あーちゃん
お母さんが点滴を抜く予定の朝から、私は何か落ち着かない。
早く学校が終わって病院へ行きたい一心だ。
万理にお母さんが退院できるかもしれない、ことを話したら喜んでくれた。
それから胎動のことも言ったよ。
万理も触りたいんだって!
そして、学校が終わるとダッシュで一度家に帰り、着替えてから自転車に乗り、いつもより早く飛ばす。
息切れしながらお母さんがいる病室に入ると、点滴をしていないお母さんが私を見て驚いた顔をした。
「なんでそんなに息切れしてるん?」
今度は不思議そうな顔をして、お母さんが聞いてきた。
「ダッシュで・・・きたから・・・」
息切れしながら訳を話すと、苦笑いされた。
私は一度深呼吸をしてから、息を整える。
「そんなに早く、知りたかったん?」
「うん・・・で、どうなん退院できそう?」
「今んとこ問題ないから大丈夫やわ。でも明日の朝に診察して、ほんまに退院しても大丈夫かどうか決めるらしい。先生にそう言われたで」
「じゃあ、明日の朝の状態が悪かったら、まだ入院するってこと?!」
「そうなるな、おばあちゃんにもそのことを知らせたんや。そしたら診察結果が分かったら、また連絡して欲しいって言われてな、退院できるなら入院の荷物持って、家まで付き添うと言ってくれてん」
お母さんが両袖を捲りながら、自分の腕を見て
「ほんま退院したいわ。24時間の点滴生活はもう嫌やな」
呟いた。
お母さんの腕には、点滴の痕がいっぱいあって、内出血しているのもいくつかあるのが分かる。
「看護師さんの中には点滴が下手な人もいてな、何回も失敗されたり、点滴をしていてもしばらくしたら、点滴の液が漏れて腕が腫れたりしたしな。ほんまは一度点滴の針を点したら、1週間は点滴の針を換えなくてもいいらしんやけど・・・・お母さんの場合は1週間ももたなくて、2~3日でいつも点滴の針を点し直していたんよ。だから両腕が痕だらけ」
お母さんの点滴をしている腕を気にしたことがなかったし、何も言わなかったから、知らなかった。
「次の入院がないように、お母さんの安静生活が続くまで、今度は頑張るから!お父さんも今回は懲りたらしいから、今度は家の用事手伝ってくれるって言っているし」
私が言うと、お母さんは嬉しそうに笑う。
「それは頼もしいな。そうや、今日もあーちゃん元気に動いてたで」
「ほんま?」
お母さんのお腹に手を当てて、あーちゃんに話しかける。
「あーちゃん、お姉ちゃんやで~元気にしているか~?」
・・・動かない。
今日もダメかと諦めていたら、ポコンと手に振動が伝わる。
ビックリして、お腹に当てていた手を離してお母さんを見たら
「動いたな」
お母さんが教えてくれた。
「これが胎動なん?」
「そうやで、まだあーちゃんは小さいから蹴る力が弱いけど、あーちゃんが大きくなるたびに、強く蹴るようになるよ」
またお母さんのお腹に手を置いて、話し掛ける。
「あーちゃん、お姉ちゃんて分かるの?」
暫く待ってみたが、今度は動かない。
それでも、あーちゃんに話し掛け続けた。
「あーちゃん、元気に生まれてきてな、お姉ちゃん待ってるで」




