待合室
お母さんに安静生活を過ごしてもらってから一週間後、検診日やからタクシーで一緒に病院へ向かった。
今、お母さんは診察中やから待合室で待っているんやけど、不安やし何より暇やから『ご自由にお取り下さい』と書かれているところから、ベビー用品のカタログとマタニティのカタログを数冊取ってきて見ている。
何これ・・・
楽しいんやけど!!
ベビー用品をレンタルできるのもあるし、ベビー服とか可愛いんやけど!!
私が買うわけじゃないけど、あーちゃんが使っていたり、服を着ている姿を想像すると、ほんまに楽しくて楽しくて、無事に生まれてきて欲しいと強く思う。
お母さんが入院するのは嫌やけど、可愛いあーちゃんのためなら、お姉ちゃんの私が我慢すれば済む話やし、無事に生まれるためなら入院しても仕方がないように思えてきた。
そのカタログを夢中になって見てると、私の真横に無言で座った人がいたから気になってチラッと横目で見てみると・・・お母さんやった。
「お帰り、どうやった?」
「あーちゃんは、一週間前と変わらない位置にいてるらしい、先週に比べて下がってきてないから、今んとこ入院はしなくていいんやって、引き続き安静生活するように言われたわ。でも赤ちゃんが下にいてることには変わりないから、次回も一週間後に検診なんやって」
お母さんがニヤニヤしながら手にしていた、エコー写真を私に渡してきた
「今回の検診で断言されたで、間違いなく男の子。ちゃんと男の子の証明が写っているやろ」
手渡されたのを見ると、ほんまにはっきりと写っていたよ。男の人しかない物が・・・
「ふ~ん。そうなんや、もうどっちでもいいねん」
お母さんにエコー写真を返すと、驚いていた。
「え?なんで、女の子が欲しかったん違うの?」
「ん?このカタログ見ていたら男の子の服も可愛いのあるし、別に女の子じゃなくてもいいかな~って思えてきてん。なぁこのカタログ持って帰っていいやろ?」
お母さんにカタログの表紙を見せる。
「家に同じのあるで、マタニティの服も何枚かそのカタログから買っているし」
「そうなん?」
「外出できないからお店で買えないし、でもマタニティの服は必要やから通販で買ってんねん。ベビー服や肌着は友達がくれるって言っているから、貰ってからどんなのを何枚買うかは足らへんやつだけを購入しようと考えているから、まだ選んでいないけどな」
「そうなんや、でもこのカタログ持って帰りたいな。私用にすんねん、見ているだけでも楽しいから」
「無料やから別にかまへんけど・・・」
お母さんの許可が下りたから、自分の鞄にカタログをさっそく入れた。
「でも知らんかった。マタニティの服を通販で買っていたなんて・・・てっきり、おばあちゃんから送られてきた服の中から着ていると思ってた」
そうなんや田舎のおばあちゃんから、お母さんが妊娠五ヶ月入った頃に、大量の服が入った荷物が送られてきた。
それは、私がお母さんのお腹にいてる時に着ていたマタニティー服と、私が使っていた新生児用のベビー服や靴下やったんや。それと、おばあちゃんが勤めている会社で妊娠、出産した人から『もういらない』と言われて貰ったマタニティー服も何枚か入っていた。
「ああ、あれな・・・由真も見たやろ?十二年前のマタニティの服は全部ワンピースやったやんか、今はそんな服着ている人おらへんで、それに貰った服は季節がちょっとずれているから、着れるのが少なかってん。マタニティのパジャマは使えるから買わんかったけどな、でもお母さんはずっと安静生活やからマタニティ服着るのは通院ぐらいやし、二、三着しか買わんかったけどな」
「じゃあ、あの新生児用の服はどうするん?」
「あれもな・・・ほとんどほかすと思うわ。ほとんどピンクばっかりやんか、白い肌着もあるけどミルクを吐りして真っ黄色やったし、それ着せるのはなぁ・・・」
「確かに、汚い服がほとんどやったな。」
「そうやで、誰かさんはミルク飲んだ後、中々ゲップしてくれへんかったし、したとしてもゲップと同時に飲んだミルク全部吐いたりしたんやで、お母さんが着ていた服も、ミルクでベトベトになったこともあるし、大変やったな」
「赤ちゃんて皆そうなん違うの?」
「上手にゲップする子もいてるよ、今度生まれてくる子はゲップを早くしてくれて、ミルクを吐かなかったら楽なんやけどな」
お母さんが言うと、お腹がボコボコ動くのが分かった。
赤ちゃんが大きくなるにつれて、お腹を触らなくても動いているのが分かるようになって、最初見た時は気持ち悪かったんやけど、今ではすっかり慣れてしまった。お母さんのお腹を触っている時に、あーちゃんの手か足か分からんけど、出てくる時があるんやけど、そん時は出てきた部分を掴んだりして遊んでいる。
「あーちゃんが、『僕、ちゃんと上手にゲップするよ』って言ってんねな」
お母さんがお腹を見ながら言った。
「違うで、『僕、ゲップ上手にできないかもしれないよ』って言ってんねんや」
私が言うと、お母さんは嫌そうな顔をしたから、それを見て笑った。




