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ある夏合宿の顛末 2

《注意》

・下ネタ、汚い表現があります。苦手な方はご注意ください。

・この物語はフィクションです。実在の人物、団体名、大学生の行動とは一切関係がありません。

合宿2日目。


本日はお昼にバーベキュー、行きたい人はビーチで遊んで暗くなったら肝試し&花火、そして宴会その2というスケジュールだ。

え?テニスはしないのかって?はいしません。飲むことだけが目的、いやいやメンバーの親交を深めるのが目的の合宿です。

一応近くにテニスコートもあるんだけど、ほとんどの人が二日酔いで運動どころじゃなくなっちゃうんだよね。逆に怪我しちゃうのもアレだし。

ああ、でもこれだからチャラサーとか言われちゃうんだようち…。

なんだかなあ。真面目な人だってちゃんといるんだよ?わたしみたいにね!


お昼のバーベキューは概ね和やかに進んだ。

いつも元気な奴らが凄く静かだからね〜。でもちゃんとお肉焼いてね?

例の一番ホットな面々は相変わらずの会話を繰り広げている。


「涼子ちゃん、もう具合は平気?焼くの代わるよ」

「ありがとうございます飯田さん。もう平気です。ごめんなさい心配かけて…」

「あいらピーマン苦手なんですけど、飯田さんが焼いたのなら食べれそうですう」

「りょこちゃん、俺実はバーベキュー検定持ってんだよね。見ててよ俺のバーベキュー奉行!」


代表が張り切りすぎて火をフランベ状態にしてりょこちゃんに盛大に叱られていた。

代表…。

個人的には、もちろんりょこちゃんを応援してるんだけど、代表に幸せになって欲しいなあと思ってるんだよね。

なんだか一生懸命に空回りしてる姿が泣けてくる。皆代表のことが大好きですよ!時々ウザいけど!


お昼の後は休憩タイムということで部屋でゴロゴロしたり海で遊んだりと自由に過ごせる時間となっている。

だがしかし、合宿委員に休憩という二文字はない!

来るべき最大のイベント、肝試しのために入念な準備とリハーサルをしなければならないのだ。

ぐへへ、腕がなるぜえ!


肝試しとは言っても大したことをするわけではない。

男女でペアになって暗い夜道を歩き、海辺の中継ポイントであらかじめ持たされていたメダルを交換して別ルートで戻るというものだ。

途中水鉄砲で攻撃されたりオバケに驚かされたりするだけの生ぬるーい仕掛けしかしていない。

まあ、要は男女の仲が深まれば良いんですよ!ビバ吊り橋効果。例年の肝試しでいくつのカポーが以下略。

男女のペアは厳正なるくじ引きで決まる。

ズルはなしだけど、後から本人の了承を得て交換するのは良しとしている。嫉妬深い子もいるからね〜。余計なトラブルは自ら察して回避してね!

りょこちゃんは普段のプライドをかなぐり捨て、深々と頭を下げることで見事飯田さんとのペアを獲得したようだ。良かったね、りょこちゃん!わたしも二人が上手くいくよう陰ながら応援してるよ!

ちなみにあいらちゃんも飯田さんとペアのくじを引いた子にお願いしたようだけど、断られたみたいだ。あいらちゃんアンチの女の子多いしね…。残念だったね。

でもペア相手の代表を無視しないであげて?涙目だよ?



そうして肝試しが始まった。

スタート・ゴール地点ではオカンが待機して、タイミングを見計らってペアをスタートさせる。

しばらく歩くとなんちゃって合宿委員の田中&吉沢バカップルコンビが不意打ちで水鉄砲攻撃を仕掛ける。けっこう濡らしちゃうよ?夏だし!

その後中継地点に到着。そこでは、


「ここで折り返しなんだ」

「お疲れ様です飯田さん、りょこちゃん。メダルは持ってますか?」


わたしと一ノ瀬くんが待ち受ける。

若干衣服を濡らしてやってきた飯田さんとりょこちゃんを笑顔で出迎えて、メダルを箱の中に入れるよう指示する。


「ちょっと…この箱見るからに怪しいんだけど…」

「そんなことないよ。何の変哲もないただの箱だよ。ささ、早くメダルを!」

「む、無理。絶対無理!」

「しょうがないな、じゃあ俺が入れるよ」


尻込みするりょこちゃんに飯田さんが男前にそう言ってメダルを握った手を箱の中に入れた。


「い、飯田さん…!」

「ん?わ、…ああ、はいはい」


りょこちゃんがさりげなくキング・オブ・男前、飯田さんのシャツの裾を握りしめながら固唾を飲む中、冷静な副代表は特にこれといった反応を示すことなくするりと手を箱から抜いた。


「なんか、そっと手を握られてメダルを持っていかれたんだけど」

「ひ…!やっぱり何かあるんじゃないこの箱!誰が入ってるの!?」


一ノ瀬くんです。

こやつ、もしや人を選んでおるな…!?

とりあえず中継地点クリアの証拠のメダルを渡してこの後のルートを説明する。

あともう少しで終わりだよ!頑張ってね。

チラリと振り返るりょこちゃんに向かって親指をグ、と突き出す。

グッドラック!


「ちょっと一ノ瀬くん、今手を抜いたでしょ」

「…飯田さんを驚かすなんて…、俺にはできない…」


さいですか。


次のペアは代表&あいらちゃんだった。

始終ビクビクしている代表とは対照的に、あいらちゃんはガンガン行こうぜとでも言わんばりの勢いだ。全然怖くないらしい。

相手が副代表だったらきっと態度違うんだろうなあ…。


「じゃ、メダルを箱の中に入れてくださーい」

「手を中に!?無理無理無理無理絶対無理俺にはできない!!」


必要以上にビビるヘタレな代表にあいらちゃんは業を煮やしてメダルを代表から奪い取った。


「ならあいらがやりますよ!こんなのただの子供騙しじゃないですか!」


カッコ良くそう宣言してズボッと手を箱の中に突っ込んだ。

と同時に、


「ギャッ、イイイヤアアアアァァッッ!!ヤメテ!!ヤメテエ!!ヤメロオオオオッッ!!!!」


ダミープラグに搭乗したシンジ君並みの大絶叫が辺りに響き渡った!

な、中で何が起きてるんだ!?

絶叫しながらも般若の形相でなんとか箱の中から手を取り戻し、あいらちゃんは全速力で走り出した。

ああ!ルートは合ってるけど!まだメダルを渡してないよ!?


「あいらちゃん待って!俺を置いてかないで!!」


代表も慌ててその後を追いかける。

凄いやあいらちゃん…。ボルトもビックリの走りだよ…。

唖然としたまま二人を見送る。


「一ノ瀬くん…。一体何をやったの…?」


もぞもぞと箱の下から出てきた変態紳士はニヤリ、と黒い笑みを浮かべた。


「奴の手を濡れた手で掴んで舐めまわしてこれをかけてやっただけだ」


彼の手には携帯用のリンスが握られていた。

良い感じに白くてドロっとした液体が入っているようだ。

うわあ…。


「メス豚ビッチの味がした。不味い」


水で口をすすいでペッと吐き出しながら変態紳士はやり遂げた顔でまた箱の中に戻って行った。

あんた鬼や…。鬼の子や…!

どうやら行きのバスであいらちゃんによってもたらされたフラストレーションを未だ根に持っていたらしい。

一ノ瀬くんだけは怒らせないようにしようと心に誓った。

この変態紳士、復讐のためならどんな手段も選ばないぞ…!恐怖!


全速力で駆けていったあいらちゃんは、前を行っていた副代表・りょこちゃんペアに追いついたようだ。

尋常ではないあいらちゃんの様子に飯田さんが構いっぱなしで雰囲気ぶち壊し。りょこちゃんはせっかくの二人きりの時間を邪魔されてしまった。

あいらちゃん、これは計算なのか偶然なのかどちらにしても恐ろしい子…!


ちなみに最後の仕掛けは佐藤くん扮する血塗れのリクルートスーツを着たオバケだ。

物陰から突然現れて主に3年生を恐怖のどん底に突き落とす。


「シュー…カツ…、メン、セツ…。エントリー…、エントリー…」


我を失ったあいらちゃんに気を取られていた飯田さんとりょこちゃんは佐藤くんの存在に気付かずそのまま通り過ぎたが、ボルト並みの速さを持ち合わせていなかった代表がやっとの思いで3人に追いつきやれやれと顔を上げたところで目があってしまった。


「う、うわあああああ!聞きたくない聞きたくない聞きたくないいいいいいっ!!」

「あれ、代表!?いたんですか!?」

「東海林どうしたんだ?おい待て!」


恐慌状態に陥った代表は耳を塞いで泣きながら3人を置いて走って行ってしまったらしい。

哀れ代表の未来やいかに。




そんなこんなで全員無事に肝試しも終了し、今は浜辺で手持ち花火大会だ。

各々好きな花火を手に取りちょっと気になるあの人から火を貰ったりしてキャッキャウフフしている。

うむ、楽しそうでなにより。


「りょこちゃん見て!これ凄くない!?」


就活という名の恐怖から抜け出した会長が、綺麗でしょー?と言いながら実に楽しそうに派手に火花を散らす花火を両手に持ってくるくる回っている。

会長…、さっきから元気がないりょこちゃんを励まそうとしてるんですね…、ってそれもしかしてロケット花火じゃ!?今すぐやめなさい!!

一方りょこちゃんはなかなか思ったように上手くいかないことに落ち込んだのかため息をつきながら線香花火をしている。

りょこちゃんまだ早いよ!今始まったばかりだから!それ最後にやる奴だから!

そして精神に大ダメージを被ったあいらちゃんはというと、チャッカマンを手にひたすらネズミ花火を浜辺に投下していた。うっすら笑みを浮かべている。怖っ!

やっぱり一ノ瀬くん、あれはやりすぎだよ…。後で謝らせよう。


そういえば飯田さんの姿が見えないな。これまで常にあいらちゃんかりょこちゃんが張り付いてたから目立ってすぐに見つけられてたんだけど。今は二人ともそんな余裕がないもんなあ。どこ行っちゃったんだろう。


キョロキョロしていたところで、隣で汚れた水を汲み変えるためにバケツを手に持った佐藤くんがつぶやいた。


「みんな良いなあ…。俺も青春したい」


羨ましそうにキャッキャウフフしている集団を眺めている。

まあねえ。合宿委員なんて常に雑用しなきゃだしお酒もろくに飲めないしでとんだ貧乏くじだよね。気持ちはわかる。でも皆の様子をこうして俯瞰で眺めるのも結構面白いものですよ?

当事者になっちゃったら楽しむものも楽しめないし、このポジションが一番楽で面白いと思うんだけどなー。

これ言う度にりょこちゃんに「あんた枯れすぎ」って言われるけどね!わたしは気にしないよっ!これでもピチピチの女子大生だよっ!

わたしは励ますように佐藤くんの肩を叩いた。


「お疲れ佐藤くん。一段落したらうちらも花火しよっか。余るほど用意してるしね」

「榎本さん…、え、二人で?二人で線香花火しようってこと?」


うん?いや別に線香花火じゃなくてもなんでもいいけど…。

佐藤くんの顔に生気が戻ってなんだか嬉しそうなので、とりあえずそのままにしておく。


ポトリ、と線香花火の弱々しい火が地面に落ちたのを見届けて、りょこちゃんはため息をつきながら立ち上がった。


「先に旅館に戻ってるね」

「え、もう?一人で大丈夫?」

「大丈夫。煙に当てられてちょっと気持ち悪くなっちゃった」


ありゃりゃ。本当に大丈夫かな?暗い夜道を一人で歩くなんて危ないよ!ああもうこんな時に飯田さんは見当たらないし代表ははしゃぎ回ってるし男性陣使えないなあ!

ついて行こうかと申し出たら、仕事あるだろうしあんただって一人で出歩いてるでしょ心配しすぎ、とツンデレっぽい口調で遠慮されてしまった。何かあったら電話してね、と言って見送る。

うーん昨日は酔っちゃった作戦が上手くいってけっこう良い雰囲気に持って行けたんだけどなあ…。もしかして肝試し中に何かあったのかな?あいらちゃんがまだいない時に。


そしてずっとネズミ花火に興じていたあいらちゃんは少し回復したのか、辺りを見回しながら浜辺を離れていった。たぶん飯田さんを探してるんだね。あいらちゃん、強い…。

彼女のタフさに尊敬しちゃう。わたしあんなことされたら立ち直れない自信ある。


「ちょっと一ノ瀬くん」

「なんだ」


一人で何やらブツブツと呟きながらチャッカマンを点けたり消したりして遊んでいた一ノ瀬くんに声をかける。


「さっきのあいらちゃんの件、あれはやり過ぎだと思うよ」


注意すると、一ノ瀬くんはフン、と鼻を鳴らした。


「当然の報いだ。目には目ん玉を、歯には歯ん玉を、を実行したのみ」


歯ん玉ってなんだ歯ん玉って。

だから舐めまわしたっていうのか。


「いやでもアレはトラウマになるレベルだよ…。行きのバスで肘鉄されたのだって故意にやったわけじゃないんだから。なんでこんな嫌がらせされたのかきっと分かってないよ。とにかくあいらちゃんに謝って理由を言ってあげないと」

「別にそれだけが理由じゃないんだが…。しょうがないな」


口論になるのが面倒臭かったのか、一ノ瀬くんは納得いかなそうに眉をひそめつつ頷いた。

うーん顔はホントに整っててすれ違った女子が大抵振り向くぐらいのイケメンなんだけどなあ…。

きっと今頭の中では「俺氏謝罪待機。大草原不可避www」とか思ってるんだろうなあ…。残念だなあ…。


次から次へと花火を消費するので(主に代表が)、すぐに用意していたバケツの水が汚れていく。

わたしも働かないとね、ということで水変えてきまーす。

ここは海水浴場でもあるので近くにシャワールームが設けられている。そこの水道で花火の残骸をあらかじめ用意しておいたゴミ袋に収めた後、水を入れ替えるのだ。決してそこら辺にゴミを捨ててはいけませんよ。

えっちらおっちらバケツを手に持って歩いていると、何やら今はもう使われていない海の家の方から声が聞こえてきた。


「あなたには関係ないでしょ!!」

「関係あるわよ!さっきも言ったでしょ!?」


え、もしかしてケンカ!?

慌てて近づいてみるとなんとりょこちゃんと飯田さんの元カノ・林さんが口論をしているではないか!


「わたし達、まだ別れてないの。だから圭介のことはあきらめて」

「嘘ですね。だってわたし、飯田さんに直接聞きましたもん。別れたって」

「だからそれは圭介の早とちりで…」


おおうなんだか聞いてはいけない内容な気がするぞ!

うーんでもこれは第三者の介入があった方が丸く収まるかなあ?どうしよう…。


躊躇していたところで二人の元にわたしとは別の第三者が現れた。


「あ、先輩方ちょうど良いところに!飯田さん見かけませんでしたあ?」


あ い ら ちゃ ん !!


最悪のタイミングで最悪の人物がガールズ・ミーツ・ライバル!!

丸く収まるどころかこれじゃ四方八方に刃が飛び交う戦場になっちゃうよ!



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