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本編9「警戒、そして乗馬訓練」

翌朝、大樹は村長の家の前にある広間に呼び出される。彼にとっては村では朝食の存在がないという事がとても以外で、慣れない空腹感を感じながらの参加となった。


「では集まってもらったのはほかでもない。大樹殿が席を外されてから、我々は本格的に考えをまとめたんじゃ」

「それであんたには警戒隊に入ってほしい。何せこんな田舎じゃ若い男は貴重なんだ」


 大樹の周りには数人の男がいたが、それは全て村の人間ではなく、傭兵だった。塔の村人たちの大半は、畑仕事に出かけている。彼らにとってはそれこそが生きる糧である。

 大樹はそれに納得したわけではなかったが、大樹はなんとなくその場の空気を察しすると、依頼を快諾するふりをする。


「大樹さん~おはようございます」


 ネーアも村長の隣にいるようで、その姿は今日も村娘の格好。

 今だその恰好になれて意に大樹は、思わず視線が胸に行ってしまう。


「良く眠れましたか?」

「ああなんとか。それより今日から村長の依頼でこの村の周辺を警戒する事になったんだ。それで聞きたいんだが、この村の大体の地形を教えてくれないか?」

「地形ですか?この村は四方を山々に囲まれていて、細い道が幾つかあるだけです。周囲の山を越えてやってくるなんて大部隊で不可能ですし、小規模の盗賊のような人ならば、村の中にいる傭兵団で対処が出来ました」


 秀才よろしく眼鏡のズレを直しながら、淡々とネーアは地形について語る。


「わかった。じゃあその細い道にそって道を行き来すればいいか?」

「ええ。山を越えて来た斥候を見つけるなんて無理ですし、現状ではそれが最善です。それよりも疲れが顔に出ていますね?薬を母さんから貰ってきましょうか?」


 大樹がその理由が空腹だと言うと、きっとネーアは大笑いするだろう。そうわかっていたので、大樹は色々あったのだとお茶を濁し、そそくさと装備をまとめてると、ネーアの指示した細道へと向かうのであった。


「おいダイキ。こっちだ」


 それから大樹が向かった先は、村長宅から歩いてすぐの村の外れ。

 丁度下界へと繋がる細道の入り口で、パンをかじりながらマキナが待っていた。彼女は慣れた風に茶色の毛並が美しい軍馬にまたがっている。

「やあダイキ。今日はよろしく」

「ああよろしく」

 馬は大樹の顔を一瞬だけ見ただけで何も反応を示さない。よく訓練されている。

 初対面こそ、敵の騎馬部隊と言う不運に見舞われたが、ダイキ個人としては、このしなやかな筋肉に包まれた四足動物に、並々ならぬ興味があった。


「すごいな。馬って。改めてみるとこんなに大きいんだな」

「まるで馬を見たのが初めて見たいな言い草だな。この子は何処にでもいる種類だけど?」

「いや、当たってる。今まで俺は徒歩で生活してきてたし、故郷ではあんまり馬を使ってなかったから。ちゃんと馬を見るのはこれが初めてなんだ。触ってみてもいいか?」


 どうぞ。そうマキナに了承を得て、大樹はゆっくりとマキナが跨る馬に指を近づける、多少の代え異界はあったが人慣れしているようで、この馬も大樹が触る事を許す。

 その毛並みは存外に硬く、下の皮膚は暖かさと躍動する筋肉を感じる事が出来る。時速何十キロという速度で走る事の出来る陸上生物とは、鍛え抜かれたアスリートのような、洗練された雰囲気を持っていた。


「今朝聞いた話じゃお前は博識の貴族もどきらしいが、馬も触ったことがないなんて。田舎者どころじゃないぞ?」

「まあな。偏った育て方をされたんだよ」

「ずっと机に向かっていたとでも?」

「いや、それに近い」


 大樹とマキナは歩き始める。馬は大樹の波長に合わせてゆくっりとした動きで歩き、その優雅さはまさに野生の美そのもの。


「じゃあこれからは馬に乗る練習もしなくちゃな。この辺りじゃ馬に乗れない男は一流の戦士じゃない」

「そんなに馬がいるのか?」


 大樹は戦争用の馬を維持するのはとても大変だと考えていた。しかしマキナの言い方では、まるでこの世界に馬が溢れているとでも言いたげである。


「馬ってそんなにいるのか?飼うの大変だろ?」

「ああ、ここアラージムは馬の聖地なんだ。野生馬が訓練なしでそのまま使える。それに大規模な馬商人が幾人もいて、国の騎馬部隊も周辺で最強と言われてるんだ」


 馬とは通常、馬自身にある程度の世代を越えた熟練が必要だと考えていたが、実際は野生馬でも普通に人になつくと言う、大樹の世界では凡そ寝物語以上に嘘くさい話だ。

 そんなあからさまに驚いた大樹の顔を見て、ネーアは馬を止める。


「まあ疑うならこの馬に乗ってみるがいい」

「いや、蹴り飛ばされるのが落ちだろ」


 嫌がる大樹を無理矢理馬の上に乗せようと、マキナは腕ずくで大樹を持ち上げる。大樹の体重は、決して同年代の女の子が安々と持ち上げる事の出来る様な物ではないのだが、彼女は軽く大樹を持ち上げると、そのまま上に放り投げた。


「うわッっと!」


 何とかバランスを崩さずに、馬の上に着地できたのは、もちろん身体能力を強化しているお蔭。馬は突然背中に掛かった重量に少しだけ驚いたような声を上げたが、それで暴れ出すと言う様子はなかった。それどころか早く手綱を握れと言わんばかり、振り返って大樹を見ようとしている。


「上手い上手い。じゃあ次は手綱を握って、そのまま足で腹を優しくけってやってくれ」


 大樹は言われた通りに両の足で馬の腹を叩く。

 馬は待ってましたとばかり、先程と同じぐらいの歩くような速さで足を進める。


「すごいな。こんなに視線が高い」

「だろう?それが戦う時には何よりの利点になるんだ。機動力もそうだが、私はこの高さこそが戦場で歩兵との決定的な差だと考えている」


 マキナは大樹が取り敢えず落馬しない程度には馬を紀子のなしていると判断し、そのまま馬の尻を持って飛び上がると、大樹の後ろに乗った。


「こうすれば二人でも大丈夫だ」

「え~と、でもこの状況だと……」


 そう、この状況ではマキナの体は大樹に密着させなくてはならない。今回は偵察という事もあり、軽い皮の防具を体の要所に纏っていること以外は至福と変わらない為、マキナの体の曲線のそのこと如くが、大樹の背中に当たってゆくのだ。


「なんだ?どうかしたか?」


 マキナはそう言って気づかないふりをしていたようだが、大樹の後ろにあるその顔は火がついたよう。しかし彼女にも何らかの目的があるようで、一身になって大樹に抱き着くと、変な声を上げた大樹を無視して馬のスピードを上げた。


「ちょっとおい!?」


 急な加速と背中の柔らかい感触に焦った声を出す大樹。そしてその声を更に活力にするように足る馬。マキナの思いを乗せたそれは、偵察域を通り越して、一気に村の外へと駆けて行った。

予定外投稿w

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