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ある夏合宿の顛末 3

《注意》

・下ネタ、汚い表現があります。苦手な方はご注意ください。

・この物語はフィクションです。実在の人物、団体名、大学生の行動とは一切関係がありません。

そうして、嫌な予感の通り戦いの火蓋が切って落とされた。


「ねえ寺田さん、前から言おうと思ってたんだけど圭介の周りをうろちょろするのやめてくれない?」

「はあ?」


見かけによらず好戦的な言葉を不意打ちであいらちゃんにぶつける林さん。

ああ、あいらちゃんの可愛らしいお顔がまたも般若の形相に!


「うろちょろってなんですかあ?あいら意味分かんないんですけど」

「それと大学生にもなって自分のこと名前呼びって恥ずかしくないの?」


おおっと、少なくとも女子は皆内心で思っていたことをこうも軽々と!凄いぞ林さん!

だがしかし、やられたままでは終わらせないのが我がサークル一のタフネス・あいらちゃんだ。


「そんなのあいらの勝手じゃないですか!何ですかさっきから。あいら、林さんに何かしましたっけ?」


そこまで言って、あ、とあいらちゃんはわざとらしく口元に手をやって怯えたような顔をした。


「もしかして飯田さんにフラれたからって、あいらに八つ当たりですかあ?ヤダこわ〜い!」

「フラれてないわよ!」

「でもお、飯田さんはもう林さんのことどうとも思ってないですよお?」

「はあ!?何の証拠があってそんなこと…」

「証拠ならありますよ?」

「え?」

「何ですって!?」


隣で二人のやり取りを顔をしかめながら聞いていたりょこちゃんも驚いた顔を見せる。

虚を突かれた様子の先輩二名に、あいらちゃんはニヤリと笑ってポケットから何かを取り出し印籠のように突きつけた!


「これですっ!」

「…!それは!」

「もしかして…、飯田さんの指輪?」


見覚えのある代物にりょこちゃんがボソリと呟くと、あいらちゃんはしたり顔で頷いた。


「その通りです。あいらが格好いいリングですね〜、ネックレスに通しても良さそうですね、って言ったらいらないからあげる、って超気軽にくれちゃいました〜!これ、林さんがプレゼントした奴ですよね?」

「嘘よ…」


掲げられた指輪を凝視しながら、林さんは信じられないものを見たかのような顔で声を絞り出した。


「圭介がそんなことするわけ…」

「だから本当ですってば」

「…あんた、あんたが!圭介から盗んだんでしょ!?返してよ圭介の指輪っ!」


茫然自失、といった表情をしていた林さんは、今度は鬼のような形相であいらちゃんに掴みかかった。

「何するんですか!」と指輪をギュッと手の中に閉じ込めるあいらちゃんにそれを無理矢理こじ開けようとする林さん。

これはいけない!口論だけじゃ済まなくなりそうだ!!


「3人とも!どうしたの!?ケンカはダメだよ!!」

「杏花…!」


突然始まった掴み合いに戸惑っていたりょこちゃんが、わたしの姿を認めてホッとした顔をした。

いやいやホッとするのはまだ早いよ!


「林さん!あいらちゃん!まずは落ち着いて話し合おう?ねっ」

「この…、この…、泥棒猫…!」


なかなか指輪を離そうとしないあいらちゃんに林さんの中で何かが切れたのか、とうとうあいらちゃんの左頬に今時珍しい罵倒を浴びせながらビンタをぶちかました!ひー!やめて!

やられたあいらちゃんは頬を抑えてキッ、と林さんを睨みつける。


「ぶちましたね!?ママにもぶたれたことないのにっ!」


ガンダムー!?

唖然とするわたしとりょこちゃんを置いて、あいらちゃんは海へ向かって走り出した。


「あ、あいらちゃん!?」

「こんなものー!!」


とりゃああああ!!と言いながらけっこう美しいフォームで手の中に握り込んでいた指輪を海に向かって投げた!落ちた!どこかに!

もうとっくに日は沈んだので辺りは真っ暗。探すのは絶望的に難しそうだ。

後を追っていた林さんは、瞬時に青い顔をして「やめてええええ」と叫びながら躊躇うことなく海へ突入した。

は、林さん!危ないですって!


「往生際が悪いですよお、林先輩」

「なんで…、なんでよお…、圭介…!!」


バシャバシャと飛沫をあげながら手当たり次第に海の中を探る林さんに、あいらちゃんは見下すような目で追い打ちをかけた。

あんた鬼や…。鬼の子や…!


「林さん!危ないですよ!探すのは明日にしましょう?」

「そうですよ林さん!とりあえず上がってきてください!」


声をかけると、必死に下を探っていた林さんはピタリと動きを止めた。


「あんた達のせいよ…」

「え?」

「あんた達のせいでっ!!」


異様に目をギラつかせて、あいらちゃんとりょこちゃんを睨み、そして。


「きゃ!?」

「え!?」


二人を海に引き摺り込んだ!

勢い余って海水の中に倒れこんだ二人は咳き込みながらフラフラ立ち上がり、「何すんのよ!!」「信じらんない!!」と髪を引っ張ったり胸ぐらを掴んだりの三つ巴の大喧嘩が始まってしまった!

どどどどうしよう!?どうしてこうなった!?とりあえずわたしだけじゃ手に負えない!誰か呼んでこないと!

携帯にかけても皆花火に夢中で出る可能性は低いだろう。とにかく電話をかけながら戻って応援を要請しなきゃ!

しかし少しも走らないうちに救世主がバケツを手にこっちに向かってくるではないか!

佐藤くんでかした!!


「佐藤くん!!」

「あれ、榎本さん。戻ってこないなあって思ってたけどどうしたの?」


呑気そうな佐藤くんには申し訳ないけどごめん巻き込ませて!!

わたしは救世主の空いている方の手をギュ、と逃がさないように握りしめて叫んだ。


「佐藤くん、付き合って!!」

「えっ」


目を丸くする佐藤くんに頭を下げる暇もなく、わたしは掴んだ手をそのまま引いて元来た道をひた走った。

その途中、なんと飯田さんが旅館の方から歩いてくるではないか!!


「飯田さんっ」

「榎本さん?どうしたのそんなに走って」

「大変なんです!とにかく来てください!!」


三人で駆けつけると、三つ巴の戦いはまだ続いていた。


「なによっ!全部あんた達が悪いんだから!その顔で!その体で!圭介を誘惑したんでしょ!?」

「林さんそれは誤解…っ!」

「どうせわたしの顔は中の上よ!悪かったわね!!」

「おっぱいもないですしね!」

「黙れぶりっ子女ああああ!!!!」

「あいらちゃん火に油を注ぐのはやめて!」


ホントにね!

未だ乱心中の林さんの勢いに疲れたのか、りょこちゃんは何とか落ち着かせようとしているけどあいらちゃんが戦闘態勢を崩さないので無駄に終わっているようだ。

無理矢理わたしに連れて来られた佐藤くんが本気でビビっている。


「榎本さんナニ、これ!?何のギャルゲ!?」


残念ながらリアルです。

そしてリアルの主人公であるところの飯田さんは、この争いに一瞬息を呑み、果敢に一人戦場へ向かっていった。


「やめろ!加奈子!!」

「放してえ、放してよお!!」


後ろから羽交い締めにするも、なお暴れ続ける林さん。飯田さんは押さえつけた彼女の両腕に込める力を加え、耳元で囁いた。


「やめてくれ…。頼む、加奈子」


その切なそうな声音に、林さんはピクリと体を震わせ、もがくのをやめた。


「…ウソよね、圭介。わたし達別れるって…。冗談だったんでしょ?」

「冗談じゃない。本気だよ」

「…っ、あの子に、あの子にわたしがプレゼントした指輪あげちゃったのもウソよね?」

「…ごめん、それもウソじゃない」

「あの子が好きなの!?」

「違う」

「じゃあ涼子ちゃん!?」

「違うんだ」

「だったらどうして…!!」


林さんは涙を目から溢れさせ、崩れるように膝をついた。

嗚咽と、ザアン、ザアン、という波の音だけがしばらく辺りに響き、飯田さんはグ、と迷いを断ち切るかのように一度目を閉じて口を開いた。


「加奈子にはずっと、俺が優柔不断なせいで悩ませてきたと思う。本当にごめん。謝っても足りない位だと思うけど…、でも、どうしてももう、目をそらせなくなったんだ。俺、実は…」


実は…、と躊躇う様子でまた口を閉ざす副代表。

ゴクリと固唾を飲んでその次の言葉を待つわたし達。

なんだ…、何が飛び出してくるんだ副代表…!





「俺、ゲイなんだ」





へー!ゲイ!そっかゲイだったんだなんだそっかー!

ってマジっすか!!


「「ええええええ!?」」


飯田さんのまさかのカミングアウトに反応できたのは当事者ではないわたしと佐藤くんだけで、他の3人は面白いほどソックリな表情でポカンと口を開けている。

おそらく3人の脳内では、ゲイなんだ…、ゲイなんだ…、ゲイなんだ…、とさっきの一言がリフレインしているのだろう。理解するまでにはかなり時間がかかりそうだ。


「そうかもしれない、ってずっと思ってたんだけど認めたくなくて…。でも最近、本当に好きな人ができて分かったんだ。ああ、俺はゲイだったんだなって」

「好きな人って…、男の?」

「そう、男の」

「男って…、まさか…!」

「あたしじゃないわよ言っとくけど」


まさにその人の名前を叫ぼうとした時、後ろから呆れたような声が割って入った。

オカン!!

振り返ると、オカンが数枚のバスタオルを手に持って立っていた。

違うよオカン!わたしは代表の名前を叫ぼうとしてたんだよ!!


「もう、ケイちゃんったらできるだけ秘密にしておくって言ってたじゃない」

「龍太郎さん…。でもこのままじゃあまりにも不誠実だから」

「悪い男のままでいるのも一種の優しさよ。あと龍太郎さんはやめて」


ともかく話は後、あなた達ずぶ濡れじゃない何やってるのよまったく、と言いながら依然として魂が抜けたような様子の3人をバスタオルで包んで風邪引いちゃうからお風呂入んなさい、と旅館に追い立てた。

どうやらここの状況を見かけた誰かがオカンに知らせに行ったらしい。こういう修羅場にはオカンが一番の適任なのだ。





嵐が去った。


濡れ鼠と化した3人がお風呂に入っている間、オカンが少し事情を話してくれた。

どうやら少し前から飯田さんにその手のことで相談されていたらしい。

女の子に興味が持てないこと、男に対する自分の目が同性とどうやら違うこと。そんな飯田さんの悩みを共感しながら親身に聞いていたオカンは、それは変なことじゃない、あたしだってそうだし世の中にはそっちの人が沢山いるんだということを伝えたくて、ゲイバーに連れて行ったんだそうだ。

そうして飯田さんは出会ってしまった。運命の人に。

ちぇ、代表じゃないのかあ、というのは置いといて、そのせいで飯田さんは林さんを裏切っている罪悪感が強くなって別れを切り出したらしい。

うーん世の中の良い男は彼女持ちかゲイっていうのはあながち間違いではないのかも…。




そして宴会その2が始まった。

二日目の飲みは昨日に比べると若干静かだ。若干だけどね。

お風呂から上がってきた3人は隅に寄り、仲良くヤケ酒を繰り広げている。(あいらちゃんは1浪なので飲酒OKだ。)どうやらお風呂で飯田さんにフラれた同士、意気投合したらしい。


「前から怪しいと思ってたのよね!付き合ってかなり経つのに指一本触れてこないんだから!」

「そうだったんですか!?」

「そーよ!そのせいでわたしがどんだけ悩んだと思う!?女としての魅力があ、ぜーんぜんないんだって!」

「信じられなあい!あいらが男だったら絶対ほっときませんっ!」

「あいらちゃん…!ありがとう!良い子だねーっ」


ギューっとしてよしよししている。

さっきの鬼気迫るバトルはもしかして夢だったのか!?

3人の雰囲気の変わりように思わず目をゴシゴシしてしまう。夢(悪夢)だけど、夢じゃなかった!残念ながら!


「あいら、林さんに謝らなきゃならないことがあるんです…」

「ええ、なーに?」


されるがままに林さんに頭を預けていたあいらちゃんが、上目遣いで林さんを見上げて言った。


「さっき指輪のこと、超気軽にくれたって言っちゃいましたけど、あれウソなんです。あいらが褒めたら、飯田さん、ジッと指輪を見つめて…。悲しそうな顔でゆっくり外して捨てようとしたんです。俺が持ってる資格はないから、って」

「圭介…」


その話を聞いて林さんは、う、と呻いた後机に突っ伏した。


「何よ…、圭介の馬鹿!恨もうにも…、恨めないじゃない!!」


体を震わせて涙を流す林さんの背中を優しくさすりながら、りょこちゃんとあいらちゃんも涙目だ。


「わたし…、わたし、本当に飯田さんが好きでした…」

「あいらも…!」


一気にしんみりとした空気になってしまった。

しばらく泣いた後、林さんはフラリと立ち上がり儚げに微笑んで宴会会場を後にした。色々疲れちゃったからもう寝るらしい。というよりも、きっと一人になりたかったんだろうなあ。

海辺での鬼気迫った様子は怖かったけど、それも不安と悲しみで一杯一杯になっていたからだろう。凄く気の毒だ。早く元気になってくださいね…。


わたしはその様子を見届けて、激しいコールを振られることなく楽しく酒を飲んでいた代表がトイレに行くために抜け出したのを見て声をかけた。


「代表!」

「あ、榎本さん。お疲れちゃんー!」

「お疲れちゃんじゃないですよ。攻めるなら今です、代表」

「え?」

「訳あってりょこちゃんは今、酷く落ち込んでいます。慰めてポイントを稼ぐんです!」

「え…!どうして俺がりょこちゃんのこと好きだって知ってるの!?」


天然ボケか貴様!!


「いいから!とにかく散歩に誘うなりなんなり、アプローチするなら今なんですよ!!いいですね!?」

「わ、わ、わかった」


戸惑いながらしっかりと頷く代表に男を見せてください、あと傷つけるようなことはしないように、と念押しして解放する。

ヘタレな代表がどこまでできるか分からないけど、なんの混じりっ気もない真っ直ぐな好意はきっと傷ついたりょこちゃんの心に響くはずだ。大丈夫、きっと。…代表時々KYだけど…。う、うん大丈夫大丈夫。

自分で発破をかけておきながら少し不安になっていると、ペットボトルのコーラをバーテンダーの如く真顔で振り続ける変態紳士に遭遇した。今度は誰に復讐するつもりなんだ!?


「一ノ瀬くん、あいらちゃんにはもう謝ったの?」

「…いや、まだだが」

「ダメじゃん!こういうのは早めに謝る方がいいよ!」

「おい待て」


無理矢理引っ張ってあいらちゃんの前に引きずり出す。


「あいらちゃん、肝試しの時は本当にごめんなさい。あれはやりすぎだったって反省してるから。ほら一ノ瀬くん」

「…ごめんやで」


それ全然謝ってる態度じゃないから!!

わたしと変態紳士を交互に見て、あいらちゃんは目を潤ませた。


「あ、あれ、一ノ瀬さんがやったんですか…!?」


どうやら知らなかったらしい。

その時の恐怖を思い出したのか、あいらちゃんはギュ、と己の体を抱きしめて震え出した。


「あいら、あいら、本当に怖かったんですからね…!」


う、うーんナチュラルにぶりっ子反応をするなあ…。だから誤解されるんだよあいらちゃん。ホントは授業にもきっちり出てるし飯田さんに対して一途だったし真面目な子だと思うんだけど。

誤解の第一人者である一ノ瀬くんは、その様子に顔を歪めて吐き捨てた。


「このビチグソビッチが」

「…!」

「一ノ瀬くん!」


謝りに来たのにさらに暴言まで…!とあんまりな言い様に言い返そうとすると、あいらちゃんの瞳から一粒の涙が零れた。


「酷い…!あいら、まだ処女なのに…!男の人と付き合ったこともないのに…!」

「…なん、だと…」


愕然とする変態紳士。


「酷い…、酷いですう…」

「す、すまん。俺はてっきり…」


ヒク、ヒク、と涙を流し続けるあいらちゃんに、一ノ瀬くんはオロオロとした様子で謝り続けた。

慌てるあまりこれでも飲んで落ち着け?と言って手に持ったコーラを渡そうとしたので急いで没収。

あんたこれ一心不乱にシェイクしてたやつでしょ。これ以上泣かせる気か。

とりあえずこの場は変態紳士に任せることにした。変態とはいえ奴は紳士。か弱い乙女に対しては優しいのだ。ってか存分に困るがいいさ。けけ。



その時のわたしはまだ知らなかった。数週間後、この二人が目も当てられないほどのラブラブカップルになっていることを。また一組、つまらないカップルを成立させてしまったわたしだ。やれやれだぜ。



一方代表は上手いことりょこちゃんをお散歩に連れ出せたようだ。

心配だなあ大丈夫かなあとウロウロしていたら、お散歩から戻ってきた二人を見つけた。

りょこちゃんは…、怒っても悲しそうな顔もしていない。良かった代表のKYは飛び出さなかったんだね!


「おかえりなさい」

「杏花。今日もパトロールなの?」

「まあそんなとこ」

「大変だね」

「いやー、歩いたら喉乾いちゃったなあ!お、流石榎本さん良いもん持ってんじゃん!」


一口頂戴!と言ってわたしからコーラを奪う代表。

あ、それは…、というヒマもなく、蓋を開けた代表の顔にブッシャアアア、とコーラが直撃した。


「……」

「……」

「…、ア、アハハ!」


何も言えずにいるわたしと代表に、りょこちゃんは耐え切れなくなったのか、ケラケラと笑い出した。苦しげにお腹を抱えている。


「ヒドイ、榎本さん…」

「いやだって…」

「もう、何やってるんですか東海林さん!おっかし…!」


りょこちゃんはひとしきり笑った後、顔、洗いに行きましょ?と未だクスクス笑いながら言って、洗面所まで手を引いて歩き出した。

そういえばりょこちゃんの笑顔を見るの、久しぶりだ。やるな代表。

まだまだ時間はかかるだろうけど、頑張ればもしかしたら振り向いてもらえますよ代表!応援しますよ!転んだって何度も立ち上がる!それが代表ですもんね!!



その時のわたしはまだ知らなかった。紆余曲折の果てめでたく付き合い始めた後、意外にも尽くすタイプなりょこちゃんが代表の前では一途で甘えん坊なキャラになってしまうことを。

あいらちゃんもビックリなぶりっ子ぶりだ。代表の前でだけだけどね。



二人を見送って、ほう、と一息ついた。

あー今日は色々あったなあ。平穏無事には済まないと思ってたけど、こんなに荒れるなんて…。

恋愛って恐ろしいわあ。蚊帳の外で良かった!


そう思いながら片付けするかー、と宴会会場に戻ろうと踵を返すと、わたしのことを真剣な表情で見つめる佐藤くんがいた。

何だ何だ、また問題発生!?


「どうしたの、佐藤くん」

「さっきはなんだかうやむやになっちゃったけど…、俺、さ、…付き合うよ」

「はい?」


脈絡もなくそう言われて首を傾げてしまう。

付き合う?何に?ちょっと考えて納得する。ああ片付けのことね!


「ありがとう。助かるよー」

「よろしく…。それで、あの、さ。杏花って、呼んでもいい…?」


頬を染めながら申告される。いきなりどうしたんだろう。

同じ合宿委員だし、もっとフランクにいこうってこと?

呼び方に特にこだわりはなかったので快く許可すると、佐藤くんは頭をかいてはにかんだ。


「ありがとう。俺のことはゆうちゃんでいいから!」


いや、それはちょっと…。

曖昧に笑いながら受け流す。ちょっと佐藤くん、クネクネしないでもらえるかな?気持ち悪いよ?とりあえず仕事しよ?





こうして、夏合宿は幕を閉じた。

とにかく波乱万丈だったけど、良くぞ無事に乗り切ったわたし!偉いぞ!

家に帰ってその達成感を噛み締め自画自賛だ。流石杏花ちゃん!やるうー!


鼻高々になっていたわたしだけど、一つの時限爆弾が自分に投下されていたなんてこと、この時のわたしは思いもよらなかったのである。


ま、それはまた別のお話。


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