電話
それからといもの、お母さんは家事を少しずつし始めるようになった。
まだ安静生活を続けなきゃいけないのに・・・
でもやっぱり、しんどいらしく少し家事をすると、すぐに布団に入り横になる。しばらくするとまた家事をやり始める。それを繰り返すようになった。
私も、お母さんがするんやったらいいかな?と思うようになり、あまり手伝をしないようになっていく。
お母さんが退院して1ヶ月が過ぎた日。
その日も、いつも通り私は学校へ行っていて、4時間目の授業を受けている最中に、突然教室のドアが開いた。
クラスの皆も担任の先生も、驚いてドアを見ていると教頭先生が立っていて
「橘さんいる?」
先生が私を探しているようだったので
「はい。私です」
返事して席を立つと
「お母さんから電話が掛かっているから、すぐに職員室に来て」
そう教頭先生に言われて、嫌な予感がした。
教頭先生の後ろをついて歩き、職員室に入ると受話器を渡された。
私の手が震える。
「もしもし?」
小さい声で、かすれた声しか出なかった。
「由真?お母さんやけどな、また入院することになってん。今、病院やねん今日は家の鍵持って出てる?」
「うん・・・鍵持っているよ」
「そっかそれならいいんやけどな。・・・・ごめんな、由真あんなに頑張ってくれたのにな、また入院することになってしまって・・・」
「うん」
「お父さん帰るの遅いから、それまで家に1人になるけど大丈夫やんな?ガスは使ったらあかんよ、火事になったら大変やし。それから、玄関の鍵は忘れないように閉めてよ」
「うん。分かった」
「それだけ伝えたかってん。じゃ気をつけてな」
話を終え受話器を戻すと、ずっと側にいた教頭先生に
「橘さんのお母さんから『入院することになったので、授業中やと思うのですが子供と話せることできますか?』言われてな。お母さんはなんで入院したんや?」
それで私はお母さんが妊娠していること、春休み中にも入院していたことを話すと、教頭先生は驚いた様子だった。
「そうか、分かった。もう教室に戻りなさい」
職員室から教室に向かって歩いている途中に、涙が出始めた。
嫌々せんと家事もっとすればよかった・・・お母さんが家事せんでいいように、しなきゃいけなかったんだ・・・
右腕で涙を拭いて、教室にいる子達にばれないようにする。
教室に戻るとすぐに授業終了のチャイムが鳴っる。そのとたんに、クラスのほとんどの子が、私の机の周りに集まって
「電話なんやったん?」
「誰か死んだん?」
「由真のお母さん妊娠しているやろう?もう産まれたん?」
次々に聞かれて
「誰も死んでいないし、まだ産まれていない。もういいやん、ほっといて」
私が言っても、それでもうるさく聞いてきたけど、何も話さなかった。
学校が終わり家に帰ると、玄関の前でおばあちゃんが立っていた。
2回目の入院です。そしてようやく苗字が出せました。




