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「それでは、約1年間ありがとう、そして秀一くんこれからも頑張れの意味も込めまして!メリークリスマース!乾杯ー!!」
「乾杯…」
わたしの無駄に高いテンションに若干引きながら、秀一くんもグラスを掲げた。
おうおうなんだ、ノリが悪いぞう!
買い物から帰ってきてから、なんだか秀一くんは元気がない。
どうしたんだろう。陽介くんが来てないからかな?
「陽介くん、結局来れないのかな?」
「さあ…、メールしてみたんですけど返事がなくて」
なるほど。それで元気がないのか。
「来れるといいね」
「…そうですね」
さっそく二人でチキンやらポテトやらを並べて頬張った。
今日はギットギトになってやるぜ!中学生の若々しい食欲にどこまでついていけるかわからんが!
最近胃袋の衰えを感じるけど、まだまだイケるって信じてる!
「そういえばテストはどうだったの?」
「ああ、全然問題なかったですよ。国語も平均点よりだいぶ上でしたし。杏花さんのおかげですね」
「いやいや〜、わたしは何もしてないよ。秀一くんが頑張ったからでしょ」
「そんなことないです。あ、それで…」
チキンで汚れた手を拭いて、秀一くんは何やらゴソゴソとカバンを漁りだした。
そして取り出したのは綺麗な包装紙で包まれたリボン付きの箱。
「これまでのお礼も兼ねて、クリスマスプレゼント、です」
はい、と差し出されたけれど、驚きすぎて声も出ない。
え、ええー!なんというサプライズ!
男の子からプレゼント貰うなんて!いつぶりだろ!?
「も、も、貰っちゃっていいの!?」
「もちろんです。むしろ受け取ってくれないと困っちゃいます」
しどろもどろなわたしに、秀一くんは照れたように笑った。
やだなあ、こっちまで照れてきた。
「ありがとう…。開けていい?」
どうぞ、という言葉を受けて、丁寧にラッピングをほどいていく。
何が出るのかな〜?
ワクワクしながら開けてみると、暖かそうな茶色い手袋が箱に収まっていた。
「手袋だ…!」
「あの、杏花さん冷え性だって言ってたし何個あっても困らないかなと思って…。でも好みがありますよね。気に入らなかったら俺、」
「ううん、嬉しい!ちょうど手袋欲しいなーって思ってたところなんだよね。助かったよ!ありがとう、秀一くん」
不安そうな秀一くんに、わたしは心から感謝した。
いやホントに助かった!去年手袋片方失くして困ってたところなんだよね。手袋を片方失くすって地味にショックだよね。
しかも最近めっきり寒くなってきてガチで手袋欲しいなって思ってたところだったんだよー!
とりあえず嵌めてみる。おお!ピッタリだ!凄い!なぜわたしの手袋のサイズが分かった!?
「ありがとね。失くさないようにしなくちゃ。あ、だけどわたし何も用意してないや!」
ヤバイ!年上の威厳が!
慌てるわたしに秀一くんは首を振った。
「そんなの気にしないでください。言ったでしょ、これまでのお礼って。今日だってほとんど杏花さんの奢りになっちゃったし…」
「いやでも…」
この手袋けっこうしたんじゃないの?それにプレゼントは交換し合うのが一番楽しいんだよ?
ああーー、どうしよう。お年玉で返すとか?
でも受け取ってくれなさそう…。
オロオロするわたしに見兼ねたのか、秀一くんがしょうがないなあ、という様子で提案した。
「それじゃあ、俺が無事第一志望に合格したら一つお願いを聞いてください」
「え?お願い?」
「はい」
ニッコリと笑う秀一くん。
なんでだろう、顔が良い人が綺麗に笑うとなんだか胡散臭い。
「えーっと、わたしが叶えられる範囲でのお願いなら聞いてあげられるけど…」
「あはは、そんな無茶なことは言いませんよ。心配しないでください」
「あ、そう?ならいいけど」
「約束ですよ」
秀一くんは満足そうに目を細めると、ポテトに手を伸ばした。
えー、何言われるんだろう…。まあ秀一くんだし変なお願いはされないだろうけど。
とりあえず秀一くんの機嫌が直ったようなので良かったことにする。
手袋さっそく明日から使おっと。
小一時間ほどして、そろそろケーキに手をつけようかと話している時にチャイムが鳴った。
出てみると陽介くんがサンタの格好をして立っていた。
「陽介くん!」
「っちわー!メリークリスマスでっす!」
「どうしたのその格好!?」
「クリスマスパーティーっていったらサンタかなと思って!兄貴の借りてきました!」
陽介くんのお兄さんなんでそんなの持ってるんだ…。
というかその姿で街中を歩いてきたの…?
久しぶりの陽介くんは相変わらず元気だった。
勉強がヤバイって言ってたからもっとげっそりしてるのかと思ったけど良かった!
「すんません遅れて…。なかなか抜け出せなくて。またすぐ戻らなきゃなんですけど、とりあえず差し入れだけでも持って行こうと思いまして」
「ええ!?大丈夫なの?」
「30分くらいなら平気です!」
これ、差し入れの羊羹です。これも俺の好物なんですよー!と言いながら陽介くんはサンタの格好のまま勧められるままに座布団に座った。
「よ!秀一」
「陽介、来れたんだ。というか何だその格好」
「え、だってクリスマスパーティーだろ?」
当然のように言う陽介くんに、秀一くんは呆れ気味だ。
うん、普通に会話してる。どうやら関係は元に戻ったようだ。良かった良かった。
とりあえず陽介くん、ケーキと羊羹食べて行きなさい?
陽介くんはあっという間に出されたお菓子を平らげて落ち着く暇もなく腰をあげた。
お見送りに一緒に外に出ると、陽介くんは申し訳なさそうに頭をポリポリかきながら謝ってきた。
「すんません、ホント…。せっかく誘ってくれたのに。最近志望校変えたんで行くならしっかりせい、って母ちゃんが厳しくて」
「え?志望校変えたの?」
「はい。俺、秀一と同じ高校通いたくて。めっちゃレベル高いんでもう必死ですよ〜」
普段の成績も良くないし…。と陽介くんはため息をついた。
そうだったのか!それでこっちに来れなくなっちゃったんだね。確かにわたしじゃ何も教えられないしね…。
「そっか。頑張ってね。陽介くんならきっと大丈夫!でも体調だけは気をつけて」
どんなことも体が資本だからね!
「うう…、杏花さん優しい…。ダメっす今の俺に優しい言葉かけたら!また勘違いしちゃうんで!」
「え?勘違い?」
「それじゃ、良いお年を!!」
さっ、と手を上げて陽介くんはサンタの格好のまま帰って行った。
勘違いって何のことだ?
「いやー、陽介くん元気そうで良かったよ」
「あいつは大概元気ですよ」
「もう少しゆっくりできたら良かったのにねえ」
残念がっていると、秀一くんは最後に残しておいたケーキのイチゴを口に運びながらちらっとこっちを見た。
「まあ…、あれが限界だったんじゃないですか」
と言って遠い目をした。
え、どうしたの?
「さっき勘違いがどうのこうの言ってたけど何か関係あるのかな」
「…」
秀一くんが残念な人を見る目でわたしを見た。
え、なんで!?
「…陽介も、佐藤さんと同じってことですよ」
…?どういうことでしょうか。教えて秀一先生!




