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第15 話 性の6時間 高石とトランプ


 休日の昼前。

 スマホの通知音で目が覚めた。

 母からのメッセージだった。

「今度、写真送って」

 用件はそれだけ。

 ……何の写真だ。

 部屋を見回す。

 特別なものは何もない。

 机。

 ソファ。

 玄関に並んだ靴。

 それでも、前とは違う。

 昼過ぎ、コンコンとノック。

「どうぞ」

 ルナが入ってくる。

 今日は画用紙を抱えていた。

「……え、なにそれ」

「え、

 えを、かいた」

 床に座って、広げる。

 クレヨンの色は少ない。

 線も、はみ出している。

 でも、すぐ分かった。

 アパート。

 ベランダ。

 並んだ二つの影。

「……俺と、ルナか」

 小さく頷く。

「しゃしん、

 とらなくても、

 いいかなって」

 意味を考える。

 たぶん、こういうことだ。

「残したいのは、

 形じゃない?」

「……うん」

 しばらくして、

 ミサキさんが顔を出した。

「こんにちは」

「どうも」

 画用紙を見るなり、目を細める。

「いい絵ですね」

「……ありがとうございます」

「飾る場所、

 あります?」

 俺は、少し考えてから言った。

「冷蔵庫でいいですか」

「一番、

 毎日見る場所ですね」

 それで決まり。

 夕方。

 冷蔵庫に貼られた絵を見て、

 ルナは満足そうだった。

「ここ、

 みえる」

「毎日な」

「……うん」

 夜。

 母に、写真を一枚送った。

 冷蔵庫。

 貼られた絵。

 傘が二本。

 説明は、つけない。

 返事はすぐ来た。

「元気そうで安心した」

 それだけ。

 電気を消す前、

 もう一度冷蔵庫を見る。

 写真には写らない。

 でも、確かに増えているものがある。

「……まあ、

 いいか」

 そう思って、

 部屋の明かりを落とした。

 静かな夜だった。

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