」
3人の少年は思わず息を呑んだ。それもその筈。フードが取り払われた少女の髪は輝く白銀でその双眸は穢れなき海のような水色。普通の人間にはあり得ない筈の色彩だった。
「‥‥‥そらみろっ‼︎やっぱりお前人間じゃねーだろ‼︎」
「って事はやっぱり魔族か?」
ニンマリ笑う少年の頭の中では今、己の事を魔族を見つけて追い詰めた正義のヒーロー状態なんだろうなぁと少女は何処か他人事のように思う。
(さて、どうしたものか。今日はどうやって逃げるかな)
これまた他人事のように思考を巡らせる。
と、その時。少年達の頭上から怒りに満ちた声が降り注いだ。
「おい。それ俺の妹なんだけど、あんたら何してんの?」
少女が顔を上げるとそこには見慣れた兄の姿があった。その姿に安堵した少女に対し少年達は震え上がり脱兎の如く逃げ出した。
「覚えてろー‼︎」とありきたり過ぎる捨て台詞を言いながら。
そんな少年らを尻目に兄が尻目にに向き直る。
「こんな所に居たんだな。怪我はない?ルナ」
先程までの恐ろしいオーラは何処へやらいつも通りの穏やかな声音で少女ーーールナに話しかけた。
「ありがと兄様。それと、ごめんなさい。さっきの人達に髪と目‥‥‥見られちゃった。」
ルナは項垂れながら口を開く。
「大丈夫だよ、ルナ。髪や瞳を見られてしまったならまた新しい町に移れば良いだけなんだから。ルナに怪我が無かったならそれが1番だからね」
微笑を浮かべながらルナの兄ーーーリュウは優しく頭をポンポンする。
「さて、と。そんな訳で新しい町を探すんだけど、何か希望はあるかい?ルナ」
「そうだなぁ‥‥‥。」
そんな問いにルナは手を顎に当てながら唸った。
「‥‥‥当分都会は嫌。あんな輩もいるし。あとはねぇ‥‥。」
たっぷり間を取るとルナはイキナリ両手をパチンと合わせたる。
「そうだ‼︎海‼︎兄様、次は海の見える町がいい‼︎」
先程までの様子とはうって変わって碧い瞳をキラキラと輝かせる妹にリュウは穏やかな笑みを浮かべて見つめた。
「海か。いいかもしれないね。ここからだと東の森を抜けた先にある町、ナーダが近いかな」
「次の町はナーダに決まりね‼︎そうと決まれば早く行こうよ兄様‼︎」
すっかり元気を取り戻したルナは満面の笑みでそう言った。
こうして2人は東の森へと向かうのだった。ーーーーーー運命の邂逅まであと少し。