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二人は神の力を 無色の緋  作者: 夕雲 橙
本文~現代
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四 戦闘

 主人公の御裏がその力を出します。

 敵の名前の由来は、少しマイナーなところから引っ張りました。

(直接そのものとは関係ありません)

 ナイフを深くねじこまれ内臓に達するまで刺されても平然としていた若い男が、ちらりと腹の状況を確認した。

「メイカー!」

 そう叫ぶと同時に、両手で御裏を突き放すように打った。

 御裏は両肩を突き飛ばされ、見えないワイヤーに引っ張られたかのごとく、後ろ向きで十メートルは宙を飛んだ。

 背中から電柱にぶつかり、鈍い衝撃音が響く。

 コンクリートの電柱の欠片が飛び散る。

 突き飛ばした姿で止まった男の手のひらは、焼け焦げて黒い煙を発する。

「発見……力を寄こせ」

 手の平から炎を発した男が呟いた。


「は、はい?」

 瞬きするのも忘れた空色が、二人の中間で刺された男の腹に目をやる。

 痛々しくナイフが刺さったシャツからは、何故か一滴の血も流れていない。

 男が腹に刺さったナイフを逆手に掴み、引き抜いて捨てる。金属の楽器のような音を発し、アスファルトの路面を跳ねたナイフが宙に溶けるように消えた。

 空色は首を何度も振り、男と御裏を見返す。

「え、あれ、え?」

 電柱で背中を打った御裏が、跳ね起きるように立ち上がる。

 今の衝撃が嘘ではなかった証に、御裏が衝突した電柱の側面が剥げ落ち、中の針金が曲がり飛び出していた。

 制服に付いたコンクリートの砕けた白い粉をはたきながら、御裏が問う。

「いきなりだな。聞くぞ、名前はあるのか?」


「アジタケーシャカンバラ、主流から追いやられた者だ」

 男は不思議な抑揚を持つ名を名乗る。声を発する度に、口の端から陽炎のような炎が吐息のように漏れる。

「何だって、やたら難しい名前だな。その名前は初めて聞くけど、あの程度の攻撃はへっちゃらで、長ったらしい名前があるってのは……」

 御裏は右手を上げ、人差し指を男に向ける。

「お前、強いな。神とかに近いな」

 何も持ってなかった御裏の右手に、黒光りする金属の塊が握られていた。


「街中だしな、今度は本気出すぞ。これぐらいで戦闘開始!」

 傍で見ていた空色が、その物体が拳銃だと察する前に、御裏が人差し指を引いた。

 御裏の手の中の物体が玩具とか、見間違いだという空色の思いは乾いた発砲音でかき消される。

 冷静に狙いを定めた御裏が、三発立て続けに発砲した。

 アジタケーシャカンバラと名乗る男は、御裏めがけ走り出すと顔の側面が削ったようにぼやけた。

 空気に滲んで消えるように、顔から頭、首、胴体と消しゴムをかけた絵のように姿を消す。

 消えた空間を御裏の放つ弾が貫き、民家の壁に穴を穿つ。

 腰から下だけの姿のアジタケーシャカンバラが、斜めに走り道路に飛び出す。

 足元を狙った弾丸がアスファルトを砕いた時、完全に姿を消した。

「そうきたか」

 御裏が拳銃を手放す。

 落ちた拳銃は、地面に落ちる途中で手品のように消えた。

 空いた両手で長い棒状の物を持つしぐさで構えた御裏が、アジタケーシャカンバラが姿を消して走った先をじっと見つめる。

「動くと巻き込むぞ、じっとしてなヒリン」

 呆然とした空色は頷くことも、返答することもできなかった。

 だが、御裏の声がきっかけでビクリと肩を震わせ後ずさりした。

 空色の斜め上の空間に、不自然な力の集まりが生じる。

 薄い陽炎のようなそれは、御裏の目には全身を燃え上がらせ異形の姿と化したアジタケーシャカンバラの姿として映る。

「ふっ!」

 御裏が何も持たない手を振った。

 手を伸ばした延長線がアジタケーシャカンバラに当たる寸前、パントマイムのような動きの両手には、柄が長く重たそうな先端が尖ったハンマーが握られていた。

 攻撃は空色の頭上を掠め、風に煽られ長い髪が舞う。

 一抱えもあるハンマーの先端がアジタケーシャカンバラの胴体を捕らえる。

「当りっ!」

 何も無い空間に衝撃が走り、ハンマーの柄が獲物を打ち据えた手応えでしなる。

 アジタケーシャカンバラが胴体を打ち砕かれる。

「人の身で! 覚えておれ!」 

 壊れたラジオの雑音のような咆哮を発し、突き刺さるハンマーの頭を掴んだ。

 アジタケーシャカンバラを中心に空間が破れた。

 景色と空を反射した鏡が割れたように、風景が割れて舞う。

 割れた風景は細かく散り、砂となり微粒子と化す。

 さらに細かく分子以下の大きさ分裂、消滅。

 一瞬後には風景が再生。

 ハンマーを掴んだアジタケーシャカンバラがアスファルトに叩きつけられた。

 打ち据えられた風圧で、唖然とする空色のスカートが捲れ上がる。

 陥没するアスファルト。

 燃え上がるアジタケーシャカンバラの姿。

 破裂して噴水のように水を撒き散らす水道管。

 小地震のような揺れ。熱気が周囲に渦を巻く。歪んだ地面が摂理の均衡を維持できず様々に変色。

「滅しろ!」

 御裏の掛け声に同調し、ハンマーの頭が炸裂した。

 ハンマーは内部に火薬でも仕込んであったかのように、破裂し閃光を撒き散らす。

 陥没したアスファルトを中心に、路面が波打つように揺れ、波紋を描く。

 閃光が消え、アスファルトや壁、家を揺らす波紋が徐々に収まる。

 御裏は柄だけになったハンマーを持ち上げた。


「仕留めた……いや、簡単すぎるから逃げちゃったみたいかな」

 煙をもうもうと発するアスファルトの陥没部分を覗き込んだ御裏が呟く。

 ハンマーの柄を手放すと、空中で存在を無くしたようにかき消えた。

 最後まで揺れていた電線の動きが止まった。

 振り返った御裏の背後、アスファルトの破損は古い絵の上から新しい絵が上塗りされるように綺麗に消えていた。

 御裏の脳内に低く聞こえていた歪みの音が遠ざかる。

 シャッターが落ちるような轟音と衝撃が御裏の脳に響き、静寂が訪れた。

 歪みは閉じ、異変は終了した。



 道路に投げ捨てた鞄を拾い上げ、御裏は後頭部を撫でながら呟いた。

「んっ……とりあえず、こんなもんかな、終・わ・りっと。じゃあ公園行くか、汗かいた、涼もうぜ」

 空色に軽く手を振り、御裏はすたすたと歩き出した。

 呆然と立ちすくむ空色が、耳鳴りの残る頭を両手で抑える。

 非現実的な光景と不自然な現実に対峙した。

 人間の代表として、激しく鼓動する心臓を押さえるように胸の前で手を組み、姿勢の良い御裏の背中に思いの丈をぶつけて訴えかけた。

「待って……せーの、こおらぁ! 何がとりあえずなのか、何が起きたのよ!」


 戦闘は一旦終了です。

 各章が長いので修正し、これは以前二章だったところの終わりです。

 ほんと、ネット上で書くには見させる手段も考えて投稿しないといけませんね。

 前の掲示されたものは、長くて区切りが少なく読み辛かったです。


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