友達
それから、お母さんの様子を見ていたら、肩で息をしていたのが徐々に治まってきたのが分かった。
「はぁ~」
両目を開け、大きなため息を吐くお母さん。
「動悸は治まったわ」
そう言って今度は両手を見ている。
「でもまだ手の指の震えは治まってないな」
「いつまでその薬は飲まなあかんの?」
気になっていたから聞く。
「先生が『もう飲まなくていい』といってくれるまで。それまでお母さんの場合は、1日4回服薬しなあかんらしい」
「4回?」
「そう4回毎食後と、夜寝る前とな」
両手を見るのを止め、私の顔を見るお母さん。
「副作用って、飲んでいる間はずっと続くん?」
「飲みなれたら副作用はなくなるらしいで、友達が言っていたから」
「友達って?」
「入院中に仲良くなった友達が何人かいてるから、その人たちが教えてくれたわ」
「え?入院している間に友達できたん?」
人見知りをする私には驚きだ。
「そうやで。お見舞いに来てくれた人も、長い時間いてくれる訳じゃないし、テレビをずっと見ているのも厭きるし、自然と会話するようになってから友達になってん。メールアドレスも、携帯の電話番号も交換したしな」
「すごいな・・・私には真似できへんわ」
「そう?友達になった子は皆同じ妊婦さんで、同じ点滴していたし、だからすぐに仲良くなることができたんよ」
簡単そうに言うけど、私にはできへん・・・
「友達って同じ病室の人なん?」
「ん?違う病室いてた人とも友達になった」
益々、信じられない。
「・・・その人とはどこで知り合ったの?」
「んーとな・・・病院内に、お見舞いに来てくれた人たちと、入院している人が一緒にジュースなんかを、飲める場所があるの知ってる?」
お母さんに言われてから、病院内の様子を思い出す。
「あー 自動販売機が何台か置いてあって、ソファーもいくつか置いてある場所?」
「そうそう、そこでお母さんがジュースを何回か飲んでいるうちに、そこにおった人とも顔見知りになって自然に会話するようになって、友達になったんよ」
お母さん、凄すぎやわ・・・
妊婦さんが24時間点滴しながら、数人でジュースを飲んでいるのを想像する。
その中にお母さんがいてても声掛けづらいな・・・
「そう言えば、お父さん遅いね」
無理やり話を変えてみる。
特にそれに気にすることなく
「トイレ行ってから、お風呂に入ってるん違うの?いつものパターンや。そやからもうすぐここ戻ってくると思うよ」
答えてくれた。
「あ。今気付いたけど由真と喋っている間に、いつの間にか手の指の震えが治まっていたわ」
そう言って、私にも見えるように両手をあげて、くれたお母さんは笑いながら言った。




