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今日は陽介くんも一緒に遊びに、もとい勉強しに来た。


文化祭で会ってから、しつこく俺も連れて行ってとお願いされていたらしい。

いやあ、わたしに教えられることなんてあまりありませんよ?

がっかりさせちゃったら悪いなあ。


「榎本さん、こんにちは!今日はよろしくお願いします!」


陽介くんは相変わらず元気な挨拶でやって来た。


「これ、つまらないものですが!うちの近所の和菓子屋のどら焼きです!すっげえうまくて俺の大好物なんですよー」

「へー!じゃあ後で一緒に食べようか」


陽介くんとどら焼き。ふふ、なんだか似合う組み合わせだなあ。

あ、そういう意味じゃないんですけど!と慌てる陽介くんと、その後ろで呆れる秀一くんを中に招き入れる。


「お、俺、女の人の部屋に入るの初めてっす…!」

「陽介、変な想像するな。それにお前には姉ちゃんがいるだろ」

「姉貴とは訳が違うって!あ、なんだかいい匂いがする…!」


元気だなあ。陽介くんが来て、一気にうちが賑やかになりました。

ついでにいい匂いがするのはアロマポットのせいです。

アロマにハマる24歳独身女彼氏募集中です。

なんだかこう言うと残念臭がするよね。


「おお!すげー!凄い漫画の数ですね!面白そうなのがたくさん!!」


陽介くんはわたしの本棚を見回して感嘆の声をあげた。

この価値が分かるとは、お主、やりよるな!

秀一くんはすっと近づいてきて耳元で囁いた。


「陽介の目的、たぶんこれだから」


どうやら夏休みに秀一くんの家へ遊びに行った時、わたしから借りてきた漫画を一緒に読み、ハマってしまったらしい。

そして次を貸してくれと頼んだら又貸しはダメだ、学校に持ってくるのも禁止だからダメだと言われ、自分で買うお金もなく、夏休みが終わってからなかなか漫画の続きが読めずに辛い思いをしていたらしい。うん、その気持ち、よくわかるぞ陽介くん!


「好きなだけ借りてお行き…!」

「いいんですかお姉さん!!」


ガシ、と陽介くんとわたしは手を取り合った。

今にも本棚に手が伸びそうな陽介くんを、秀一くんが冷たい声で制止した。


「陽介、今日は勉強をしに来たんじゃないのか。しないんだったらとっとと帰れ」


前も思ったけど、秀一くんって陽介くんにちょっと厳しくない?

それともこれが素なのかなあ。

だいたい陽介くんが読みたがってるならわたしに一言言ってくれれば全然又貸ししてくれて良かったのに!


陽介くんは気を悪くした風もなく、そうだったそうだった~と笑いながら勉強道具を出し始めた。

秀一くんはそれを見届けてため息をつく。

また眉間にシワが寄ってますよ?

ケンカするほど仲が良いっていうし、秀一くんも怒りながらもどこか楽しそう。

生真面目な秀一くんと大らかな陽介くん。

性格が正反対だからこそ相性がいいのかもね。


陽介くんは国語以外の教科も教えて欲しかったみたいだけど、わたしじゃ全く役に立たなかった。

因数分解って何?どういう意味の四字熟語?

とにかくそこら辺は秀一先生に聞いてください。申し訳ない。


1時間ほど集中して勉強した後は、陽介くんが持ってきてくれたどら焼きを食べながら休憩だ。

陽介くんは小学校のころから野球をしているらしい。

どうりでガタイがいいと思った!挨拶も体育会系だしね。

ちなみに秀一くんは帰宅部だ。家事をしなくちゃいけないもんね。

でも運動神経は結構良くて、運動会のリレーではアンカーを務めるほどなんだそうだ。

へえー!見てみたかったなあ。さぞ女子が黄色い声をあげたに違いない。


嬉々として秀一くんのことを話す陽介くんは楽しそうだ。

今、わたしはのろけられている…!

美味しいです!


あ、でものろけって言ったらあれものろけのうちの一つに入るのかなあ。


「そういえば文化祭で秀一くんの担任の先生にも会ったよ。すごい美人だよね」

「ああ!アヤちゃんですか?アヤちゃんは男子の憧れっすよ~。綺麗だし優しいし!なあ秀一」

「え、ああ…、まあ…」


秀一くんが歯切れ悪く答えた。


「あ、アヤちゃんっていうのは鳥海亜矢っていうからアヤちゃんなんですけど、なぜか秀一は苦手みたいで。アヤちゃんは何かと秀一を頼りにしてて好きっぽいのに」

「もういいだろこの話は」

「俺だったら嬉しいけどな~。アヤちゃんと二人っきりでプリント作ったり、一緒に荷物運んであげたりさあ」


ほほう、あの迫力ある先生と二人きり…。

イケナイ匂いがぷんぷんしますなあ。


「それにアヤちゃんって近くで見るとこう…」


そう言いながら陽介くんは両手で何かを掬い上げるような仕草をした。


「陽介!」

「あ」


うん?何かな?ドジョウ掬いの練習かな?

おほほ、立派なドジョウですことねえ~。


秀一くんに諌められて、陽介くんはまずい、という顔をしながらごまかすように笑った。


「あははー、とにかく、秀一っていまいち趣味がわかんないんですよねー」


そうかそうか、秀一くんは大きなドジョウが好きなわけじゃないということかな?

ついでに陽介くんは大きいのが好き、と。

ま、どうでもいいけど!


鳥海先生の話題が相当嫌なのか、秀一くんは苦い顔をしてそっぽを向いている。

そんなに苦手なのか…。

鳥海先生は秀一くんが自慢で仕方ないって感じだったけど。

陽介くんも秀一くんの機嫌の悪さを察知して、話題を変えた。

君たちホントに仲良いね。

良いバッテリーが組めるんじゃない?あの野球漫画面白いよね~。


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