第7話 休日の予定が「三人」になった日
土曜日の朝。
目覚ましをかけていないのに、いつも通りの時間に目が覚めた。
「……休日って、
こんなに静かだったか?」
カーテンの隙間から、やわらかい光が差し込む。
コーヒーを淹れて、ソファに腰を下ろしたところで——
ピンポーン。
「……はい?」
ドアを開けると、ルナが立っていた。
今日は私服。いつもより少し大人しい色のワンピース。
「おはよう、おにーさん」
「おはよう。どうした?」
ルナは、後ろをちらっと見る。
「……ママ、
きょうもおしごと」
なるほど。
「それで?」
「……あそびに、
いってもいい?」
言い方が控えめで、
それだけで理由は十分だった。
「もちろん」
そう言うと、
ルナは小さくガッツポーズをした。
行き先は、近所の公園。
特別な遊具はないけど、
ベンチと広場があって、木陰が多い。
「ここ、すき」
ルナは、ぶらんこに座りながら言った。
「なんで?」
「おおきなこえ、しなくていい」
それは、彼女なりの理由。
俺はベンチに座って、
のんびり見守る。
すると。
「あら?」
聞き覚えのある声。
顔を上げると、
ミサキさんが立っていた。
「奇遇ですね」
「……またですか」
「休日ですから」
言い切られると、反論できない。
ミサキさんは、ルナに手を振る。
「こんにちは」
「こんにちは!」
元気な返事。
「今日は、デート?」
「違います!」
即答。
ミサキさんは笑った。
「冗談です。
でも……」
ちらっと俺を見る。
「いい休日の過ごし方ですね」
からかい半分。
でも、悪意はない。
しばらくして、
三人で並んでベンチに座る。
ルナは、アイスを食べてご満悦。
「おにーさんも、
ひとくちあげる」
「溶けるぞ」
「いいの」
少しだけもらう。
甘い。
「……ねえ」
ミサキさんが、小さな声で言う。
「無理してません?」
「何がですか」
「その距離感」
俺は、少し考えてから答えた。
「無理してる、
っていうより……」
言葉を選ぶ。
「自然に、
こうなってます」
ミサキさんは、
少しだけ目を細めた。
「それなら、
いいですね」
帰り道。
ルナは、俺の隣を歩きながら言った。
「きょう、
たのしかった」
「それは、よかった」
「おにーさんも?」
「まあな」
即答はしなかったけど、
嘘でもない。
ルナは、満足そうに頷いた。
アパートに着くと、
ルナは一度立ち止まった。
「……また、
あそぼうね」
「気が向いたらな」
「うん!」
その返事で、十分だった。
部屋に戻って、
ドアを閉める。
「……休日、
悪くないな」
一人で過ごすはずだった時間が、
いつの間にか、
誰かと共有するものになっていた。
それに、
不思議と疲れていない。
カレンダーを見る。
次の休日にも、
何も予定は入っていない。
でも。
「……空いてる、
っていうのも悪くない」
そう思いながら、
ソファに腰を下ろした。
外は、まだ明るかった。




