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本編11「準備、エルのもとへ」

 それから大樹は出来る限り最高の速さで馬の所まで戻ると、そのまま勢いて馬にしがみつき、村のある場所まで戻る。


「おいどうしたってんだ?」


 道中別働隊に声をかけられたが、無視する。もしかしたら別働隊も向こう側かも知れないからだ。今現在信用できるのは、村にいるエル、ネーア、村長、村に親戚の居る幹部の傭兵だけだ。

 そして村へと大急ぎで入ってきた大樹を一番最初に見つけたのは、年季の入った防具に幅広の斧を担いだ、相撲取りのような体系の男。


「どうしたそんなに急いで?何かあったのか?」

「あなたは、あなたのなまえはなんですか?」

「俺か?俺はノルド。ノルド・シンクレー」


 ノルド。そう、この男こそ、今回頼れる数少ない見方だ。


「貴方はこの村の人が親戚に居る、傭兵団の幹部ですね?」

「なんだいきなり?確かにこの村のジョゼは俺の嫁で、息子も三人いるが?」

「ならよかった。急いで話したいことがあります。もしあなたと同じ境遇の人、ジークと言う人がいるなら、急いで一緒に連れて来てください!」


 大樹の必死さに尋常ではない状況を察知したのか。ノルドは、小さくうなずくとその巨体に似合わない速さで走ってゆき、直ぐ近くで剣を研いでいた、身長の高い頬のこけた中年男を引きずってくる。


「なんだいったい?まず要件を話せ!」

「いいから来い」


 そう言って連れられてきた、恐らくはジークと言う名のこの男は、自分御日課を邪魔されて酷く憤慨していた。


「それ所じゃないだって?この村がもう直ぐ王国軍の襲撃でもされるってか?」

「とにかく、まずは誰かの家に案内してください。奥さんが村の人なら家があるでしょ?」

「ずうずうしい奴だな」

「そういうな。どうしてもな急ぎらしいんだ」


 ノルドの鶴の一声で、ジークも渋々頷くと、剣を研いでいた場所のすぐ近くにある、小さな家を指差す。


「あれが俺の家だ。入るときは足ふけよ」


 そう言われて3人はジークの家に入る。そこでは丁度部屋の掃除をしていた、彼の妻がいた。


「あらあんた。お早いお帰りだね」

「違う。今日は臨時会議だ。どうしてもこの家を暫く密談に使いたいそうだ」

「へ~。あたしは出てったほうがいい?」


 ジークの妻がそう言うと、ジークとノルドは大樹の方を向く。


「いえ、村の日との意見もぜひ欲しいです。できれば聞いてください」

「へ~。こういう場面で私居ていいの」


 意外そうな顔をした彼の妻は、あまり気遣わずに掃除を再開した。


「それで、本題ですが。貴方がたの傭兵団の何人かが、向こう側。教戒騎士団側についてます」

「「なにいい!!」」


 その声は家の外まで聞こえただろう。それくらいの怒声が家を支配した。


「そんな馬鹿な!?」

「老兵。マキナの教官をしていた人が、教戒師団の連中と話しているのを森で見つけました」

「老兵、バギンズの爺さんか!?」


 ジークの声に大樹はうなずき続ける。


「それにマキナは向こう側につかまりました」

「そうか……まあバギンズの爺さんならマキナを殺す事は無いだろうが」

「いや、どうかな。まさかくそったれの教戒師団に媚びるとは……」


 彼らにしても、今回の事はよほどショックだったようで、二人は暫く動かなかった。


「それで、マキナと別れる際に、あなた達の事を教えてもらったんです」

「お前は一人で逃げかえって来たという訳か?」

 そう言って大樹に掴み掛ろうとするジークを、ノルドがとめる。

 それでも止まらないジークを後ろからげんこつで殴ると、彼の妻が話に加わった。


「それなら大変な事になるね。少なくとも傭兵団開設以来の危機ってやつだね」

「何を呑気なこと言ってやがる。むこうがわのかずによっちゃ、今攻め込まれても則負けだぞ!?」

「……いや、それは無い」


 大樹はその言葉を否定する。それは確固たる根拠があっての事。


「数の差で有利。攻め側で有利。二つ有利を持ちながら、まだ攻めてこないという事は、何かまだ足りないファクターがあるはずです」

「ファクター?」

「えーと、要因、と言う意味です」


 翻訳魔術をもってしても、大樹の英語や外来語の類は伝わらないらいい。


「わかった。じゃあ俺たちは、特に信用できる奴。具体的には俺の部下と話をつけてくる」

「俺もそうしよう。直属の部下なんて家族みたいなもんだたからな」


 大樹は考えたが、今はとにかく味方が多い方がいい。

 マキナが捕まった今、敵が強硬手段に出ないとも限らないからである。


「ではくれぐれも奇襲に気を付けて。念の為奥さんは何処か避難場所のような所……ネーアと村の人を先導して、エルの森に……いや、教戒師団の目的はエルなのか……」

「え~と何だい?教戒師団はエレオノーラ様を攫うのが目的だってのは聞いたよ?じゃあ守るべきは村や私でなく、エレオノーラ様だろうに」

「それは……」

「あんた神殿騎士様なんだろ?しっかりおしよ」


 ジークの妻は、見かけどおり押しが強い。

 大樹は当初、村人全員を避難させ、村で戦おうと考えていたが、なるほど、エルは見たところ神様扱いはされていたが、それは真の神格ではなく、もっと土着的な司祭に近い何かだと言う事に、初めて大樹は気が付いたのだ。


「そうですか。解りました」

「え?何を?」


 大樹は顎に手を当てて考えていたが、そう言って立ち上がった。


「ひとまず集めれるだけ人を集めて、それで教戒師団の野営地を攻めましょう」

「でも人質のマキナがいるだろう?」

「そこは上手くやります」


 大樹はこの時秘策を思いついた。それは全くの偶然。原因は、元の世界で見たファンタジーだ。


「じゃあ俺たちは今すぐ仲間集めていいんだな?」

「ええお願いします」


 そう言うと、早速準備に取り掛かるべく、大樹はジークの家をとびに出した。


スピード感が出てきました。

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