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本編8「マキナ、この子は可愛い」

 村の歴史を語るマキナはいかにも楽しそうであった。代々この村の村長は兄が傭兵団で金を稼ぎ、弟が村長として村を守っていたらしい。傭兵団の先代の孫娘がマキナであり、リンダは弟の孫娘なのだ。だから彼女達は血のつながりはあるが姉妹ではないという、複雑な関係にあるという。


「だからお前はこうして剣の腕を磨いてるって事か」

「そうだ。私はいつか、少なくとも成人したら傭兵団に入るつもりだ。おじい様の言うように結婚する気はない」

「結婚させられそうなのか?」


 どうやらマキナもこの事で悩んでいるらしく、言葉を多少濁しながら頷く。


「団長のアルスターには会っただろ?あれが未来の旦那なんだ」


 マキナの言いようからも、現傭兵団長であるアルスターは村長の一族ではないようで、恐らくはマキナを嫁にすることで傭兵団と村の結束を高めようと言う物なのだろう。


「で、不躾だがお前は嫌なのか?」

「嫌って事はない。ただ、リンダがな。リンダがアルスターの事好きなんだ」

「じゃあお前が良ければリンダとアルスターを結婚させればいいんじゃないか?」


 そう言うとマキナは首を振った。事は大樹が考えるよりも複雑なのだと彼女の顔には書いている。そして少しだけ考えてから、マキナは大樹の耳にささやく。


「それは無理なんだ。アルスターは、アルスターはリンダの母親の弟、叔父にあたるんだ。村の風習でそれでは結婚できない」


 少なくとも大樹の世界よりも閉鎖的なこの村では、血が濃くなるのは禁忌らしい。ある程度以上の近親者の結婚を禁止するのは当然だろう。

 しかし当の本人であるリンダはそう考えてはいないのだろう。大樹は先程の事を思い出すと、段々とわざとらしい点を思い出した。彼女はきっと待っていたのである。大樹の存在が、会議で一瞬宙に浮いた瞬間を狙い、彼女はあの場に飛び出したのだろう。

 まさか親戚のマキナに、先程リンダに誘惑されて危ない所まで行きましたとは言えず、大樹はその話にうなずくと、咽そうになりながら残りのパンを頬張った。


 そのまま大樹は自分の生い立ちを都合の悪い内容は全て伏せた上で、マキナに簡単に話た。彼女の雰囲気からも質問攻めにするという事は無かったので、大樹は上手い具合にファンタジーを作る事が出来た。それはもう以降の自己紹介はこう話そうと、彼が思えるぐらいには上手い出来だった


「――――と、いうことなんだ。だから俺はどちらかと言うと戦士でもなければ魔法使いでもないんだ。どちらかと言うと放浪学者なのさ」

「放浪学者か。じゃあどこかの宮廷学校とかで教師にでもなるのか?」


 マキナは食後に大樹が飲んだことのない不思議な香りのハーブティーを飲みながらそう言う。

 大樹もとりあえず今の事以外はどうするつもりか考えていない。エルを外に出すためにはこの辺り一帯を牛耳る羽目になりそうだが、それ以前に眼前に迫る驚異、そしてそれよりも先程のような真意の解らない誘惑。今の彼には問題でないことなど存在しない。


「取り敢えずは身近な問題から解決していく事にするよ。それで聞きたいんだが、本ってあるか?」

「本?本か?やっぱり学者なんだな」


 マキナはそう言って笑った後、しばらく考えた。


「お前の所がどうだったかは知らないが、この村では本は貴重品だ。私が見た中ではネーアの家に薬の本が何冊かと、あとは私の家にある家系図の本ぐらいしかない」

「そうなのか。ならいい。ご飯御馳走様!」


 大樹は立ち上がる洞窟を出て嫌々ながらも村長の家へ戻る。こちらにも別れ際に手を振る習慣はあるようで、大樹が手を振ると、少しためらってからマキナも小さく手を振りかえした。

 そして大樹が洞窟の扉を開けると、帰りには何故か目が慣れていたのだ。それは洞窟の光の効果によるものらしい。


「外がこんな明るいはずないんだが……」


 大樹の目には昼間のようにとはいかないまでも、小石につまずかない位には暗闇で動く事が出来ている。

 大樹は洞窟を振り返ると、いきしには見えなかった洞窟のあと蛍光灯のような光が漏れているのがわかる。そして洞窟からは、訓練に戻ったのか、マキナの声が響いている。

 結局帰り道の間ぐらいだけ、この奇妙な目の変化を実感する事が出来たが、屋内の明かりを見た瞬間、その効果は失われたようだった。

 大樹は今日一日の疲れをしっかりと感じながら、今日あった数々の事をベッドで思い出しながら、一瞬で眠りに落ちて行った。

ちょっと切り方を間違えました。

読んでくれてるモノ好きのみなさんありがとう。

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