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街中を歩いていて気がついた。
やだ、年末が近いってことはもうすぐクリスマスじゃないの!
うっかりしてたー!
あまりにも縁がなさすぎてその存在をすっかり忘れていた。
大掃除しなきゃな〜とか考えてた。
我ながら残念すぎる…。
買い物に行けばどこもかしこもイルミネーションでキラキラしている。
いやー、こういう空気嫌いじゃないよ?クリスチャンでもないのにイベントごとがあったらなんでも乗っかる日本人の軽いノリが大好きだ!アイラブジャパニーズ!
でもなんでクリスマス、イコール恋人たちの聖夜みたいな概念があるのかね?そういうの義務みたいで嫌だよね〜。
ま、わたしには関係ありませんけど!
とにかく、恋人がいなくたって楽しめるものは楽しまなければ!
「え?クリスマスパーティー?」
「そう!まあ、パーティーってより打ち上げ、って感じだけど。ほら、こっちに来るのも12月まででしょ?ちょうど区切りもいいし。ケーキとかチキンとか持ち寄ってパアッとやりたいなーと思って」
さっそく秀一くんに話を振ってみた。
そうなのだ。家庭教師もあと残すところ数回、年末まで。
年明けはわたしが忙しくなるのと、秀一くんに教えることもなくなってきたのでそういうことにしようとせっちゃんと話をしていたのだ。
いやあ、秀一くんマジ優秀過ぎるわ。師匠から教えることはもう何もない。
「そう、ですよね…。分かりました。最後の日にやるんですか?」
「うん、そのつもり!勉強終わったら一緒に買い出しでもしてささやかにね。あ、えっと、一応陽介くんも呼ぼうと思ってるんだけど」
どうかな?と伺うように見ると、秀一くんはああ、と普通の顔でうなづいた。
「じゃあ俺から言っときますよ。来るかはわからないですけど…」
あれ、特に思うところは無さそうだな。もう仲直りしたのかな?
なぜかパタリと陽介くんが来なくなってしまったので、もしかして絶交!?とまで考えちゃったんだけど…。
違ったのか!良かったあ。
でもどうして来なくなったのかな。やっぱりわたしが役に立たないからかな…。
秀一くんはわたしがあからさまに陽介くんを気にしていることに気づいたのか、一瞬複雑そうな顔をして、それから何でもないとでも言いたげに肩をすくめた。
「陽介、予想以上にヤバイらしくて、今追い込み中なんですよ。だからこっちに来る余裕もないみたいです」
え、そうなの!?前までけっこうのほほんとしてたけど…。
大丈夫なのかな。体壊さないといいけど…。
しかし、秀一くん、今なんで一瞬そんな顔したのかな?何か隠してない?
聞いても言わないだろうから聞かないけど。気になるなあ。やっぱり陽介くんが来なくなったのわたしのせいだったりして!?
悶々としつつ、数日が瞬く間に過ぎ、とうとう秀一くんに勉強を教える、最近は秀一くんが勉強しているところを見るだけになってきたけど、最後の日がやってきた。
結局陽介くんは参加できるかわからないらしい。行けたら行く、頑張る、という返事をもらったと秀一くんが言っていた。そんなにヤバイのか…。
今日は早めに勉強を切り上げて一緒に買い出しだ。
ケンタでチキンでしょ、コージーコーナーでケーキでしょ、ドンキでジュースでしょ〜。あ、この際ノンアルコールのカクテルとか買っちゃう!?流石に中学生にそれはダメかなあ。
「楽しそうですね、杏花さん」
「え?そうかな?」
クラッカーを買おうとしたわたしを冷静に止めながら、秀一くんは苦笑した。
う、ちょっと大人気なかったかな。
「だってクリスマスだよ?やっぱりこういう浮かれた空気には便乗しないと損でしょー」
「まあ、わからなくもないですけど。でもこれ、お別れ会も兼ねてるんですよね?」
え、お別れ?誰と誰の?
顔中にハテナマークを飛ばすわたしに秀一くんは首をかしげた。
「だって、今日で終わりなんですよね?勉強を教わるの」
ああ、そういうことか!
「お別れ会だなんて大げさだなー。お疲れ会、いやまだこれからも勉強しなきゃだから壮行会?そういうノリだよ今日は!それに親戚なんだからこれからもしょっちゅう会えるでしょ」
「それはそうですけど…」
秀一くんはうつむいた。そしてボソッと何か呟いた気がするけど良く聞こえなかった。
え、え、今なんて言ったの?
気になるけどしかしそれ以上に気になるもの発見!
「ねえ秀一くん、この三角帽子、」
「後で絶対ゴミになるのでいりません」
あ、そうですか…。残念。




