早い帰宅
胎動というのがどんなのか分かったし、あーちゃんがちゃんと返事してくれて嬉しい。
お母さんが入院している病院から自宅に帰り、お父さんが帰ってくるまで、いつも通り過ごしていると、玄関の開く音が聞こえてきた。
それからすぐにお父さんの声がする
「ただいま」
もうそんな時間かと思って、思わず時計を見たけど遅い時間じゃない。
ビングの扉が開きお父さんが顔を覗かせた。
「ただいま」
「・・・お帰りなさい」
「今日から早く帰れるようになったからな。由真、風呂沸いているか?」
「そうなんや、お風呂入れるよ」
「じゃ、先に風呂入ってくるから、弁当温めておいてくれ」
「分かった」
私が返事をするなり、さっさとお風呂に向かったお父さん。
今日から早く帰れるようになったんや。
そんなことを思いつつ、言われた通りにお弁当を温めて、お茶とお箸もテーブルの上に置く。
暫くしたらお父さんがお風呂から上がってきた。
早速、お弁当を食べ始めるお父さんに、今日あった出来事を話す。
「あーちゃんに声掛けたら蹴られて、ビックリしたわ」
「由真がお母さんのお腹におった時は、お父さんがお母さんのお腹に手を当てて話し掛けると、さっきまで動いていたのに、突然動かんようになってしまってたな。『そんなに、お父さんのことが嫌いなんか』って聞いたらポコンと蹴んねん。『お父さんのこと、好きやろ』と聞くと動かん」
お弁当を食べながら、お父さんが話してくれる。
私は、思わず笑ってしまった。
「そんなことがあったんや」
「お父さん、結構へこんだで、ショックやったな」
「へ~」
私がまだ、お母さんのお腹に入っている時の話を聞くのが楽しい。
「由真が、お母さんのお腹におった時が懐かしいな。お父さん、しょっちゅうお母さんのお腹に手を当てて話掛けていたんやで」
お父さんの目が笑っている。
「そんな由真がもう小学6年か、月日が経つのは早いな。」
今度はしみじみと言う。
「由真は両家にとって初孫やったから、皆が楽しみに待っていたんやで。田舎のおじいちゃんも由真を抱っこしている時の顔は、デレデレ顔やったし」
「あーちゃんが生まれたら、両家にとって久し振りの赤ちゃんになると違うん?」
「そーやな。今度も皆に可愛がられるやろうな」
お父さんの実家にとって孫は私1人だけで、お母さんの実家にとっては、5人目で7年振りの赤ちゃんとなる。
「お母さん明日、退院できるといいな」
私が言うとお父さんは、黙って頷いただけだった。




