悪阻
お母さんが妊娠していると、私に教えてくれた次の日からお母さんのつわりが始った。
何か食べると吐き、お腹が空きすぎても吐き、食べ過ぎても吐き、トイレに入る回数が多くなっている。
その姿を見て
「妊婦さんて大変なんや、私は赤ちゃん産むの止めるわ」
お母さんに言ったんだ。
「妊婦さんでも、つわりがまったく無い人もいてるからね。由真は妊娠しても、つわりがないかもしれないし、お母さんは由真の赤ちゃん見たいんだけどな。」
青白い顔で言われたんだけど、説得力がない。
買い物へ行く最中も吐き気がする時があるらしく、お母さんは鞄の中にエチケット袋を入れるようになった。
そんな日が1ヶ月ほど続いて、春休みに入ったある日。
万理と家の隣にある公園で遊んでいたら、お母さんがやってきて
「由真、お母さんちょっと病院へ行ってくるからね」
普段と変わりない様子でお母さんが言ってきた。
だから私もいつもと同じように
「分かった。あ、お母さんが帰ってきてから、万理と家で遊んでいい?」
「病院の診察が何時に終わるか・・・何時に家に帰れるか分からないけどそれでもよかったらいいよ。」
「じゃあ、も少し公園で遊んでから家の前で万理と待っている。病院行くの気を付けてな。」
お母さんを見送った。
公園で遊ぶのもあきて家の前で万理と待っていると、いつも帰りが遅いお父さんが帰ってきた。まだお昼なのに珍しい
「え、何で?早いね。」
お父さんは私の言葉に答えてくれなくて、無表情で
「万理ちゃん悪いんやけど、今日はもう帰ってくれるかかな?由真これから出掛けなあかんようになったから」
いつもと違うお父さんの声だった。万理もそう思ったのかな
「はい、分かりました。じゃあ由真また遊ぼうね」
ちょっと戸惑った様子で、万理はすぐに帰って行った。
家の中に入ると、すぐにお父さんが作業着を脱ぎながら
「お母さんが入院した。これからその病院へ行くから、・・・もしかしたら、赤ちゃんがダメになるかもしれない」
突然、言われた言葉に私は動けなくなった。




