最低
電車が駅に着いたから降りると、お父さんがちゃんとホームで待っていてくれた。
私の顔を見るなり笑顔で聞いてくる。
「お帰り、田舎行って楽しかったか?」
田舎に行くのは散々嫌がっていたから、正直に『楽しかった』とは言いたくなくて
「普通やった」
とだけ答えると
「素直じゃないな」
そう言いながら、私が持っていた荷物を持ってくれて歩き出したお父さん。
その後ろをついて歩きながら
「お母さん大丈夫やった?何も変わったことなかった?」
田舎で過ごしている間もお母さんのことが心配やったから、お父さんに聞いたんだ。
「家におるし元気やで。あー由真が田舎に言っている間に、病院へ勉強しに連れて行った」
「は?勉強ってなんなん?」
「詳しい事は家に帰ってからお母さんに聞き」
それだけ言うと黙ったまま、車が止めてある場所へ向かう。
車に乗って、家に向かっている最中に田舎で何をして遊んでいたか、どんなことをおばあちゃん達と喋ったかとか、教えたんだ。
家に着くと、お父さんと一緒に家の中に入った。台所へ行くとお母さんは、椅子に座ってテレビを見ていたよ。
でも、私の顔を見てすぐに笑顔で
「お帰り、田舎は楽しかった?」
・・・お父さんと同じことを聞かれた。
でも、お母さんの前では正直に言えるんだ。
「うん、楽しかったよ。おばあちゃんに『家に着いたらメールして』って言われたから、お母さんしといてな」
それまで黙って会話を聞いていたお父さんが
「こいつ、俺が同じこと聞いたときは『普通』とか言ったくせに、お母さんにはちゃんと言うんかいな!?」
大きな声で言ってきたから顔を見たけど、怒こっていなくて笑っていた。
「お母さんとお父さんとは違うわ」
そんなん当たり前のことやんか。
「で、田舎ではどんなことしたん?」
お母さんが聞いてきたから、車の中でお父さんに話したことをお母さんにも言ったんだ。
「楽しく過ごせたみたいやから、よかったな。ちょっと心配やったけど、一人で電車に乗って田舎に行けて、ほんまによかった」
「え、心配やったん?!」
驚きだそんな風に見えなかったから・・・
「そうやで、お父さんと二人で『心配や』言っていてな。電車の中で寝てしまって、降りる駅なのに気が付かないで通り過ぎないかとか、色々考えていたからな」
「そんなこと考えていたなんて、知らんかったわ」
「言わんかっただけで、心配やったよ」
そうやったんや・・・
「おい、洗濯物どれや」
お父さんがいきなり話しかけてきたから、声のするほうを見ると私が持って帰ってきた旅行鞄を勝手に開けていた。
「ちょっ、何してん!?勝手に開けんといてや!」
慌てて旅行鞄を奪い返す。
うわっ、信じられへんし。勝手に人の鞄の開けるなんて最低や!
「お前がさっさと、洗濯物出さへんからやろ」
「そんなん後でもいいやんか!」
「後でお前がちゃんと出すとは思わへんからな、それに何で慌ててるんや?お父さんに見られたら困る物でも入っているんか!?」
意地の悪い顔でニヤニヤしながら言ってきた。
こんなこと平気でするお父さんが、私を一人で田舎へ行かしたのをホンマに心配していたなんて、考えられへん。




