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  作者: 箕雨シキ
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- 決意 -

 林檎が笑い風が鳴く 無言の空を見上げて

 神様が笑い土が泣く 部屋の中

 幾年幾月経とうとも、窓の外の世界は変わらない


 かごに閉じ込められた鳥は 可愛い声でなく

 鎖は硬く 堅牢で


 私はもっと、羽ばたきたい

 私はもっと、走りたい


 朧月の下 私はまだ待っている

 その為だったらいくらでも

 この世界を繰り返してみせる



- 口癖 01 -

 「僕の前で 泣かないで」

 そう言って キエル君と――――


 君はあの時泣きながら、言いましたね。

 「僕の前では、笑って?」

 それは君の最期の願いですね。

 でも私は、まだ悩んでいるのです。


 どうか、許してくださいね。


- 02 -

「僕の前で、泣かないで」

 僕は笑いながら、そう言ったけれど。

 「僕の前では、笑って?」

 そんな心はズタズタに泣いてたんだよ。


 僕はもう進めないのに。

 僕は立ち止まったまま、なのに。


 自分で言ったそんな言葉 君に届いたのに。

 自分で言ったそんな言葉 苦しいんだよ。

 許して、くれ。


- 03 -

 紡がれる 呪いの詞

 魔法のように 心の底へと染み込んでいく


 「僕の前で、泣かないで」

 君がそう望むのならば。

 「最期の願い、届けるよ?」

 私は静かに笑います。


 「僕はもう、泣かないよ」

 

 そう言って、君が笑うその時まで。



- heart -

 始まった空虚 哀愁漂わせ

 終わらない血を大地に刻むんだ


 匿った廃墟 暗転匂わせ

 止まらない君への憎しみ抱いて


 こんなに辛いのは どうして



 僕らはもう 逢えないんだ

 そんな顔をしないでおくれ お願い

 悪いのは僕 もう笑わないで

 綺麗な笑みに どうして君は優しい?


 伝えたい事は もうないよ

 いつまでも離さないその手を振り切って

 見えない君感じながら 終わりを告げる

 心地いい雪の音は ふわりと舞って


 白い色 君の響きは突き刺さる


 優しい痛みに 雨踊る空に

 僕はまだ泣けない



- 初恋、雨乞い -

 苦しくって悔しくって哀しくって だからって

 私を縛る術にはならないわ

 認めてくれない、コノ気持ち

 貴方だけよ、私を裏切ったの


 もう少し、あと少しだけ、貴方が優しかったら

 私は、もっと、ずっと、尽くしたのに


 傷つくのは貴方じゃない

 それは、私なの


 雨に濡れる顔が冷たくって だからって

 この涙が流れるわけじゃない

 止まらない、悲しみと憎しみと愛情の泪

 貴方だけに見せてあげる


 はずだったのに



 傷つくのは貴方じゃない

 当たり前でしょ

 それは、私なの



- 雪のように -

 今年初めての雪の音がする

 年をまたいですぐの今日に降る雪

 寂しい色が見えるのはどうしてかな


 「冬の季節は嫌いだな」

 あの日肩を並べて歩いた時の君の言葉

 あの時も雪が、降っていたね


 一歩進むたびに後ろに続く足跡に

 「まるで僕らの軌跡みたいだ」

 そう笑った君の笑顔は

 まだ私の脳裏に焼きついているんだ

 


 今年初めての雪の寒さに

 「私は冬の季節が好き」


 こっそり空を見上げて

 つぶやいてみた



- 花 -

 消えてなくなって

 そして忘れられていく花

 儚く舞う雪のようで

 とても 冷たい


 うたを うたうように

 おだやかに ねむるように

 窓が白く 化粧をした頃

 忘れられていった花


 シャボン玉に乗せた願いは

 空に届く前に消えていく

 冷たい 雪のように

 忘れられた花



- 忘れもの -

 権利と象徴の狭間に残された

 私たちの忘れものは

 いつのまにか 知らぬまに

 拾い上げられ 捨てられていったのか


 回れ、踊れと あくせく動く

 僕らは今も 忘れていない

 君達があの日あの場所を笑ったとき

 反対側の地上には

 産み落とされた命を知る



- ただそれだけの -

 昔に吐き出した言葉があるんだ


 思い返しても 感情なんてみいだせない

 そんなつまらない

 ただ吐き出しただけの言葉があるんだ


 ふとした時に頭を過ぎる事実

 押し潰される前にロボットはうたう


 昔に吐き出した言葉を

 なぞるように なでるように


 風化していく記憶にさえ褪せない


 昔に吐き出した言葉は重く 深く

 思い出すよりも先に 浮かび上がってくる


 そんなつまらない

 ただ吐き出しただけの言葉があるんだ。



- 世界 -

 心はずむ声 越えない心

 空は次第に見えなくなって

 音はだんだん遠くなる

 春の香りが 待ち遠しい


 暗い夜にさみしく歌う

 届かない声 遠い空

 私はいつの間に

 こんな所に着いたのだろう


 すきま風の寒さに気づかされる

 見えない空は それでも澄んでいて


 美しい世界

 終わりのない 世界



- その胸に秘めた想い -

 君の存在は邪魔だよ。

 僕にとって 障害物でしかない

 君の姿はいらない

 僕にとって 害悪でしかないんだ


 甘い愛をささやく口も

 僕を抱き寄せるその腕も

 構ってとつきまとう

 その姿 形 なにもかも

 君は僕には 必要ない


 もう骨になった君には どうしたって

 届かない言葉 だけどね。


 目の前の冷たい石

 心をうがった穴は埋まらない

 僕はどうやら

 君を許せそうにないよ。


 (縛るだけ縛っていなくなるなんて)

 (僕の気持ちを考えてくれたっていいじゃないか。)



- あめおと -

 ときめく心よりも残存するおと

 自分の心の形容が面倒くさいなあ

 雨の香り 変わらない空


 はやくはやく

 雨粒が地面に落ちるよりもはやく

 なにもかもを投げ捨てる


 忘れ去られたおと

 心の先で 奥で 裾で

 うずくまる男の子の声を聴く


 雨の香り 変わらない空

 自分の心がよくわからないなあ


 雨のおと 変わらない空

 雨だけが 変わらないのですか



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