名前決定
お父さんがメールで神社へ赤ちゃん名前を依頼したその二日後の夜に、その神社から一通のメールがパソコンに届いた。
そのメールを開くと赤ちゃんの名前候補がずらりと書かれており、それぞれの名前に画数やその名前に込められている意味や性格が書かれてあって、テンションの高いお父さんと二人で見たんや。
そこには、しょう。せい。しん。と三つの名前が書いてあった。
「この三つの名前から選ぶってことなんやな?」
「そうやな。しょう太郎、せい太郎、しん太郎・・・どれにするかな。お父さんは、『しょう太郎』という名前が気に入ったんやけど・・・でもな、『翔』という漢字が書かれてないねん。苗字に合わなかった漢字なんやろうな、由真はどの名前でどの漢字がいいと思う?」
「私は『せい太郎』の名前の欄に書かれている漢字が一番気に入ったけど。この『清』という漢字な」
その漢字が書いてある場所を指差しすると、お父さんは唸った。
「うーん・・・『せい太郎、せい太郎、清太郎か』でもな『せい太郎』という名前言いずらくないか?」
「んじゃあ、『しん太郎』の名前にしてそこから選ぶん?」
「それもなぁ、『しん太郎』という名前にするんやったら『慎』の漢字がいいねんけどな、書かれてないねんな・・・『つつしむ』という漢字なんやけど」
「じゃあ、神社から送られてきた中には入っていないけどその名前付ける?」
「それはあかん!」
私は溜息を一つ吐き、書かれている漢字を一つづつ指差して「じゃあ、これは?」と聞くと
「それは漢字が古臭い」だの「その漢字もなんか気に入らない」だの色々言っていた。
これは、中々決めるのが難しそうやな・・・
お父さんはパソコンの画面いっぱいに書かれている名前を見ながら、頭を抱えている。
「せい太郎は止めるとして、しょう太郎か、しん太郎にするかまでは絞れたんやけど、漢字が・・・・」
「どーすんの?」
「そうやなぁ、取りあえずこれプリンターでコピーして明日、お母さんに見せて決めようか」
さっさとコピーして、印刷された紙を見ながらまだ名前を考えているお父さん。
名前どうなるんかな。
翌日はお父さんが仕事から帰ってから、一緒に病院へ行ったんや。
お父さんは病室に入るなり、すぐにお母さんに赤ちゃんの名前が書かれている紙を渡した。そしてその紙をすぐに見だすお母さん。
お母さんの病室には、いつもいるはずのあーちゃんがいない。
「あれ、あーちゃんはどうしたん?」
お母さんはお父さんから渡された紙から目線を外すことなく、私が聞いたことに答えてくれた。
「あーちゃんな、黄疸が強く出て今日のお昼から光治療してるからその機械に入ってんねん。母乳をあげる時しかその機械から出すことできないし、しかも一回の母乳を飲ませる時間も30分って決まってんねん」
「新生児室に行けば、あーちゃんに会える?」
「それも無理やねん。その機械からできるだけ出さないようにしているから、あーちゃんを見に人がこられても合わせることができないとも言われているし、その機械じたいが他の人にも見られないような新生児室の、端に置かれているからな。光治療しているあーちゃんは、両目に光が入らないように目を覆うものを貼られてんねん。その姿はまるでロボコップみたいに見えたから少し笑ってしまったけど、黄疸が他の赤ちゃんに比べて少し強いだけやから、何にも心配せんでいいよ。あーちゃんは元気にしてるで」
確かに他の赤ちゃんと比べて、あーちゃんの肌が濃いように思えたけどそれのせいやったんや。
「後二日後でお母さんは退院するんやけど、退院する日の午前中にあーちゃんの黄疸の数値を調べるんやって、そん時の数値によっては、あーちゃん退院できへんかもしれないらしいわ」
「えっ?!じゃあお母さんだけ家におって、あーちゃんはまだこの病院にいることもあるってことなん!?」
「・・・そうなる場合もあんねんて」
ショックや・・・
お他紙のショックが大きすぎて何も言えないでおっても、お父さんもお母さんもいつもと変わらない。
「えー、この中から名前決めるんか?」
お母さんがあーちゃんに付ける名前のことを言いだした。
「で、お父さんはどの名前が一番やと思ってんの?」
「『勝』という漢字がその中では一番かなと思っている」
「そうやな・・・『しん』というこの紙に書かれている漢字の中では、いいと思うのがないな・・・」
「お前もそう思うか」
「うん。『しょう』太郎という名前で『勝』という名前がこの中では一番いいと思うで。由真はどう思う?」
「私もその中では、『勝』がいいと思う。・・・ってか今日、病院に来るまで『お父さんその名前にするんやー』何回言っていたか!」
「そうなんや。じゃあ、勝太郎に決定やな」
その日は名前が決まって、家に帰る前に新生児室に寄ったんやけど、お母さんが言った通り光治療中の勝太郎は見ることができなかった。
せっかく名前決まったのにな。




