それでも好きだった
焼けた肌を惜しげもなく晒していた。
その香りは私の理性を奪っていく。
その体はつきたての餅のように戯れに伸ばした指先を跳ね返してくる。
もうがまんができない。
しかし、待て。
それが、どれほど私を苦しめているのか。どれほど高鳴る鼓動を抑えなくてはならなかったのか。涙を流しても、もう昔の私には戻れない。これ以上のめり込んでどうしようというのだ。
しかし奪われた理性は戻る気配もない。
私は舌先をのばす。
そしてその体にそっと当て、やさしく撫でるように動かす。
「にいちゃん。舐めたらあかんわ。もう、それ買うてやぁー。返品はきかへんさかいなぁ」
鯛焼き屋のオヤジが手を休めず仏頂面で言う。
またやってしまった。これのせいで基本体重よりすでに十五kgも超過している。生涯最強体重を更新し続けているというのに。
ええい、ここは大人買いだ。
「おっちゃん。焼けてんの全部な。とりあえずこれはすぐ食うわ」
「毎度ぉー」
それでも私は鯛焼きが大好きだった。