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本編12「決定、賞賛のある戦い」

 まず最初に探すのはネーア。そしてエルに早く会う必要がある。


「ネーア!!」

「大樹さん!?」


 村人となにやらネーアは、血相を変えて走ってくる大樹に驚いている。


「大変だ。今すぐエルの所へ連れて行ってくれ!」

「いきなりですね?え?キャアァ!」


 大樹は話す暇が勿体ないとばかりに、ネーアを無理矢理抱え上げると、そのままエルの居る森へと走る。


「どうしたんですか一体?」

「傭兵団の一部、もしくは大半が敵に寝返った。それでマキナが敵に捕まった」

「そんな馬鹿な!?」


 やはりネーアでも信じられないようである。

 こうした場合どうすれば良いのかは知らないと言った顔で、茫然自失状態だ。


「今からネーアには色々やってもらう事になると思う」

「色々……?」


 ネーアが具体的な内容を聞く前に、二人は森に到着した。


「え~と下してください」

「ああ、すまん」


 ネーアは大樹から降りると、森の道を器用に抜けていく。二回目の大樹には、この変幻自在な森をどうやってな受けるのか見当もつかない。


「おッ?ネーアに大樹か。なんだか久しいな」


 入口で主人を待つ犬のようこちらを見つめていた。


「エル!今から忙しくなるぞ!!」

「なんだ?もう王様にでもなったのか?」

「冗談じゃない!今から外に出るんだよ!!」

「「え!?」」


 エルとネーアは同時に大樹の肩を掴むと、信じられないと言った顔で見た。


「本当だ。エル、傭兵団の一部が教戒騎士団に寝返った」

「それだけではありません。村長の家系のマキナさんが人質に」


 エルは添えれを聞くと、ただ目を白黒させている。


「だから、今からわかりやすく神の御業をお前に見せてもらおうとな」

「私は神様じゃないんだから。そう奇跡なんぞ起こせるものではないぞ?」


 そういうと、大樹はずるがしこく笑う。さながら悪魔のように。


「そこはなテクニックだ」


 大樹の世界では、数多の神が崇めら得ていた。そのうちいくつかは直接的な奇跡(テクニック)で、大量の信者を意のままに動かしている。彼はそれの応用をするつもりでいるのだ。


「まず、ネーア。お前巫女だろ」

「ええ」

「じゃあこの国のを基準に、エルを出来る限り飾り立ててやってくれ」

「飾り立てる?」

「そうだ」


 エルが今司祭だと言うのなら、これを機会に偽りの神に仕立て上げる。それが大樹の閑雅だった。実は昔、彼の家族がこの手法で大損しているのだ。何御準備も知識もない村人相手ならば成功する確率は十分にある。


「次にこれだ。これをこうする」

「う~ん?そうすとどうなるんだ?」

「いやな。こうすると皆こう動くだろ?」

「はあ」

「で、こうするんだよ!」


 大樹は早口に、しかし確実に決まるように、二人に話し始める。それはこれから巻き起こる、一連お話を終結へ向かわせる。こちらの世界では大昔に流行った手法だった。



 その日の昼過ぎ。大樹は準備が一しきり完了したのち、村はずれのエルの森の近くに、ジークとノルドと彼らの部下を集める。

 そしてエルとネーアが森から出てくる。ただ出て来ると言っても、ただこの場に顔を出すのではない。

 エルは真っ白な仮面に、色とりどりの大量の宝石などの装飾品を手足に付けて、ネックレスに腕輪と、身に着けられるすべてを纏っている。更になぜあの場所にあったのかは解らないが、黄金色のメキシコ風のポンチョを着ている。


「なんとも……何とも神々しい。貴方様がエレオノーラ様か……」


 人の目を引くには宝石と金。それは当たり前、定石。更に祭り用のような神輿もどきを、エルの部屋のベッドを簡単に改造して作り上げると、それを4人の傭兵たちにその四隅を担がせて、その上にエルが鎮座した。


「ダイキ、これでいったいどうするというんだ?これじゃあエレオノーラ様を取ってくれと言わんばかりだぞ?」

「いや、それでいい。エレオノーラ様を軽んじて、教会騎士団側に寝返った愚か者に、神の御業を見せてやる!」


 大樹はわざと演技するように仰々しくそう言うと、神輿に合図を送る。

 いつの間にか、此処にはジークやノルドの部下たちも、神殿騎士である大樹のいう事を聞いていた。


「おっと、忘れていた。これを」


 次に大樹は、傭兵の人数分の、真っ黒な布袋を配る。それは目の部分の穴だけが開いた、酷く単純な作りだったが、それを被った傭兵たちは、一気に不気味そのものになる。


「全身。目標村長家の前!」


 大樹がそう言うと、傭兵団改め、謎の集団はゆっくりと前進を始める。

 大樹と残りの残りの傭兵たちは、各自持ち寄った派手な武器、楽器、たいまつなどを手に持って、しかし隊列だけは綺麗にして後を付いてくる。

 こうして立派な儀式が成り立つ。これが第一段階。


「村長、それではそう言う事ですので」

「わかった。まさかエレオノーラ様がこの場所に来なさるとは……しかもこのタイミングでか」


 大樹が儀式の準備を済ませている時、ネーアは村長に言って、エルがこの場所へ来ることを告げた。

 村長は非常に驚いたものの、何かこの状況を打破する策があると言うと、それを止める事は無かった。


「では皆よ。今日は良い知らせがある。その為に皆に集まってもらった」

「いったいなにがあるっていうんですか?」


 わざとらしくない最低限の領域で、ジークの妻が村長に質問する。


「聞いて驚くな!今日この場所に、エレオノーラ様がいらっしゃる!!!」


 村長がそういうと、一瞬でその場にいた全村人と、アルスターを含めた傭兵団の連中はこれ以上ないと言うほどに動揺する。


「そんな馬鹿な!!」

「本当じゃ、これは今代の巫女であるネーアの言葉だ」

「そうです!」


 ネーアは村長の隣立つ。その姿は、昨日彼女が恥ずかしがっていた巫女服である。


「ネーアが言うなら本当なんだろ」

「そうかでもなんで今……」


 それでも釈然としない。そういう顔をしている村人たちを見て、ネーアは待機しているあろう大樹たちに合図を送った。


「では、あれをご覧ください!」


 ネーアが指を村はずれの、エルの森がある方向に指差す。

 すると、待っていたかのように低い太鼓の音が聞こえ、遠くから整列した足音が気負えて来た。


「何なんだあれは!?」

「わからない……」


 村人たちは口々に驚嘆の言葉を上げる。

 そこには、顔を隠した屈強な男達が担ぐ神輿に鎮座する、仮面を付けた女性が居たのだ。


「皆の者!!跪け!!エレオノーラ様、御光臨である!!!」


 大樹が絶妙なタイミングでそう言うと、村長とネーア、そしてジークやノルドの妻たちが真っ先に跪いた。それにつられるように、残りの傭兵と村人達も跪く。


「よろしい」


 大樹がそう言うと、大樹の後ろにいた者達が一斉にその場にいた者達を囲う。


「私は神殿騎士として勅命を受け、この度エレオノーラ様をこの場にお連れした。聞けば近頃彼女を売ろうとする不心得者がいるとか。今日はそのような馬鹿者に、神の力を魅せる!!」


 村人も傭兵も、全ての人間が大樹の顔を見ることは叶わなかったが、もし顔を上げたならば、大樹はひどく歪んだ笑顔を見る事が出来ただろう。


「全員、顔を上げよ!!」


 顔を厳めしいくなおすと、大樹はそう言う。周りの者達がゆっくりと顔を上げると同時に、エル腕を上げて、村長宅前の森を指差す。

 すると、その部分の森が爆ぜた。

 オレンジ色の閃光に轟音。噴き上げる熱風。上空にキノコ雲が浮き上がると、辺りの木々は揺れて、木くずやほこりが周りの皆の元にまで降ってくる。


「ひやああ!」

「なんだ!!」


 村人や傭兵たちは思わぬ衝撃に腰を抜かす。アルスターさえも、思わず間抜けにも口を開けたままだ。


「見たか!これこそがエレオノーラ様の、神のお力だ!!」


 本当の所は、向こうの世界で大樹が腰に巻いていたプラスチック爆弾を、山の中腹、丁度山火事にならなそうな絶妙な一角に配置して起爆させただけだが、それでも爆弾を知らない村人には十二分に奇跡だった。

 しかもこれは攻撃的だ。愚直なまでの直接的な衝撃。もしもこれを何度も繰り返す事が可能なら、この世界の城など紙切れのように粉砕できるだろう。

 そのことに、周りの人間。特に寝返った側の人間にはどう映っただろうか。自分達が金やその他の物品・特権という餌で売ろうとした神、敵に回そうとした神は、敵に回してはいけない者だったのではないか。


「これぞエレオノーラ様の御業!!」

「エレオノーラ様万歳!!」


 衝撃に驚きながらも、サクラであるネーア達は、口々にネーアを称賛する。そして賞賛の波は、周囲に伝播し、大きな波となった声援が、エルの周りを支配した。


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