21話 ビンラディン襲来 最悪のタイミング
夕方、仕事が少しだけ長引いた。
スマホを見ると、いつもより遅い時間。
連絡を入れようとして、やめた。
理由はない。
ただ、急ぐ必要がない気がした。
帰宅すると、部屋の電気は消えていた。
「……?」
鍵を回して入ると、
キッチンのテーブルにメモが一枚。
『あったかいの、のこしてある』
短い文字。
見慣れた書き方。
鍋の蓋を開けると、スープが入っていた。
温度は、ちょうどいい。
少しして、隣の部屋のドアが開く音。
「おかえり」
ルナだった。
パジャマ姿で、眠そうな目。
「起きてたのか」
「……ちょっとだけ」
それ以上、理由は言わない。
スープをよそっていると、
ルナが椅子に座る。
「たべる?」
「少し」
カップに分ける。
無言で飲む。
湯気が、静かに立つ。
しばらくして、ルナが言った。
「きょうね」
「ん?」
「まってた」
それだけ。
「……言わなくても?」
「うん」
少し間があって。
「いつも、
かえってくるから」
胸の奥が、静かに鳴る。
食べ終わると、
ルナはカップを流しに置いた。
「……じゃあ」
「おう」
振り返らない。
それでいい。
電気を消して、
ベッドに入る。
時計を見ると、
いつもより少し遅い。
でも。
待たれていた。
それを、言葉にしなくても分かる。
「……悪くないな」
小さく呟いて、目を閉じた。
夜は、静かだった。




