表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/31

11

秀一くんのクラスの喫茶店に向かってみると、なんと行列ができていた。大盛況らしい。


動物喫茶アニマルは想像通り各々が動物の格好をして接客をするコスプレ喫茶だった。

ちらっと中を見た感じだと、ケモノ耳に尻尾を付けているだけの子もいれば、ガッツリ着ぐるみを着ている子もいる。ほほう。

秀一くんいるかなあ。どんな格好してるのかな。

オラ、わくわくすっぞ!


10分ほど並んで中に通される。

椅子に座ってメニューを見ていると、水が入った紙コップが目の前に置かれた。


「…杏花さん。やっぱり来たんですか」


顔をあげると、猫耳をつけた秀一くんが嬉しくなさそうに目を眇めて立っていた。


「そりゃー可愛い教え子の晴れ舞台だもの。見に来ないでどうすんの!」

「…はあ」


秀一くんは疲れたようにため息をついた。

こらこら仮にもお客さんにそんな態度とっていいのかね?

しかし猫かあ。懐かない感じが確かに似てる!


秀一くんは黒い猫耳に尻尾のウェイター姿だ。

そのまま制服の子もいる中で、なんだか秀一くんだけ完成度高くないか?

しかもよくよく見ると赤い首輪をつけている!誰の趣味!?


「女子が問答無用で押しつけてきたんです…。俺の趣味じゃありませんから」

視線の意味に気づいたのか、秀一くんはそう弁明した。

全身から哀愁が漂っている。うん。お疲れ。


とりあえずクッキーと紅茶を頼んで、店内を見回してみた。

お客さんは比較的女子生徒が多いかな?そのうちの数人は秀一くんの後ろ姿を追っている。

おお、モテるだろうなとは思っていたけど現場を目にすると実感できるなあ。

羨ましいぞこの野郎。


「クッキーと紅茶お待たせしましたー!」


元気な声と共にライオンの着ぐるみを着た男子が注文したメニューを持ってきてくれた。


「お姉さん花火大会の時にも会いましたよね?俺、秀一の親友で笹原陽介っていいます!」


よろしくお願いしまーす!と屈託無く笑うライオンさん。

この子が例の陽介くんか!

というか花火大会で会ってたのか!


「こちらこそ。秀一くんがお世話になってます。榎本杏花です」

「秀一ってば水臭いですよね!一緒にいたお姉さんは誰だって聞いても全然教えてくれないんですもん。俺最近まで家庭教師に勉強教わってるなんて知らなかったんですよー」


陽介くんはちょっと不満そうに言った。

確かにねえ。あれだけ陽介くんのことで相談してきたんだから、花火大会で会った時にあの子が陽介です、とか教えてくれればいいのに。


秀一くんの元カノがブサイク、とか言ってたみたいだけど、実際の陽介くんは全然そんなことなかった。

何かスポーツでもやっているのか、キリッとした目元に大柄な体躯が中学生ながら堂々としている。

でも雰囲気は人懐こくてわんこっぽい。思春期だからほっぺにニキビができてるけど、将来人気が出そうな感じだ。

というか秀一くんと二人並んだら一部の女子が盛り上がるんでない?

いかん、ニヤニヤしそうだ。


「榎本さん、俺にも勉強教えてくださいよ!俺秀一より俄然ヤバいんですよ!」

「陽介、何仕事サボってるんだよ」


見兼ねたのか、秀一くんが眉間にシワを寄せて近寄ってきた。

しかし猫耳なので全然怖くない。


「サボってないよ!接客してただけじゃんか」

「無駄なおしゃべりは接客とは言わない」


スパッと切り捨てて陽介くんを睨みあげる秀一くん。

しかし身長差があり過ぎてあんまり効果はなさそうだ。

ライオンに猫だしね。

「ごめんって~」と反省してなさそうに笑いながら謝る陽介くん。

そしてますます不機嫌になる秀一くん。


いかん、口元がむふむふしてしまう!

とりあえず紅茶を飲んで落ち着こう。


「ちょっと二人とも!待ってる人たちがいるから手伝ってよ!」


とうとう小声でネズミ耳を着けた女子が注意してきた。

そうだぞ。二人でじゃれてる場合じゃないぞ。


「じゃあ杏花さん、また」

「榎本さんまた来てね!」


朗らかに笑うライオンを猫が引きずって行った。

あの二人、普段からああなのかな?

めちゃくちゃ癒されるんですけど…。


クッキーを美味しく頂いて、お会計を済ませる。

レジに立ってくれたのはネズミ耳の子だった。


「…あの、失礼ですけど柏くんとはどういう関係なんですか?」


思い切ったように顔をあげて、見つめられた。

おっと?この子はもしや?


「秀一くんとは親戚関係で、家庭教師なんです」


厳密には違うけど面倒なのでそういうことにしておく。

安心させるように微笑んで答えると、ネズミちゃんは「家庭教師…。そう、ですか…」とつぶやいた。

わたしもしかしてライバル認定されそうになってる?

バカな、10も年上のオバちゃんだぞ?

お肌も君みたいにピチピチじゃないぞ?


微妙な沈黙に困っていた時、横から「佐々木さん、ちょっと来てー」という声がかかり、ネズミちゃんは取り繕うように笑って頭を下げた。


「すみません変なこと聞いて!ありがとうございました」


いえいえ。色々ごちそうさまでした。




だいたい文化祭も見終わったので帰ることにする。

秀一くんに挨拶していこうかなと思ったけど、忙しそうだったのでやめておこう。来週また会うしね~。

あ、でも写真撮っておけば良かったな。美少年の猫耳ウェイター姿…。高く売れそうだ。


帰り際、廊下の向こうに鳥海先生がいたので会釈して挨拶をした。

鳥海先生も気づいて頭を下げた後意味ありげに微笑まれた。

ん?あれはどういう意味の笑みだろう?

わたしが目をそらした後も見つめられていた気がする。

…気のせいかな?


いや~、それにしても文化祭!楽しそうだったなあ。いいねえ。青春だねえ。

後夜祭はさらに楽しいんだろうな~。誰かに告白されちゃったりして!


来週話を振ってみようかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ