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触りたい

お母さんが退院できるかもしれない日。

お父さんは会社へ、私はいつも通り学校へ行ったんだけど・・・・

無事に退院できるか、そればっかり考えていた。

もし、退院できたなら私が家に帰ると、お母さんは家にいるようになっている。


万理には全部話をしているんだ。

昨日、あーちゃんに話しかけたら蹴られたこともね。

もちろん。お父さんが家事に協力してくれなかったことも話している。


でも・・・お母さんの布団で寝ていることだけは、今でも言っていない。


給食が終わった昼休み時間、教室で机に座って、窓の外から景色を眺めていたら万理に話掛けられた。


「今日帰ったら、由真のお母さんが家におったらいいな。1人やとやっぱり寂しいんやろ?」


私の座っている前の椅子に座りながら、万理が言う。


「別に~。寂しくないよ1人で留守番できていたし」


私は嘘をつく。寂しいから1人で寝れないんだけどさ。


暫く黙っていた万理が言ってきた。


「あのな、お願いがあんねん。由真のお母さんのお腹、私も触りたいから由真、1回聞いてみてくれへん?すぐに触りたいんじゃなくて、生まれるまでに触ってみたいねん。胎動、私も体験してみたい」


思いもよらなかった万理の言葉に、驚いたけど。

こればっかりは、お母さんに聞いてみないとな・・・


「う・・・ん。多分、お母さんに言ったら触らしてくれるやろうけど、でもいつ触れるか分からんよ。退院しても安静生活は続くし」

「いいねん。生まれるまでに、触りたいだけだから!」

「じゃあ、お母さんに聞いてみるわ」

「ほんま!?ありがとう」


万理はすごく喜んでいる。

そんなに触りたいのか・・・まぁ、気持ちは分かるけどね。




学校から家に帰り、玄関のドアを開けるとお母さんの靴があった。

退院できたんだ。


「ただいま」


元気よく声を出し、急いで台所へ行くとおばあちゃんがいた。


「お帰り。お母さんは自分の布団に入って横になってるで。由真、今日晩御飯作ってきたの持ってきたから、温めて食べてな」

「うん分かった。ありがとうおばあちゃん」


急いでお母さんのいる部屋に向かおうとすると


「お母さんとこ行く前に、手洗いと、うがい!」


おばあちゃんに怒られた。




手を洗って、うがいもして、お母さんがいる部屋に入ると目を閉じて横になっていた。


「お母さん。起きてる?」


自然に私の声も小さくなる。

声を掛けると、お母さんはすぐに目を開けた。


「起きてるよ、由真お帰り。体力が落ちていてタクシーで家に帰ってきたのに、しんどいねん。」


それだけ言うと、お母さんは再び目を閉じる。

ほんまに顔色が悪い。万理に言われたこと、今日は言えそうにないな・・・そう思いながら私はすぐに、お母さんがいる部屋のドアを閉めた。


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