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本編②の1「今、そして時は進む」

 こうしてマキナの村は守られた。傭兵団は数で教戒騎士団に勝り、更に相手の居場所をこちらは知っていて、更に現場指揮官の不在時に奇襲受けたのだ。大樹の決闘から数十分後には、幹部騎士の首は村の前に晒されることとなったという。


 以上の事を、大樹は話した。その言葉はゆっくりと、都合の悪い事は一切かくして。簡潔に。しかしそれを話し終わる頃には、マキナはすっかり寝息を立てて寝入っていた。


「それで、その後どうなったの?」

「ああ、俺はスキルが大きく成長した。魔法防御貫通の槍も、制約の呪文もその一つだ」


 そう言って大樹はタブレットを取り出す。


「なが~いご高説ご苦労様~」


 キュウはタブレットを通しいてか、大樹の話を暇つぶしに聞いていたようで、そう言うといつも画面を表示させた。


~ウィークリーギフト~



「身体能力強化(乙4)」

・・・手軽に身体能力が上がります。便利です。ですが刃物はしっかりと刺さります。貴方は無敵ではありません。


「毒耐性(最強)」

・・・あたり能力。貴方の血液は今後どのような毒・気にも屈しません。(注意:血がとても苦くなります)


「火炎放射LV4→5」

・・・火炎放射を口から行えます。使うとお腹がすこしすくので注意


「変化魔法LV2」

・・・花を剣に変える事が出来ます。剣も花になりますが、一度花束に帰るとしばらく元に戻りません。使用すると気に発光します。


[付与魔法LV3→5]

・・・武器に魔力貫通を付与します。付与には一日かかり、また効果は一回のみ。効果は3秒。更に武器が魔力に命中しなかったり、対象が死亡しなければ、この魔法は二度と使えなくなります。

[制約魔法LV最大]

・・・おばあちゃんの世代に流行った古い呪術。制約内容を唱え、キスする事で制約の契約を結べます。「制約呪文開始」から呪文発動で、相手が呪文と内容を理解し、相違ないと言うと成立。ただし、愛は重いのです。貴方の存在が脆いと、砕け散るかもしれません。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その画面を見ると、直美は思わず泣き出した。


「なんで泣いてるんだ?」

「文明の力が懐かしくて……」


 そう言っていると、マキナが寝ぼけ顔で起き出す。


「なんだ?女の子泣かせちゃいけないぞ?」

「マキナ、お前はもう寝ててくれ。俺の話にお前が出る前に寝ちまいやがって」

「うるさいな。お前は話が下手なんだよ」


 そう言って再びマキナは眠りこける。


「私は大体分かったからいいわ」

「ならよかった。まあその後は簡単だ。それから各地で戦闘しながら、ジェレマインの戦争の話と異世界の勇者の話を聞いてな。作戦練りながら戦って今日に至るわけだ」

「で、マキナとキスはいつしたの?」

「ウ……」


 大樹は黙る。レベルアップ時に新しく出来た制約の呪文を見つけ、丁度その場にいたマキナその後成り行きで。とは口が裂けても言えない。しかも酒に酔った勢いで、半ば結婚のような体を成していたとは言えないのだ。


「はあ。でだな。今から村に帰るわけだが、お前も神様に会ってもらうぞ」


 大樹は話をすり替える。大樹は自分の恥ずかしい話題に合えて目を向けさせて、本当に言いたくないことを守りきった。

 実は大樹が最も話したくない話題は、薬により直美の寿命が大きく削れていることだが、それにについては一切触れなかったのだ。

 この場で彼女の精神を痛めつけてもどうにもならないことは知っていたからだ。


「神様か。いったいどんな感じなの?」

「さっきも言ったが真っ暗で何も見えなかったよ。存在階級が低いと、目で見ただけで死ぬかもしれないんだと」

「それに会えと?あと存在階級ってなに?」

「存在階級については俺もよく知らない。偉業を成し遂げたり、えらくなったりすると上がって、それが高いと神様とタメ口で話せるらしい」

「ふ~ん」

 大樹は話し終えると、体が固まったような錯覚を覚える。

 そのため、それをほぐそうと、少し見回ってくると言って馬車を下りた。

 周囲はもう夕暮れ時に近づいており、少し冷たい風が吹く。


「ねえ。大樹。あなた彼女の寿命の事伝えなくていいの?」


 先程のやり取りもあってか、キュウが大樹に話しかけてきた。


「今は良いだろ。お前の上司なら何とかしてくれるだろ?」

「まあ、契約次第ではなんとでも。でも神様が彼女を気に入るかは別問題よ?」

「そうか……」


 大樹はそれ以上聞かなかった。自分の命すら危ういのだ。存在階級をあげるという、無茶な課題をこなさなければならない。偉業を成し遂げる。王になる。そんな話は今だ大樹から程遠かった。この数ヶ月、これだけ頑張って傭兵団の影のボスだ。これは大健闘と言っていいが、それでもゴールは程遠い。


「次何するか。エルとネーアと相談だな」


 大樹がキュウに言うともなくそう呟くと、丁度隊列が足を止めた。戦闘がやけに騒がしく、隊列全体に騒ぎが広がる。


「ダイキの旦那!!ちょっと来てください」


 先頭の傭兵団員がそう言うので、大樹は直ぐに最前列へと向かう。野営には少し早い。


「おいおいどうした?」

「いや、あれ見てください」


 そう言って傭兵団員は未知の先を指差す。すると、そこには大量の人、人、人。大量の人間が、道の反対側からやってくるではないか。しかもその人間達は一様に暗い表情をし、その装備も大概に、けが人も多い。兵隊も一般市民も混合の列が、道を一直線の線にしていた。


「おいおい……!?」


 そして、その姿に大樹は見覚えがあった。赤を基調とした布を纏った兵隊。それは大樹の村のある国、アラージムの騎兵隊の物だ。


「全員隊列なおせ!!」


 騒ぎに気付いたのか、急いで馬に飛び乗ったマキナが、傭兵団を整えようとする。


「マキナ!あれを見ろ!!」

「あれは……アラージム軍の歩兵隊か!?」


 マキナはそれを見て青い青をする。そう、気の弱い婦女子がこの光景を見たら、恐らく気絶する事だろう。実際、その場で崩れ落ちる傭兵もいた。大樹と共に村の騒ぎを収め、教会騎士団と戦った、ノルドやジーク達がその例である。


「アラージムに何が……?」

「いや、最悪の事態を考えるべきだ。早馬で俺だけでそるねーや村に向かう!」


 自分たちの拠点のある場所から、敗残兵や難民が列になって此方側へ来る。それはつまり、マキナの故郷が有るアラージムが何者かに侵略を受け、なおかつ負けたことを示していた。


「大将!!俺も!俺も連れてってくれ!!」


 大樹の声を聞いたのか、ジークが大樹とマキナの前に走り出た。


「ジーク。いや、古参はマキナと共に此処へ残ってくれ。今から何が起こるか解らない」

「そんな……」

「いや、大樹のはんだ名は正しい。でがな、お前ひとりと言うのは……」


 マキナも大筋では大樹に賛同していたが、彼女も一緒について行きたいらしい。


「じゃあ私が。行きます」


 三人の後ろ、止まった馬車から降り出た直美が、そう言って話に割り込む。


「お嬢ちゃんがか?」

「ええ。私は魔法使いです。治療魔法と強化魔法を加えれば、馬の速力と体力を上げれます。それで今から急げばもっと早く村に行けると思います」

「そうかわかった。じゃあ大樹と直美は村へ。私達は、近くの村で情報収集を行う」

「じゃあ頼んだぞ!」


 そう言うが早いか、大樹は自分馬に乗る。


「あ、私、馬に乗れない」


 そう言った直美を後ろに乗せて、大樹の馬は走り出す。その速度は直美の魔法によって強化されており、馬自身も自分のそこからあふれ出す力に酔っているようである。


「クソが。これまで上手くいってたってのに!」


 大樹のいら立ちは直美に十分に伝わった。それでも彼女にはどうする事も出来ない。

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