入院
車でお母さんが入院している病院に向かっている間は、お父さんも私も一言も話さなかった。
お母さんが入院している病院は家から一番近い病院で、学校からも歩いて来れる距離だったから、学校帰りにお見舞いに来れると冷静に思ったんや。
ナースステーションで、お母さんがいる病室を聞いても特に何も思わなかったんやけど、病室に入り、ベットに入って点滴をしているお母さんの姿を見たとたんに涙があふれた。
ベットの横に置いてある椅子にお父さんが座ると、静かにお母さんに声を掛けた。
「体調はどうや?会社に電話が掛かってきたから驚いた」
「ごめんな。会社に電話して」
「それはかまへんけど、何があったんや?」
お母さんは、病院に来るまでのいきさつを話し出した。
家にいる時に下着が冷たく感じトイレに入ったら出血をしていたこと。しばらく横になって様子を見ていたけど、どんどん出血の量が多くなってきたこと。
それで病院へ電話したらすぐに来るように言われて、診察してもらったら、そのまま入院するように言われた。
と
「でもな、すぐに入院と言われても由真が遊びに行ってるし。由真は家の鍵持って外に出てないから、家に入れないようになってしまうと思ってな。一度帰らせて下さいと先生に言ったんやけど、『すぐに治療すれば大丈夫やけど、一度家に帰ったら赤ちゃんは助からない』」
先生に怒られたわ。幸いにして、出血した場所は赤ちゃんが入っている袋の外だったから、赤ちゃんの心臓が動いているのも確認できたしね、お母さんは言った。
泣いている私を見てお母さんは手招いて、私の頭をなでながら
「由真、お母さんも赤ちゃんも大丈夫だからね。もう泣かんでいいんよ。でね、由真にお願いがあるの。
入院するとは思わなかったから、入院に必要な物は何にも持ってきてないんよ。お父さんはどこに、何があるか分からないと思うから、由真が旅行バックに入れて用意してくれる?」
お母さんがそう言って笑ったから、私は落ち着いてきて涙が止まった。
必要な物はメールでお父さんの携帯に送るから、それを見て準備をお願いね。
と言いメールを打ち始める。
「病室なのにいいん?」
「着信音をしなければメールしてもいいんだって。携帯で話すのはだめだけどね。だからお母さんと連絡取りたかったら、お父さんの携帯借りてメールしてくれればいいよ」
お母さんが入院しても、お父さんの携帯を借りればすぐに、お母さんと連絡が取れる事に安心した。




